企業が生き残る要素とは何か:富士フイルムとコダックから考える

写真の銀塩フィルムイノベーション

同じ業種、業態の企業であっても
続いていく会社とそうでない会社があります。

ケーススタディとしてよく挙げられるのが
「富士フイルム」と「コダック」のフイルム事業の事例です。

ビジネススクールでも
「イノベーションのジレンマ」「破壊的イノベーション」の教材として取り上げれていますが、
「後から見ると」コダックの対応は愚かしく、
富士フイルムの対応は最もなようにも捉えられます。

しかし、人間の本能的な行動から考えると、
富士フイルムの成功事例は極めて特異なことだと考えています。

通常の対応としてはコダックの行動は致し方ない、
自分がその立場であれば、同じ判断をした可能性が高いと捉え、
「他山の石」とすべき、教訓深い事例です。

今回はこの2社の対応を通じて、
自社の製品が破壊的イノベーションの波にさらされる可能性がある場合、
どう考え、どう行動していくべきかを考えてみます。

富士フイルムとコダックの2社の紹介

コダックについて

コダックは、米国を拠点とする老舗写真用品メーカーです。
1880年創業で、世界で初めてロールフィルム、カラーフィルムを発売したことで知られています。
デジタルカメラも世界で初めてコダックが開発しました。

2000年頃まではグローバルでもトップ企業でしたが、
デジタル化に伴う、フイルム市場の大幅な縮小に伴い
2012年に倒産します。
2013年に企業規模を大幅に縮小して業務を継続し再上場を果たしています。

富士フイルムについて

富士フイルムは日本の精密化学メーカーで、
写真用品および複写機などを扱い、現在は医薬品、化粧品、健康食品、高機能化学品の製造販売も行っています。

もともとは、1934年に写真フィルムの国産化を目指し、
大日本セルロイド(現:ダイセル)の写真事業を分社化して
富士写真フイルム株式会社として設立されました。

デジタル化の波を乗り越えて、上述の通り、
医薬品、化粧品といった分野にも事業展開し、成功をおさめています。

コダックが、デジタル化の波に乗れず2012年に倒産したのに対して、
富士フイルムは、自社技術の強みを生かして別領域での事業展開に成功します。

両社とも、同じ業種、同程度の規模でした(条件が似ている)が、
対応の違いにより、その後の結果が大きく分かれたため比較研究がしやすく、
ビジネススクールの事例として取り上げられています。

なぜ結果に大きな違いが生じたか

コダックは倒産、富士フイルムは今も隆盛といった
違いはどこから生じたのでしょうか。

ビジネススクールのケーススタディでは次のようなことが言われています。

富士フイルムは、1990年頃から、フイルム事業の衰退を認識し、
CCD素子(デジカメなどの光検出器で使われる半導体素子)の内製化を行い
デジカメの開発につなげて、商品化を推進していきます。

また、銀塩フイルムの染料から、インクジェットプリンター用の高機能染料の開発、
液晶ディスプレー向けのTACフィルムや視野角調整フィルムの開発を行います。

フイルム製造のコア技術を化粧品、医療機器関連でも展開していきます。
他に、M&Aを行い富山化学、Dimatix、アビシア、ソノサイトなどを買収して、
自社の強みの補強を行っていました。

一方、コダックは、新興国でのフイルムの需要を見込み、
フイルムの分野への集中を高めていきます。

また、設計、生産といったコアとなる部分を外部へ依存していく体制をとってしまいます。
長期的な成長の可能性がある事業についても切り捨てる対応を行いました。

こうした経営戦略の違いが、倒産と隆盛の分かれ道になったと言われています。

新規事業、イノベーション視点からの2つの学び

コダックは、デジタル化という変化の波に乗り遅れ、対応が遅れたといわれます。

しかし、デジタル化の波に気づいていなかったかというとそうではないと捉えています。
大局的な技術の方向性についての情報は、2社ともに大きな差はなかったと考えます。

コダックが、デジタルカメラの開発を世界ではじめて行っている事実からも
デジタル化の影響を甘く見ていたとも思えないのです。

現在、「コダック・モーメント」という言葉があります。
「市場が急激に変化する決定的瞬間」を意味するようです。

かつての成功体験が大きすぎると、新しいイノベーションに乗り遅れることになる
「イノベーションのジレンマ」を奇しくも証明する形となっています。

議論の切り口は様々あると思いますが、
こちらのブログである新規事業やイノベーションの観点から、
2つのことを述べたいと思います。

1つは「イノベーションを起こすこと」を意識して活動を行うことが、
どのような企業であったとしても重要だという点です。

コダックは、フイルム事業以外の分野を切り離すことによって、
イノベーションのタネを自ら放棄してしまったことは
大きな問題だったと考えています。

2つめは長期視点での経営が、
新規事業やイノベーションでは重要だということです。

短期的な収益は、経営者にとって非常に魅力的です。
しかし、短期的な収益という観点では、現状顧客を優先するため、
将来の顧客への準備がおろそかになる危険があります。

コダックも、その当時の銀塩フイルム事業が大きな収益源となっていたため、
そこからの切り替えの必要性は分かっていても、
「まだ儲かっているから大丈夫だろう」という発想になり、
経営者が将来への顧客への準備を後回しにしてしまった可能性があります。

将来のために、長期的な視点を持って、
行動することを、平時から考えておかなくてはいけません。

成功体験を創りだした価値観、風土を変革することは難しいため、
長期的な視点での経営判断を可能とするためには、
変革を意識したビジョンも必要となります。

まとめ

富士フイルムとコダックの事例は、
今後の多くの日本企業(特に製造業)が学ぶべきものが多分に含まれています。

富士フイルムは、コダックの後を追いかけて、
事業戦略を立案し、技術を磨いてきた企業でした。

目標とすべき企業がある場合、それについていく戦略をとることでしょう。
その目標がなくなったときにはどうすべきでしょうか。

現在、多くの日本企業が、欧米企業の追随から、脱却し、
新しい価値を創出することが求められていると考えています。

富士フイルムが新しい価値の創出を見事に成し遂げたことは、
他の企業でも非常に参考になるのと思います。

本日も最後までお読みいただきありがとうございました。

補足

本ブログで取り上げた企業事例につきまして、下記をご参考ください。

イノベーションの参考になる企業事例
本ブログで紹介した事例についてまとめました。 他社事例を自社に取り込むための方法については、下記の記事に解説しています Airbnb(エアビーアンドビー)とクロネコヤマトについての対応 ウーバーが、タクシー業界...

イノベーションのジレンマを避けることは難しい課題ですが、
下記について考察をまとめていますので、是非ご一読ください。

「イノベーションのジレンマ」を避ける方法
イノベーションというと、「ジレンマ」と連想する方も多いかもしれません。 それほど、クレイトン・クリステンセン教授の「イノベーションのジレンマ」は浸透しました。 日本でも書籍は大ベストセラーとなり、一時期バズワードとして扱われました。 ...

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