イノベーション・​マネジメントの規格「ISO56002」を活用する際の注意点

クジラ事業戦略

「イノベーション・マネジメントシステムに関する国際規格(ISO56002)」
が注目を集めています。

これは経済産業省が主導している国際規格で、
経済産業省のホームページによれば、

「新たなイノベーションを生み出すための変革を目指し挑戦する企業をより増やすべく、日本企業における価値創造マネジメントに関する行動指針を策定しました」

と説明されています。

日本企業における価値創造マネジメントに関する行動指針を策定しました (METI/経済産業省)
イノベーション・マネジメントシステムの国際標準化の動き等を踏まえ、経済産業省はイノベーション100委員会(※)と共に、企業からのイノベーション創出を加速させる観点から、日本企業における価値創造マネジメントに関する行動指針を取りまとめました。

イノベーションや新規事業に関係する方は、
「ISO56002」に関心をお持ちかと思いますので、今回解説していきます。

経営者への7つの問いかけと12の推奨行動

下記に紹介するのは、
「日本企業における価値創造マネジメントに関する行動指針」のなかで紹介されている
「経営者への7つの問いかけと12の推奨行動」です。

それぞれの詳細については、下記のHPから、PDFをご参照ください。

日本企業における価値創造マネジメントに関する行動指針を策定しました (METI/経済産業省)
イノベーション・マネジメントシステムの国際標準化の動き等を踏まえ、経済産業省はイノベーション100委員会(※)と共に、企業からのイノベーション創出を加速させる観点から、日本企業における価値創造マネジメントに関する行動指針を取りまとめました。

1)何を、目指すのか
① 存在意義に基づき、実現したい未来価値を構想・定義し、
 価値創造戦略をつくり、社内外に発信する

2)なぜ、取り組むのか
② 自社の理念・歴史を振り返り、差し迫る危機と未来を見据え、自社の存在意義を問い直す

3)誰が、取り組むのか
③ 経営者自らが、戦略に基づき、情熱のある役員と社員を抜擢し、
 常に、守護神として現場を鼓舞し、活動を推進する

4)何に、取り組むのか
④ 既存事業の推進と同時に、不確実な未来の中から、
 事業機会を探索・特定し、短期的には経済合理性が見えなくても、
 挑戦すべき新規事業に本気で取り組む

5)どのように、取り組むのか
⑤ 資金・人材等のリソース投入プロセスを、既存事業と切り分け、スピード感のある試
行錯誤を実現する【意思決定プロセス・支援体制】

⑥ 経営状況に関わらず価値創造活動に一定の予算枠を確保し、
 責任者に決裁権限を付与する【財源・執行権限】

⑦ 価値創造にむけ、社内事業開発と社外連携を通じて
 試行錯誤を加速する仕組を設ける

6)どのように、続けるのか
⑧ 価値創造活動においては、自由な探索活動を奨励・黙認すると共に、
 リスクを取り、挑戦した人間を評価する仕組を装備する【人材・働き方】

⑨ 価値創造活動においては、小さく早く失敗し、
 挑戦の経験値を増やしながら、組織文化の変革に取り組む【組織経験】

⑩ スタートアップとの協創、社内起業家制度の導入等により、
 創業者精神を社内に育む【組織文化】

⑪ スタートアップや投資家に対して、価値創造活動を発信し、
  自組織の活動を支える生態系を構築する

7)どのように、進化させるのか
⑫ 経営者が価値創造活動を見える化(文書化)し、
 組織として反芻(はんすう)し、活動全体を進化させ続ける

ISO56002を活用する際の注意点

新規事業やイノベーションの型としては参考になりますが、
注意点として、紹介されている施策を
そのまま取り入れていくのではなく、
自社の内実や仕組み、強みを十分に活かすことを意識して、
取り入れるか否かを、判断していく必要があります。

上記の「12の推奨行動」から分かるように、
企業の置かれている状況や業種業態によって、
施策として活かせるものと、そうでないものがあります。

たとえば、⑤ 資金・人材等のリソース投入プロセスを、既存事業と切り分け、スピード感のある試
行錯誤を実現する【意思決定プロセス・支援体制】
では、企業によっては既存事業のリソース投入プロセスと分離させるよりも、
一体的な動きのほうが、後工程を考えた場合にスムーズに進むケースもあります。

自社に合った形でのカスタマイズしながら、ヒントとして活用していくという意識が、
必要となります。

ISO56002を取り入れれば終わりという話ではない

取り組みを行うという場合、特に気をつけなくてはならないのが、
ISO56002の仕組みを取り入れたことだけで、満足してしまわないように
しなくてはいけないという点です。

ISO56002は、ベースとなる仕組みだと捉えて、
そこから新規事業やイノベーション創出の際に、各社が強みを活かして、
注力する部分が本番となります。

新規事業やイノベーションは、
特定の「型」ができているからといって、成功するという性質のものではありません

もし、「この国際規格通りに進めることで、
新規事業やイノベーションが創出できる」と、
(主に経営陣が)考えてしまうと、それが思考の「ガラスの壁」になってしまい
他の方法、仕組みを検討することを無意識にストップしてしまうことが怖い点です。

新規事業やイノベーションは、
企業ごと、担当者ごとに課題意識を持ち取り組んでいくことが重要です。

まとめ

「ISO56002」は、イノベーションの理解という意味では
大きなヒントとなります。
しかし、示されている内容をそのまま仕組みとして
取り入れてしまうと、企業によっては強みを活かせずに終わってしまう可能性があります。

「ISO56002」は、あくまでヒント集として参考にし、
施策についても、自社の状況を勘案した上で、取り入れるか検討していくことが重要です。

最後までお読みいただきましてありがとうございました。

補足

イノベーションの本質の理解としては、下記も
参考になるかと思いますので、是非ご参考いただければ幸いです。

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「イノベーション」という言葉を聞くと、 多くの方が「新技術」「技術革新」と連想されないでしょうか。 しかし、本来のイノベーションという言葉は「新結合」を意味します。 実は、イノベーションは「技術である」という誤解が、 長年、日本企業...

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