イノベーションや新規事業創出の際において、
「市場の未決の課題」からスタートすることは、
進め方として王道であり、事業化の成功確率も高くなります。
「市場の未決の課題」を探索するためには、市場と接点を持ち、
観察を行うことで、顧客が気づいていない課題を掘り起こすことを行います。
その課題について、自社の強みなどを用いて
解決をすることで新規事業創出やイノベーションにつなげていきます。
しかし、少なくない企業の取り組みプロセスとして
という流れが行われています。
ところが「自社の強み」先行型の場合、
たとえば、開発した技術を、いかに市場で展開するか
ということに焦点が当てられてしまうため、
課題や顧客の認識が後回しになってしまうという危険性があります。
今回は、「市場の課題」を発見するために、
市場と接点を持つことの重要性について解説していきます。
通用しなくなったかつてのプロセス
高度経済成長の時代、日本企業では、効率的な大量生産を行い
製造業で大成功を収めました。
欧米企業の先行した製品や技術、サービスを参考にして、
効率的な製造を行い、高品質低価格の商品を市場に提供していました。
この時代においては、製品が完成した後に
営業活動を行って売り先を見つけるというマーケティングが通用していました。
後追い商品でもコストアプローチで、競争優位性が発揮できたからです。
しかし、現在では、この手法は通用しにくくなっています。
多くの製品が、すでに市場にある状態(飽和状態)で、
コストアプローチ(人件費高騰のため)での対応もできなくなってきています。
そのため、製品やサービスはできたものの売り先(顧客)がいなかった、
あるいは、顧客にとっての価値が近い(しかし技術は異なる)製品がすでに市場にある
といった状況となり、失敗するというケースが出てきています。
もし、自社において、
「製品ができてから顧客を探す」という形に近いマーケティング活動やアプローチが
行われているようでしたら、
プロセスをもう一度見直すタイミングかもしれません。
「市場の未決の課題」からのスタートするプロセス
現在、有効なプロセスとしては、冒頭でも紹介した
という流れで進めることです。
「市場の未決の課題」からスタートすることで、
課題を持っている顧客の存在が見えてくるため、
売り先も、初期の段階から見えることになります。
これを実現するためには、
製品やサービスの開発者が自ら市場と接点を持ち、観察を行うことが必要となります。
日本の多くの企業では、新規事業を行う際に、
研究開発の方と経営企画の方が中心になって対応しています。
こうした方々が、たとえば営業担当の方と同行するなどして、
意識的に市場との接点を持つという地道な取り組みが重要となります。
市場との接点というと、b2cの企業では、積極的なマーケティング活動を
行っていますが、b2b企業にとっても重要となっています。
たとえば製造業の場合で、取引先が研究開発の方であった際には、
自社の研究開発の方が直接訪れることで、
これまで見えてこなかった顧客の課題(自社の強みを活用することでで解決できそうな)
が見つかったり、
ニーズを研究開発者視点で詳細に汲み取ることによって
開発スピードが加速するなど多くのメリットがあります。
現在、技術者が営業活動に出ていくことに注目が集まっています。
ある大手企業では、研究開発者の1/3を営業部に異動させることで、
研究開発人材と、顧客との接点を直接的に作り上げることに
成功しています。
営業先の顧客も研究開発者であるので、技術者同士が直接話しをすることで、
相手の意図を短期間で汲み取ることにつながり、大きな成功につながりました。
研究開発の方が、積極的に市場(あるいは顧客)と接点を持つという
活動は少人数からでも構わないので行っていくことが重要となります。
まとめ
「市場の未決の課題」からスタートするために、
意識的に市場との接点を持つことの重要性について述べてきました。
現在、市場環境が大きく変化していることから、
それに合わせて、企業の対応も変化をさせなくてはいけない難しい時代となりました。
新しい製品やサービスが求められる時代においては、
そこに至るプロセスについても、各社が考えていく必要があるのかもしれません。
最後までお読みいただきましてありがとうございました。
補足
市場の未決の課題については下記の記事もご参考いただけるかと思います。
是非ご一読いただけますと幸いです。
また、市場の未決の課題からの商品開発として、文房具業界の事例が参考になります。下記の記事をご参照いただければと思います。
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