新製品、新サービスの積極的な市場投入の必要性:ガリガリ君の赤城乳業に学ぶ

子供と分かれ道 事業戦略

新規事業開発やイノベーション創出を行うなかで、
これまでの既存事業や既存商品、サービスとは異なるものを
あつかう局面が出てきます。

そうした新製品やサービスを市場に出した場合、
イノベーティブであればあるほど、売上や反応の予測は難しく、
ゴー・ストップの判断も難しくなります。

しかし、現在は正解が見えにくい時代であるため、
まずは進めてみて、市場の反応を見ながら対応していくことが必要となります。

今回は、ユニークな新製品を積極的に市場に投入している
赤城乳業の事例から、新しい製品・サービスをまず世の中に出すことの重要性について
解説していきます。

赤城乳業とガリガリ君

赤城従業という会社があります。
アイスの「ガリガリ君」を製造販売している企業で、
1961年設立(創業1931年)、売上高が450億円、従業員数は600名強
という規模の会社です。

ガリガリ君というと
通常の「ソーダ味」に加えて、近年では「なし味」が大人気となりました。

 

季節限定の味にも果敢に挑戦しており、
これまで50種類以上の味のガリガリ君を市場に投入してきました。

また、ご存知の方も多いと思いますが、
「コーンポタージュ味」「ナポリタン味」のガリガリ君は、
「マズイ」ということで、かえって(!)評判となった味もあります。

コーンポタージュ味などは、「マズイ」ことが評判になったにも関わらず、
一時、売れすぎて発売停止状態になったそうです。

「まず行ってみる」ことの大切さ

現在の先が読めない時代においては、その新製品が市場に受け入れられるか
新製品の投入してみなくては実際のところはわからないものです。

事例で紹介した「コーンポタージュ味」「ナポリタン味」のいずれも甘くないアイスです。
既存商品(甘いアイス)とは明らかに異なり、
既存商品の視点からでは、両味は売れる可能性も少ないという「頭では」考えられます。

しかし、それが企画会議を通り、
製造、営業、広報といった各部署の理解を得ながら、
最終的に社長判断で、市場に投入する決断がなされています。

これは、各部署の責任者、経営陣が、
「新製品について、市場に問うてみなければ分からない時代だ」ということを
十分理解しているからこそ可能であった判断です。

これからの時代の新製品、新サービスの市場投入については、
「まず行ってみること」が大切だと考えています。

人材育成と企業風土の面からのメリット

赤城乳業のこのようなユニークな商品の発案は
入社3~5年目の若手社員によるものだそうです。

多くの企業では、若手社員が発案した製品やサービスで、
既存のものと大きく異なるものが提案された場合、
市場に出される可能性はほとんどないでしょうが、赤城乳業では実現しています。

若手社員がこうした大きなプロジェクトを任された場合、
「自分のアイデアが採用された」と大きな喜びと自信を持つことになります。

こうした経験は、大きな成長へとつながり、
次世代のリーダー候補として期待することができます。
最高の次世代社員育成と言えるでしょう。

一方で、実際に商品化して市場に出すまでには、
3~5年の経験では実務対応が難しいと想定されます。
実現化には、上司や先輩社員など
周囲がサポートがなされていると考えられ、
そうした仕組み、風土の整備につながっている点も、注目すべきポイントです。

リスクの事前に算出していおくことの重要性

ユニークな製品を市場に積極的に投入する経営判断は
失敗した場合の損害についての事前の算出があってはじめてできるものだと考えています。

たとえば「ナポリタン味」では、製品が売れずに3億円の赤字となったということでした。

しかし赤字3億円は、当初の事業計画から、最大赤字幅の計算もなされていると推測され、
事業本体には影響を与えない想定の範囲内の損失だと考えられます。

一方で、「ナポリタン味」が「赤字が出るくらいマズイこと」は、
非常にインパクトのある情報です。
ネットを中心に各メディアが取り上げることによって、
ガリガリ君全体にとっては、莫大な広告宣伝効果につながっています。

メディアでの取り上げられ方を勘案しますと、
3億円以上の広告宣伝効果が得られていると想定されます。

失敗した場合の広告宣伝効果を織り込むことは現実的には難しいと考えられますので、
結果の側面が強いかと思います。

しかし、赤字につながったとしてもそれで終わりではなく、
そこからなにかに活かそうとする意識があってこその対応であったと考えられます。

まとめ

先が読みにくい時代、これからの新商品や新サービスのあり方は
まず行ってみることが重要です。

さらに赤城乳業のように、最大リスクを計算しながらも、
「人材育成の観点」「企業風土の観点」を踏まえ、実行していくことが大切です。

新しいことに挑戦していくことは
今後の企業の生き残っていくためにも必要な視点です。
試行錯誤のなかで、新しい価値を生み出す取り組みを進めていくことが重要です。

最後までお読みいただきましてありがとうございました。

補足

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