iPhoneのイノベーティブさは、ビル・ゲイツも見抜けなかった

イノベーション

イノベーティブな製品やサービスが、世の中に登場した際に、
どのような価値があるかを評価することは難しいことです。

イノベーティブな製品やサービスはこれまでに
ないものであるため、過去の経験による判断が通用しないからです。

今回取り上げるのは、iPhoneについてです。
iPhoneは今やイノベーティブな製品の代表とも言えます。

しかし、発売当初段階では、
マイクロソフトのビル・ゲイツ氏や
『イノベーションのジレンマ』で知られる
ハーバード・ビジネス・スクールの
クレイトン・クリステンセン教授といった
知性の巨人たちですら、高く評価をしていませんでした。

自社でイノベーティブな製品、サービスを出す場合でも
あるいは競合のそれを受けて対応する場合でも、
イノベーティブな製品、サービスは評価が難しい
ということを認識することが大切だと考えています。

評価が難しいことを前提にすることで、
自社からリリースする場合も、ライバル企業の動向に対応するにしても、
「正しく向き合っていく」ことが可能になると考えるからです。

iPhoneは携帯電話の視点からは価値が低いと評された

iPhoneは2007年にアップルにより発売された
スマートフォンです。

発売段階では、防水機能もなく
バッテリーの持ち時間も短かいというデメリットがあり、
メリットは、インターネットに接続できるところくらいでした。

iPhoneのデメリットは「携帯電話」という価値の視点からすると
大きく価値を損なうものです。

なぜならば、バッテリーがすぐ切れるというのは、
「長く電話ができない」ことを意味します。

「携帯電話」は電話ができることが最大の売りですから、
短い時間しか通話ができないiPhoneは
不完全な製品ともみられていました。

当時の日本企業は、携帯電話(ガラケー)の
優れた商品を多く出していました。

生活防水機能をもち、またバッテリーも長く持ったのです。
webへの接続という観点では、「iモード」があったため、
機能的には、iPhoneは脅威ではないと判断されていました。

ビル・ゲイツとクリステンセンの評価

上記のような状況であることから、
マイクロソフトのビル・ゲイツ氏は
iPhoneについて評価をしていませんでした。

クレイトン・クリステンセン教授も
「成功しないだろう」と述べてたのです。

しかしその後の結果は、皆さんご存じの通りです。
iPhoneがグローバルで一気に広がり、
近年で最もイノベーティブな製品となりました。

ビル・ゲイツ氏は、最先端のテクノロジーについて
幅広く、深い知見があり、
クリステンセン教授は経営の本質を熟知している方です。

それでもiPhoneの価値を見誤りました。

iPhoneについては、その後に、
ビル・ゲイツ氏は
「自分のビジネスパーソンとしてのキャリアのなかで、
 最大の後悔は、iPhoneの席捲を見誤ったことだ」と語っています。

真の価値は「アプリ」にあり

では、iPhoneの真の価値はどこにあったかと言えば、
「アプリ」にありました。

世界中の人々がアプリの開発に携わることができ、
「こういうアプリが欲しい」「これがあったら便利だ」
というものを次々と開発していきました。

iPhoneはアプリによって、
本体を買い替えなくても、機能増強が可能であるという仕組みを
実現しました。
「スマートフォン」の意味と価値がここにあります。

企業側の観点では、
プラットフォーム型のビジネスである点も強力な武器となりました。

日本ではソフトバンクの孫正義さんが、
「手のひらに乗るPCが開発された」と述べていましたが、
PCはソフトによって、機能増強が可能であるということからすると、
iPhoneの価値を理解していたと言えます。

イノベーティブな製品、サービスを出す場合の対応

ところで、企業において
新規事業的に新製品や新サービスを展開する際に、
開発段階から価値(いくらになるか)の提示を求められる場合があります。

その場合に概算的に価値算出を行うための方法については下記で解説をしています。

新しい製品、サービスの値決めは、価値の理解と置き換わる製品、サービスの値段を参考に
新しい価値の製品やサービスを展開する際に、 「いくらで」提供するかの値決めは難しい問題です。 特にイノベーティブな製品、サービスの場合、 直接的に参考となる数字が市場にないため、判断が難しくなります。 そこで、イノベーティブな製品、サービス...

しかし、全く新しいイノベーティブな製品、サービスの場合、
市場に出してみないことには、
顧客にとっての価値を判断できないという面もあります。

特に現在、コロナウイルスの影響により
社会が大きく変化している状況のなかで、
その変化に対応するような新しい製品、サービス展開が
必要となっています。

ここで重要だと考えているのが、
「まず世の中に出して反応を見る」という意識です。

iPhoneが防水性がなく、バッテリーが持たなくても
市場に投入したように、
完全でなくても、まず市場に出してみることが必要となります。

日本人や日本企業は、製品やサービスについて
「完成したもの」を市場に出したいという気持ちが強いと感じます。

完成度の高さを求めることは、
競争優位性の源泉のひとつではあるものの、
現在は先のことが見えにくく、試行錯誤のなかで
答えを見つけることが必要だと感じています。

試行錯誤の第一歩として、
まず市場に出すことを意識することが必要だと考えています。

また逆に競合企業(製品やサービスが新しく出された結果、競合となる場合も含む)
が、イノベーティブな製品、サービスをリリースした場合は、
「評価そのものが難しい」ことを意識して、「向き合っていく」
ことが大切だと考えます。

ここで見極めを誤ると、一気に足元をすくわれる
ということになるからです。

まとめ

iPhoneの事例から、イノベーティブな製品、サービスの
評価は難しいことを説明いたしました。

今後、デジタルトランスフォーメーションの加速に伴い、
新しい製品やサービスが
これまで以上のスピードで世の中に出てくると考えています。

ただ、初期段階での評価は、自社・他社問わず、
難しいことを前提に向き合っていくことが大切だと考えています。

本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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