書籍紹介「なぜ今、私たちは未来をこれほど不安に感じるのか?」

双眼鏡書籍ご紹介

本ブログでは、新規事業開発やイノベーション創出を担当されている方はもちろん、
ビジネスパーソンの方の、
ご参考になる書籍のご紹介もしています。

今回ご紹介する
「増補版 なぜ今、私たちは未来をこれほど不安に感じるのか?」は、
現在の混沌とした世界経済の背景に何があるかについての理解や流れが把握でき、
今後の社会洞察に参考となる一冊です。

現在はVUCAの時代でで、なかなか先が読みづらいことは間違いありません。

長期経営計画が行われなくなったVUCAの時代:経営ビジョンの必要性
2016年頃からコンサルタント業界でのバズワードに 「VUCA(ブーカ)」というものがあります。 VUCAとは次の4つの単語の頭文字をとって作られていて、 簡単にいえば、「予測不能な状態」を表します。 ・V olatility(変動...

そのため、現代に生きる我々は将来に対して確かに不安を抱えています。

ところが、その不安が「具体的にどのようなものか?」
と問われると答えられないことが多いのではないでしょうか。

不安の正体は実は漠然としているのです。

本書では、こうした漠然とした不安に対して、

・これから世の中はどうなっていくのか?
・何が本質的な問題なのか
・我々はどうすべきなのか?

の3つについて、経済を軸に果敢に答えを探っています。

グローバルで起こっている「低開発化」が社会の歪みを作り出す

本書のベースとなっている考え方は、
アメリカの社会・歴史学者のイマニュエル・ウォーラーステインが提唱する
「近代世界システム論」です。

「近代世界システム論」のなかでは世界は「中核」としての先進国と、
それに属する「周辺」の途上国により構成されているとしています。

そして、中核の国々は自国の利益のために、
周辺国に「低開発化(従属化)」の圧力をかけている
という考え方です。

「低開発化」というのは、
付加価値のある工業製品が生み出せる状況を作り出すこと
と真逆の方向の動きのことを指しています。

「近代世界システム論」では、
世界を国単位で考えるのではなく、ひとつの存在として捉えています。

そして、「発展途上国は、先進国のために働かされるプログラムに
組み込まれてしまっている」という捉え方をしています。

「低開発化」された発展途上国では、経済的な発展ができずに、
その結果さらに社会的な歪みを生じさせてしまいます。

現在、過激なテロ組織が国際的な問題になっていますが、
こうした集団を生み出してしまう背景に、
「低開発化」があるとしているということを指摘しています。

「成長しない時代」での企業の役割を考える

本書からは見てくることは、
「発展途上国を犠牲とする成長モデル」は、
すでに限界に達しているということです。

そして次の時代として、
「成長しない時代」が来ることが予測されています。

「成長しない時代」について、
たとえば、賃金についてひと昔前までは
在籍年数に従って上昇していました。
しかし、近年では賃金上昇がないことが常態化しています。

消費活動も以前と比べて右肩上がりということもありません。
ものが売れない時代でもあります。

こうしたことが端的な現れだと解説されています。

新規事業開発や、イノベーション創出のご担当者の方は、
時代が変化していることを前提に、
過去の成功体験を縛られることなく
新しいモデルの創出を考えておられることだと思います。

しかし、成長しない時代だからこそ、考えられる企業の役割もあります。

「成長しない時代」に価値を提供するには

本書では、将来が見えない時代に「我々はどうするか?」のヒントとして
江戸時代の豊かさを挙げています。

日本の江戸時代後期においては、社会経済が定常経済化するなかで、
庶民たちは趣味や文化的な活動に力を注ぎ、精神的な豊かさを誇っていました。

現在の先進国が成熟化し、人口も増えず、
生産=所得も一定の水準から伸びない状況に近い
と言えると著者は指摘しています。

著者が勧める「我々はどうするか?」は、個々人のあり方を前提にしています。
私の考えとしては、「物質ではなく体験の重視」という現在の流れが、
江戸時代の人々が精神的な豊かさを求めたことと近いものとして考えられ、
これが、企業として取り組む方向性であると捉えています。

「ものより体験」の考え方は、様々な分野で言われていますが、
「成長しない時代」ということを理解すると、
いかに大きな価値があるのかが分かってきます。

「近代世界システム論」は「なるほど」と思える解説も多々あり、
著者による「成長しない時代」の解釈は未来洞察するうえでも役立つ一冊。
是非ご一読ください。

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