「イノベーション」とは「新結合」であり、
「新しい組み合わせによる新しい価値の創出」を目的としています。
イノベーションというと、「技術」の観点ばかりが強調されがちですが、
「技術」の枠だけに囚われず、
たとえばサービスや商流、製造プロセスなどでの「新結合」を
考えていくことが重要となります。
「新結合」には新しい組み合わせが必要となりますが、
そのヒントとして、「異なる分野のイメージを転用する」デザインの観点が参考になります。
今回はデザインの視点からのイノベーションを考えてみます。
化粧品に見られるストレスを軽減するデザイン
製品のデザイン、イメージ戦略を考えるうえで、
非常に参考になる業界として「化粧品業界」があります。
ブランドイメージが、製品の機能以上に重視される業界である点がポイントとなります。
化粧品業界では、
製品のパッケージデザインに大きく力を入れており、
実際このデザインの良し悪しが売上に大きな影響を与えます。
しかし、表面的なデザイン性だけを重視しているかというと、
それだけではなく、
たとえば、化粧水のボトルにしても、価格帯が高いものほど
「毎日使うもの」ということが意識されており、
使うなかでのストレスを減らす検証が徹底的に行われています。
蓋が閉まりにくい、使っていると飛び散る、
余計なところに、化粧品が付いてしまうといったことがないように
試行錯誤が繰り返され、いかに心地よく使えるかがテーマに
パッケージの開発が日々進められています。
人間のストレスというのは、ほんの少しのものであっても
「毎日使う」場合は積み重なっていきます。
心地よく使ってもらい、次の購買につなげるためにも
パッケージがひとつの機能的要素として重要であると言えます。
たとえばある女性用の基礎化粧品は、
片手でも蓋をしめやすく、数回ひねれば完全に密閉されます。
しまりすぎて開かないということはなく、
次に使う時にも、力を入れなくても開くような工夫がなされており、
開閉のストレスというものがあることすら意識せずに使うことができます。
近年「ユニバーサルデザイン」が意識された製品が多くなっていますが、
今後はたとえばB2B企業やサービス業などでも、
力が入れられ新しい価値につながっています。
文化・言語・国籍や年齢・性別などの違い、
障害の有無や能力差などを問わずに利用できることを目指した
建築(設備)・製品・情報などの設計(デザイン)のことです。
イメージをどう転用するか
化粧品では、毎日使うことを意識したデザインとともに、
製品そのもののイメージについても、パッケージで表現されています。
たとえば、化粧品の老舗ポーラが
2017年「リンクルショット メディカル セラム」を発売しました。
日本初の「シワを改善する」医薬部外品の認可を得た美容液で、
2017年1月の販売開始から、1年で94万個、約130億円と
化粧品業界では異例の大ヒット商品となりました。
「リンクルショット メディカル セラム」は
「医薬部外品の認可を得た美容液」として「シワを改善する」ことが認められた
日本ではじめての製品であり、「機能」としてもイノベーティブな商品といえます。
「リンクルショット メディカル セラム」は、
本体が「青」、蓋が「金」で、斬新なパッケージデザインです。
(POLA 「リンクルショット メディカルセラム」)
このパッケージは、
「日本初のシワを改善する医薬部外品の認可を得た美容液」ということから、
「宇宙とはじめて到達した星」をイメージしています。
こうしたイメージを
化粧品のパッケージデザインに「結合」させていることが分かります。
これはある意味ではデザインの需要なポイントと言えます。
「化粧品」と「宇宙」は、全く異なる領域です。
それを結合したことにより斬新なデザインに昇華させています。
ルイヴィトンは日本の家紋からデザインをイメージしたことが
よく知られていますが、
こうしたイメージの転用がデザイン業界の強力な手法となっています。
斬新なデザインは異分野のイメージ結合から生まれる
化粧品業界以外に、デザイン性、ブランドを重視する業界として
「腕時計」の業界があります。
腕時計の機能は「時間を示す」ことですが、
機能による競争優位性がなくなった製品でもあります。
そのため、ブランドイメージやデザイン性、広告に力を入れています。
しかし、「腕時計のデザイン」と言われるとどうしても思考が
限定的なってしまうことはご想像いただけるのではないでしょうか。
そこで、「樹木」「春」「海」といったテーマを設定し、
そのイメージを腕時計と組み合わせていきます。
こうした手法で、毎年新しいデザインを生み出しているわけです。
近年の面白い事例として
ある「高級バイク」のデザインイメージを腕時計に転用したというのがあります。
スウォッチが2010年に発売した
腕時計「ティソ T―レース クロノ クォーツ」です。
スタイリッシュなデザインなのですが、
「高級バイク」からのイメージ転用と指摘されなければ、
何をもとにデザインされたのかなかなか気づくことは難しいのではないでしょうか。
しかし、「高級バイクのイメージでデザインしました」と
言われると「なるほど、そうだ」と思えてくるところが面白い点です。
転用しているのは「イメージ」ですから、「そのまま転用した」とも全く感じられず、
新しいデザインの印象だけが残るところも、イメージ転用の大きなメリットと考えられます。
もう一歩先にいく「イノベーション」の発想
ところで、以前発想法のヒントについて解説をいたしました。
このなかの「俳句から得た発想法」が
デザインの転用と併用して応用ができます。
元となるイメージから発想を行い、
さらにそこから次の発想を行うという方法です。
いくつか発想した後で、
最初のものとの組み合わせを行うと、
これまでになかったが関係性がないわけでもなく、
どうしてそのような発想に至ったのかのタネが
見えにくいものができあがります。
たとえば、さきほどの「バイク」と「腕時計」であれば、
「バイク」→「スピード」→「風」といった具合に
連想をしていき、今度は「風」のイメージを「腕時計」と結合させる、
といった流れです。
新製品、新サービス、デザインの分野など
幅広く活用できますので、是非一度お試しください。
まとめ
デザインの関係では、
異分野からのイメージを転用する手法が活用されています。
異分野との「新結合」は、イノベーションの本質ですので、
自社、ご自身の領域とは異なる分野にあえて、
ヒントを求めることが重要だと考えています。
このブログをお読みになっている男性の方で、
「化粧品は一度も使ったことがない」という方も多いと思いますが、
デザインや、包装紙の質感、瓶やチューブの手触り、
使用感、香りといった五感を通じて感じられる
面白い部分、気付きが多く含まれていますので、一度お試しいただくのも
良いかと考えています。
本日も最後までお読みいただきましてありがとうございました。
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