長期経営計画が行われなくなったVUCAの時代:経営ビジョンの必要性

道の先を見通す 新規事業

2016年頃からコンサルタント業界でのバズワードに
「VUCA(ブーカ)」というものがあります。

VUCAとは次の4つの単語の頭文字をとって作られていて、
簡単にいえば、「予測不能な状態」を表します。

・V olatility(変動性)
・U ncertainty(不確実性)
・C omplexity(複雑性)
・A mbiguity(曖昧性)

VUCAはもともと1990年代にアメリカの軍事領域において
用いられてきた言葉のようですが、
2016年に入ってから、ダボス会議などの講演で頻繁に登場したことから、
その後、よく使われるようになりました。

VUCAが示すように、以前と比べて確かに、
先の見通しが難しい時代となっています。

先のことが予測できない時代において、企業はどうあるべきでしょうか。

今回は、VUCA時代の企業のあり方を新規事業やイノベーション創出を軸に考えます。

時代遅れとなった長期経営計画

かつて、日本企業において、経営企画部の大きな役割に
「長期経営計画」の策定がありました。

たとえば10年後の自社が置かれている状況を想像して、
「それに向けてどうするか」といったことを
今後強化していく領域の確定や基本方針に落とし込んでいくという手法です。

ところが、こうした長期計画は近年は行われなくなってきました。

VUCAという言葉が示すように、
将来の状況を見通すことが難しくなってきたため、
計画を立てても、現実に対応できなくなってきたからです。

海外の企業を見ていても、長期経営計画を行わないことが主流となってきています。

また、経営計画というものは、一度作られてしまうと、
世の中の流れから離れていても、進められてしまいがちです。

そうした危険性があることから、「それならば長期経営計画は作らないほうが良い」
と考えるのも当然のことと言えます。

必要なことは「経営ビジョン」

一方で、長期的なものが何もなくて良いかというと、
方向性を指し示すものとして「経営ビジョン」は必要となります。

「長期経営計画」は、「中期経営計画」のベースに使われ、
具体的な進出領域や、数値目標、人員計画などが明示されます。

それに対して、「経営ビジョン」は、
具体的な進むべき道を示すのではなく、方向性を明らかにするものです。

たとえば、「長期経営計画」では「10年後に医療分野において、
100億円規模の事業を成功させる。ただしM&Aも含む」といったような形で表現されます。

「経営ビジョン」の例としては、
アメリカのJ・F・ケネディが示した「月に行こう!」がよい例となります。

(アメリカはその後、月面着陸を現実化したことはご存知の通りです)

具体的にどうするかについては、各部署の専門的な人材が対応します。
上記の例でいえば、「NASA」が具体的な部分は対応したと理解できます。

経営ビジョンのあるべき姿:アメリカ大統領のビジョン、構想に学ぶ
ロードマップの作成にあたり、 経営ビジョンをもとに、スタートすることを 以前の記事でご紹介しました。 多くの企業では、経営ビジョンが策定されていると思いますが、 策定に際して、どういった意識で行うべきか 経営企画部の方が悩まれることも多いよ...

「ビジョン」ではどんな方向に進むべきなのかが、
熱意も含みながら、一言で語られると大きな効果につながります。

どちらかといえば抽象的な表現が使われているのは、
具体的な解決方法については、現段階ではどう発展するか分からないからです。

しかし行くべき道だけを示すことができれば、多くの社員は迷うことがなくなり、
自分がなにをすべきかに落とし込んでいくことが可能となります。

企業によっては、「経営ビジョン」がない場合がありますが、
経営陣の頭には「この会社はこうしたい」という思いが少なからずあるはずです。

「経営ビジョン」が見えにくい状況であれば、
周年行事などを口実に、企業の歴史を振り返りながら、経営陣とともに
社員が方向性を作り上げていくということも極めて有効な打ち手となります。

まとめ

現代が、先の読めない時代ということは
ビジネスパーソンの多くが実感されているところかと思います。

そうした時代には、大きな経営ビジョンをもとに
具体的には復数の可能性を探りながら、
保険もかけつつ進めていく対応が必要となります。

新規事業やイノベーション創出は、一直線に進むものではありません。
どちらかというと、いくつもの「層」が積み重なって、
結果的にできあがるものだと捉えることができます。

しかし、重層的な性質があるため、ビジョンがしっかりしていないと
結果として、どこに進めば良いか分からなくなってしまうこともたびたびで、
イノベーションが頓挫する背景にはこうした要因も多分にあるようです。

今回の記事が、イノベーションを志す皆様のお役に立つことを願っています。
最期までお読みいただきましてありがとうございました。

参考となる書籍のご紹介

VUCAの時代が、どのようなものか、
その時代に世の中に価値を提供していくためには
どうすれば良いかが、下記の
『ニュータイプの時代』ではよくまとまっています。

特に、第一章で語られる「メガトレンド」については、
どのような職種であっても、影響を受けると思われる変化について
語られています。

自分自身で課題に気づき、仮説を構築したうえで、
何をするべきか試行錯誤しながら、進めていくことの
重要性が語られている一冊です。 是非ご一読ください。

オンライン勉強会のご案内

参加費無料のオンライン勉強会(ポストコロナの質的環境変化を話す会)
を行っています。

コロナ禍での大きな環境変化について、
毎週金曜日20:00~22:00で
他社事例講演や幅広いテーマでの議論を行っています。

大手製造業の研究開発、新規事業の方を中心に
毎回15~20名の方が参加しています。

詳細、お申込みは下記をご参照ください。

ポストコロナの質的環境変化を話す会 | 価値共創研究会

コメント

  1. […] 現在が、VUCAの時代ということは 以前に「長期経営計画が行われなくなったVUCAの時代」の記事でご紹介しました。 […]

タイトルとURLをコピーしました