テスラの凄さはソフトウェアにある:時価総額でトヨタを追い抜いた理由

イノベーション

先日の記事では、コロナウイルスの影響により、
一時的に人工呼吸器が不足する事態が起こった際、
家電メーカーのダイソンと電気自動車メーカーのテスラが、
非常に早いスピードで開発製造を行ったことについて触れました。

イノベーション視点で他部署の業務、他業界を知ることのメリット
先日の記事では、大きな変化の時代に対応するためには、 全社一丸となってスピード感のある対応が求められ、 そのためにも、ボトムアップで 横串を通せる人材が必要であることを述べました。 横串を通せる人材は 複数の部署に顔が広く、業務内容について...

これに付随してテスラモーターについて
新興の自動車メーカーが、これほど注目を集めるのはどうしてか?
電気自動車の最先端のメーカーで電気自動車に投資家が将来性を認めているためか?
という疑問を多くの方が持たれているようです。

日本企業の多くの方は
テスラを「電気自動車メーカー」として捉えていますが、
本領は、自動車というハードウェアではなく、
制御を含めて、日々機能を更新できる「ソフトウェア」にあります。

今回は、どうしてテスラがこれほど注目を(お金も)
集めるのかの本質について、述べたいと思います。

テスラの基本情報と株価

テスラは2003年にイーロン・マスクが創業した電気自動車メーカーです。

イーロン・マスクは、
1999年にオンライン金融サービスと電子メールによる支払いサービスを行う
X.com社の共同設立者として、成功します。
X.com社は2001年にはオンライン決済で、日本でも知られているPayPal社となりました。

2002年には、宇宙関連を経営としたスペースX社を設立。

2020年5月31日には、宇宙船「クルードラゴン」に
アメリカ人飛行士2名が搭乗して、
国際宇宙ステーション(ISS)に到着したことは
大きな話題となりました。

テスラの株価の状況

2020年7月1日時点でテスラは
時価総額は2076億ドル(約22兆3000億円)となりました。

同じ日にトヨタ自動車は時価総額(21兆7185億円)で、
テスラはトヨタを初めて時価総額で追い抜き世界一位となったということです。

このニュースを目にした方も多いと思いますが、
日本における反応としては、

「株価が経営の実態を反映していない」
「過剰な期待感が株価を上げているだけではないか」
「トヨタと同じ評価を得ていることに理解がしにくい」

といったものが多くなっています。

テスラがこのように評価される背景について、
日本のある自動車関係の評論家は、

「量産型の『モデル3』の売れ行きが好調で
業績が安定したことから、注目が集まり株価が急上昇した」

としている方もいるようです。

しかし、こうした評価の前提は
テスラが単なる自動車メーカーであるということに立脚した視点にすぎません。

テスラの本当の凄さや、
今後、他の自動車メーカーに極めて脅威となることの
本質的(テクノロジー的)な背景への理解が全くないのです。

テスラの凄さはソフトウェアの活用にある

冒頭で述べたように、テスラの凄さはソフトウェアにあります。

既存の自動車が、ハードウェアを販売するというビジネスモデルに留まっているのに対して、
テスラが極めて優れている点は、自動車を販売した後も、
ソフトウェアで、日々使い勝手の良い機能が増強される点にあるということです。

たとえば、現在日本国内で販売されている自動車の
「セールスポイント」の一例として、自動ブレーキ機能があります。

この機能はとても便利なものですが、
仮に翌年に自動運転技術が本格的に社会実装されたとしますと、
その機能を使うためには、新しい自動車を購入する必要があります。

しかし、テスラの場合は、ソフトウェアを更新することで
制御系もにも対応ができると考えられるため、
「乗りながら」にして、最新の機能を更新して使うことができるのです。

すでにテスラで、ソフトウェア更新により追加された機能として、
雨の日などに、運転者の近くまで自動車が近寄ってきてくれる「スマートサモン」
という機能がついています。

