顧客に提供する価値の意味を考え、技術の優位性にこだわらないことの重要性

砂場に置かれたブラウン管テレビ 新規事業

自社に強みがある技術を活用した製品化の実現は、
多くの企業が日々取り組んでいる課題です。

しかし、類似製品が他社からも販売されており
その製品が、自社に強みがある技術以外で実現している場合、
差別化を理由に、自社技術の優位性にばかりこだわってしまう場合があります。

それによって、顧客価値がどこにあるのかを見誤り、
結果として失敗につながるケースが出てきています。

今回は顧客価値を、技術の視点から考えてみたいと思います。

顧客の本音

砂場に置かれたブラウン管テレビ

2006~2010頃にプラズマテレビがクローズアップされました。
当時はブラウン管テレビから薄型テレビに切り替わるタイミングでした。

この頃は薄型テレビといえば、「プラズマ」か「液晶」であり、
初期段階ではプラズマが機能的に優れた面が多かったようでした。

その後、液晶ディスプレイの技術革新が進み、
大型化、低価格化が実現されて、プラズマテレビは姿を消します。

ところで、多くの顧客にとっては、
ブラウン管に替わる薄型テレビという製品ジャンルには関心があったものの、
「プラズマテレビ」か「液晶テレビ」かといった違いには
さほど関心がありませんでした。

顧客にとって最大の関心は
「ブラウン管の奥行きがあるテレビ」と「薄型テレビ」の違いで、
「薄型」か否かという点であったのです。

顧客価値の視点を持ち続けることの必要性

この時代、パナソニックが「プラズマテレビ」に力を入れていました。
CMでも「プラズマテレビならパナソニック」といった紹介がされていたと記憶しています。

プラズマテレビは、パナソニックが技術的な強みを発揮した製品で、
技術的なこだわりが強かったと捉えています。

その後、プラズマと液晶の技術開発競争のなかで、
液晶が機能、価格ともに優位性を発揮していき、プラズマが遅れるようになりました。

結局、パナソニックは、プラズマテレビから撤退し、
液晶テレビの生産に切り替えることを行います。
プラズマの失敗の後遺症は大きく、パナソニックの停滞の原因のひとつとも言われています。

「自社の技術のプラズマ」にこだわった結果が、こうした事態を招いたということです。

自社の独自技術にこだわってしまい、
顧客に提供できる価値の観点から遠ざかるとこうしたことが起こります。
これを防ぐためには、顧客価値の視点を強く意識して持ち続けることが重要となります。

機能ではなく技術にクローズアップしているならば要注意

顧客価値から遠ざかっている特徴の1つが、
「機能ではなく、技術をPR」するところにあります。

いくつかの企業が、機能の近い製品を出している場合、
自社が異なる技術をベースにしているのであれば注意が必要です。

機能的に、自社の技術が、
他社のそれと異なる大きなプラスの価値を提供できるようであれば、
顧客にとってのプラスの価値を強調する戦略を選びます。

しかし、プラスとなる顧客価値が提供につながらない場合は、
もう一度冷静になって状況を分析し、今後の方策をゼロベースで考えることが必要です。

まとめ

自社に強みがある技術で、新製品が完成し、それを市場に出すことは
重要な取り組みです。

しかし、自社の強みがある技術にこだわりすぎて、
製品が提供する価値の本質を見誤ると、大きな失敗につながります。

製品やサービスが顧客にどのような価値を提供しているかについては、
常に意識して考えていくことが重要だといえます。

本日も最後までお読みいただきましてありがとうございました。

補足

企業価値について、「サービス化」という視点があります。
モノ売りを脱却していくという流れが今後も広がると考えられますが、
そのヒントとして、下記の記事をご参照いただければ幸いです。

「モノ売り」から「サービス化」の視点で「自社の真の価値」を知る
新規事業を検討したり、事業計画を見直す場合などで 自社の強みについて、再認識することは非常に重要です。 自社の強みについては、もちろん自社の社員の方が最もよく理解しているかと思いますが、 一方で、社内から見た場合と社外から見た場合で、 別の...

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