ポストコロナ時代の製造業の対応:ソリューションビジネスへの展開

ポストコロナ

前回は、製造業における
DX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みの
特徴的な動きとして下記の2つがあることを説明しました。

(1)VR、ARなどの活用
(2)ソリューションビジネスへの展開

ポストコロナ時代の製造業の対応:DX推進の取り組み
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前回は、(1)VR、ARなどの活用について述べましたが、
今回は(2)ソリューションビジネスへの展開について説明します。

ソリューションビジネスへの事業展開は、
さまざまな分野の企業が経営計画に組み込んでいます。

ソリューションビジネスを成功させるためには、
自社が顧客に提供している価値を改めて考え、
「結果的」にたとえばAIやIoT、ロボット、ビッグデータの活用して
ビジネス展開を行うという順番で進めることが重要です。

DX推進の潮流としての
ソリューションビジネスへの展開について、
製造業が、近年、対応のスピードを上げている
背景や取り組み事例を紹介していきます。

また、自社が顧客に提供している価値の本質の理解についても
後半で解説していきます。

ソリューションビジネスとは

DX推進の切り口として、
AIやIoTを活用して、自社製品を通じた
ソリューションビジネスへの展開があります。

ソリューションビジネスは
従来の商品・サービスだけを提供するビジネスではなく、
商品・サービスを通じて、
顧客の問題、課題までを解決するビジネスを意味します。

ソリューションビジネスへの展開の成功事例として、
以前紹介した記事で、
純水製造メーカーの取り組みを取り上げました。

「モノ売り」から「サービス化」の視点で「自社の真の価値」を知る
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この企業では、b2b向けに工場用の浄水器を製造販売していましたが、
ある段階で、顧客が必要なものは、浄水器ではなく、
純水であったことに気が付きます。

そこで、工場の敷地内に大型浄水器を設置して、
定額で純水を提供するサービスを展開します。

このビジネスモデルが大ヒットし、
現在同社における主力事業となっています。

また、上記の例では、純水の生産コントロールや、
顧客側で必要とされる量の把握などにおいて、
センシング技術が重要な要素となっていました。

こうしたセンシング技術については、
デジタルデバイスや先進技術の発達により、
IoTが一般化することによって、
より精緻に情報を集めることができ、
顧客に提供された価値の評価も常時行うことが
できるようになっています。

顧客の行動情報を把握することによって、
顧客のほしいものを、必要なタイミングで届ける
ことも可能となっています。

ビジネスを取り巻く環境も
ソリューションビジネスへの展開を後押ししており、
こうした動きを加速化しています。

製造業以外からの参入も増加も、急対応を推し進める要因

一方で、デジタル化によって
ヒト、モノ、サプライチェーンの情報がつながるようになり、
製造業以外(あるいは少人数の事業者)から、製造業への
参入の事例も増えてきています。

端的な例としては、Googleが
自動運転を主軸とした自動運転車が、
既存の自動車メーカーの驚異となっていることが挙げられます。

自動運転技術についてはAIでの判断が必要となりますが、
Googleは得意とするAI技術をデジタルを通じて展開することにより、
自動運転車の事業展開を進めています。

少人数の事業者の参入例としては、
株式会社UPQ
(2015年に設立。2021年1月1日に株式会社Cerevoに吸収合併される形で消滅)
があり、
元カシオの中澤社長がほぼ一人で、家電メーカーを展開していました。

一人での家電メーカー展開を可能にしているのも、
デジタルのつながりによるものです。

試作品を3Dプリンターや、
データを送れば希望のデザイン通りに立体造形物を作成する
サービスを活用することで対応ができます。

製造については、個人でもOEMを請け負ってくれる工場が出てきており、
販売網については、ネット上で海外の顧客にも販売できる状況です。
宣伝もネット上での対応が大きな効果を発揮します。

個人でも、サプライチェーンを構築することができ、
製品を世の中に出すことが可能となってきました。

これまで、製造業という分野は、
製品を作り出し、顧客に届けることが難しかったため
異業種や個人の参入のハードルが高い業界でした。

しかし、デジタル化によって参入が可能となったことから、
製造業側としても、事業を防衛する立場として、
単に製品を作り、届けるということだけでは
競争優位性が保てなくなってきています。

そこで、製品を売るだけではなく、
さらなる付加価値を意識して、
デジタルを活用したソリューションビジネスへの展開を
急速に進めているという状況です。

ブリヂストンの航空機整備作業の事例

ここからは、直近のソリューションサービスの例として
ブリヂストンが行っている
タイヤ摩耗予測技術を活用した航空機整備作業の
事例を紹介します。

航空機のタイヤは、航空機の重さを支えながら、
高速での離着陸を繰り返します。

これまでは、航空機が、数百回離着陸をすると、
新しいタイヤに交換するということが行われてきました。

しかし、環境や条件が異なるために、
規定の離着陸回数よりも前に、タイヤが摩耗してしまう
ことも多かったようです。

そのため、緊急でのタイヤ交換や、
タイヤ交換時期が重なってしまうことが
現場の大きな負担となっていました。

これに対して、航空会社(JAL)のもつ
フライトデータと、
ブリヂストンの持つタイヤに関するデータをもとに
ブリヂストンがタイヤの摩耗度を予測して、
計画的な交換を行うというものです。

航空会社側にとっては、
計画的な交換が行えることで、
現場の負担も減り、タイヤの摩耗に起因する
事故の確率も減らすことができると考えられます。

また、ブリヂストンにとっても、
定期的な収益が確保でき、
競争優位性にもつながります。

自社が提供している価値を見極める

ソリューションビジネスを展開する際の
重要な視点は、
自社が顧客に届けている価値がどのようなものかを
深く理解するということです。

製品あるいはサービスを通じて、どのような価値を
顧客に届けているのかについては、
一段抽象化して考えることが有効な打ち手となります。

また、顧客が自社製品やサービスをどのように
活用しているかの現場を観察させてもらう
というのもお勧めです。

ソリューションビジネスの場合、
顧客との関係性が一段深くなります。

ソリューションビジネスの場合、
製品を売って終わりではなく、
その前後まで担うことになり、より接点が広くなるためです。

こうしたこともあり、顧客と一体となって
新しいサービスを提供するという意識が重要となります。

まとめ

製造業のDX対応として、
ソリューションビジネスの展開という潮流を解説しました。

自社が顧客に届けている価値の本質を改めて理解することが
ソリューションビジネスの展開の第一歩と言えます。

以前から、「モノからコトへ」と言われ、
多くの事業領域においてサービス化の視点を持つことの
重要性が指摘されていました。

世の中全体としてデジタル観光が整いはじめ
サービス化、ソリューションビジネスの展開が
よりスムーズに進められるようになったと言えます。

今後も、サービス化やソリューションビジネス展開の
動きは活発になっていくと考えており、
解説した通り、異業種や個人の参入も増えることが想定されますので、
ソリューションビジネスの展開については、
業種業界を問わず、注視していく必要があると考えています。

本日も最後までお読みいただきましてありがとうございました。

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