また、2020年には、お店などの入り口で運転者が降りた後に、
自動的に駐車場まで移動してくれる機能が更新されるということでした。

もちろん、日々の燃費向上やブレーキ機能の向上、
あるいは、季節ごとに社内の音楽や光などを演出してくれる機能なども
ソフトウェアの更新により実現しています。

クリスマスの時期には、クリスマスモードということで、
赤と緑の印象と、クリスマスソングが流れるといった演出も自動でなされるそうです。

テスラは自動車というよりも、
自動車の形をした高性能PCといった捉え方のほうが正しいと考えています。

こうしたことから、テスラが既存の自動車会社とは全く異なる
ということがご理解いただけるのではないでしょうか。

欧米の投資家は、こうしたテスラのテクノロジーへの理解があるため、
結果として株価でトヨタを追い抜くということにつながっているのです。

ある大手の新聞では
「EVに限るとトヨタは世界12位なのに対し、テスラは世界トップ」
だから、株価が急上昇したと的外れな指摘しており驚いたことがありました。

ハードウェアだけの視点で、理解しようとすると上記のようになってしまうのです。

携帯電話からスマホへの移行段階で起きたことが自動車で起きている

ところで、ここで思い出されることは
携帯電話全盛の時代に、アップルからiPhoneが登場した時のことです。

「携帯電話」という評価軸からすると、
初期のiPhoneは、低い品質の製品と判断されてしまいます。

初期のiPhoneは、バッテリーの保ちも悪く、防水機能すらありませんでした。
秀でているとするとネットへの接続くらいだったのです。
多くの日本企業は、「こんなもの売れない」と思ったのも無理はありません。

しかし、iPhoneの本質は携帯型のPCという側面にありました。
そしてアプリという強力な特性を備えていました。

結果はご存知の通りです。iPhoneは世界を席巻し、
携帯電話は見る影もないといった状況です。

iPhoneは、近年のイノベーション的製品の典型的な事例として捉えられています。
同様の動きをテスラをしているということです。

こうした前提条件を理解すると、
株価において、テスラがトヨタを追い抜いたことは、
当たり前のことと受け止めることができます。

まとめ

テスラの凄さはソフトウェアを通じて、
顧客に日々新しい価値を提供している面にあることを述べました。

これは既存の自動車の価値基準とは異なる価値提供の方法です。

テスラが行っていることは、
携帯電話からスマホへの移行期の状況と近いと考えています。

日本企業は、こうした変化の現実と、顧客にどういった価値を与えているか
という視点で改めて自社事業の展望を考えていくことが必要です。

日本や日本企業は、高品質で安価なハードウェアを販売することで
「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の時代を築いたという成功体験があります。
そのため、イノベーティブな製品が登場すると、
どうしても、ハードウェアの視点でしか評価をしがちとなっていると感じています。

こちらのブログでは、「イノベーション」について、
「新結合」だということをたびたび述べてきました。

既存のハードウェアと、新しいソフトウェアの組み合わせは、
これからの社会において、重要な切り口だと考えています。

ソフトウェアへ改めて意識されてみても良いのではないでしょうか。

本日も最後までお読みいただきましてありがとうございました。

追記

ソフトウェアに関連して、iPhoneの真価「アプリ」について次に記事で解説しています。

iPhoneのイノベーティブさは、ビル・ゲイツも見抜けなかった
イノベーティブな製品やサービスが、世の中に登場した際に、 どのような価値があるかを評価することは難しいことです。 イノベーティブな製品やサービスはこれまでに ないものであるため、過去の経験による判断が通用しないからです。 今回取り上げるのは...

イノベーションが「新結合」ということを認識する重要性を下記の記事でまとめています。

イノベーションとは:イノベーションは「技術革新」ではなく「新結合」
「イノベーション」という言葉を聞くと、 多くの方が「新技術」「技術革新」と連想されないでしょうか。 しかし、本来のイノベーションという言葉は「新結合」を意味します。 実は、イノベーションは「技術である」という誤解が、 長年、日本企業にとって...

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