注目される「人工肉」の現在と将来性

新規事業

現在、食品業界で植物性代替肉などの
「人工肉」が注目を集めていいます。

人工肉は、以前から存在していましたが、
「実際の肉とは、味や食感が大きく異る」ことから、
これまであまり一般的ではありませんでした。

しかし、環境への関心の高まり、健康意識といった背景と、
新しい技術により、実際の肉にかなり近い味や食感の人工肉が
作れるようになったことから、
今後、一般的な食材となり、普及していくことが考えられます。

今回は、人工肉の現在と今後について
考えていきます。

人工肉を使った商品が相次いで市場に出されている

人工肉のブームは、肉の消費の多い欧米諸国でまず起こりました。

欧米などでは、外食店でも人工肉を使った料理が食べられるほか、
スーパーやコンビニなどでもさまざまな代替肉製品が並んでおり、
製品として一般的となっています。

この状況を踏まえて日本の消費者にも
受け入れられるのではないかということで、
食品企業各社は、2018年前後から、
代替肉の製品を本格的に市場に投入しています。

たとえば、ハンバーグなどで知られる
丸大食品では、2017年から「大豆ライフシリーズ」を販売。
ハンバーグやキーマカレー、麻婆豆腐などの
「惣菜のもと」として展開しています。

味噌で知られるマルコメ株式会社では、
2018年に「ダイズラボ」を市場に展開。
「惣菜のもと」のほか、ブロックタイプの製品も
販売しており、簡単に肉に代わりとして料理に使えます。

ボンカレーで有名な大塚食品では、
2018年に「ゼロミート」ブランドを立ち上げました。
「ゼロミート・ハンバーグタイプ」「ゼロミート・ソーセージタイプ」などを販売しています。

伊藤ハムでは、2020年に「まるでお肉!」シリーズとして、
からあげや、カツ、ナゲットといった製品を販売しており、
加工品を得意とするメーカーならではのラインナップを行っています。

こうした食品大手のほか、
食品チェーン店としても「モスバーガー」では、2020年3月に
原材料に野菜と穀物を使った
ハンバーガー「グリーンバーガー」を
店舗限定ではあるものの販売をしています。

また、「フレッシュネスバーガー」でも2020年10月に
大豆のパティとテリヤキソースのハンバーガー
「THE GOOD BURGER」を全店販売しています。

ハンバーガーチェーン店が、
人工肉の製品を扱ったこともあり、
日本でも急速に注目が集まっているのです。

背景にある4つの要素

欧米で人工肉に注目が集まった背景には、次の4つが挙げられます。

1)健康志向

近年の研究で、ハムやソーセージといった
肉の加工品を食べることが、大腸がんのリスクが高まることが
報告されています。

この報告は、2015年に発表され、
WHOのなかの国際がん研究機関によるものですが、
この後にも、同様の研究報告がなされていることから、
2019年頃には一般的な認識となったようです。

牛肉や豚肉の赤身肉については、
脂身がないので健康的なイメージがありましたが、
同じ研究報告でも、大腸がんのリスクが高まるということでした。

こうしたことから代替肉への切り替えを
行う人が増えてきたということです。

2)環境負荷への関心

食肉を得るために行われている工業的な畜産業は、
土地の利用や水資源、飼料穀物の生産など、
大量の資源を必要としています。

また、家畜のふん尿などは、水質汚染につながることや
げっぷが温室効果ガスとなることなどの問題も抱えており、
持続的な生産形態ではないことが明らかになってきました。

この問題は以前から指摘されていましたが、
既存のメディアが報道に積極的ではなかったため
一部の関心がある人々だけが、問題と捉えていました。

しかし、ネット社会の拡大により、
ユーチューブやNetflixなどでも、工業的畜産の問題が
ドキュメンタリーとして流されるようになり、
広く大勢の人々が大きな問題と捉えるようになりました。

こうしたことから、食肉を環境的観点から
減らす、あるいはストップするといった動きがあり、
代替肉への関心につながっています。

3)ビーガンの方の増加

宗教的な背景に加えて、
1)と2)ということから、肉食を止める
ビーガンの方が増えています。

アメリカでは
2009年では、ビーガンを実践している人は、1%程度でした。

それが、
2013年では2.5%、2017年には6%まで増加ししており、
この傾向には拍車がかかっています。

アメリカえは現在2000万人以上の方がビーガンを実践している
ということで、大きな市場を形成しています。

こうした方々に向けて、
ベジタリアンメニューを提供するレストランが増え、
同時に、代替肉をつかったメニュー提供や
代替肉製品もスーパーやコンビニに並ぶようになっています。

4)技術的に進歩して代替肉がおいしくなった

健康面で理由から、赤身肉や肉の加工品を
食べることをやめようと考えた際に、
以前の代替肉というのは、通常の肉と比べると
味や香り、食感の面で、全く別物というイメージがあり、
「食を楽しむことにつながらない代替肉は食べたくない」と
いう方が多かったのも事実です。

しかし、近年では、技術的に大きく進歩しており、
味や香り、食感はもちろん、
見た目も通常の肉にかなり近いものが登場しています。

そのため、3)のビーガンの方だけではなく、
通常は肉を食べている一般消費者にも
代替肉が浸透してきています。

このような4つの背景から欧米での人工肉のブームが起こりました。
日本でも、この代替肉への興味関心、需要が
高まるのではないかという期待があり、
大きな注目を集めています。

市場動向

代替肉の市場が、どの程度の大きさになると
考えられているかについて解説していきます。

矢野経済研究所の調査によれば、
2020年段階での人工肉(植物性代替肉と培養肉の合計)
の世界市場規模は、約2572億円とされており、
これが、2025年には6732億円、2030年には1兆8723億円となる
と予測されています。

イギリスのバークレイズの予測では
2029年には、代替肉の市場が
食肉市場の10%を占めると予測されており、
これは、約15兆円ということでした。

予測数字にかなりのひらきがあるものの、
いずれにしても出荷・使用量ともに増加傾向が
顕著であることが見えてきます。

代替肉を開発製造するベンチャー企業としては
アメリカのBeyondMeet社や、ImpossibleFoods社、
オランダのThe Vefetarian Butcher社などがあり、
IPOを実現していることからも、
今後のますます発展する業界であると感じられます。

最新の人工肉の作られ方

ところで、こうした人工肉の作られ方については、
各社各様の工夫があるのですが、
近年の傾向としては、
ナノ・メゾスケールで肉の分子構造を分析して、
植物由来の成分で、再構築をすることが行われています。

再構築することで
味や食感、油感、香りといったものを
限りなく本物の肉に近いものにするという考え方です。

こうした再構築を行う場合、
現段階では、本物の肉よりもコストがかかり、
販売価格も割高となっています。

ただ、今後は生産効率が上がっていくと考えられるため、
販売価格も暫時安くなっていくでしょう。

ある段階で本物の肉よりも安く、
また、味や香り、食感も変わらないということとなると、
もしかしますと、代替肉のほうが
主流となっていく可能性も高いと感じています。

まとめ

グローバルで人工肉への関心が高まり、
今後の市場も大きくなることが予測されています。

開発競争も進んでおり、
今後さらに、本物の肉に近い代替肉が
登場することになりそうです。

日本においても、代替肉が
少しずつ注目を集めはじめています。

ただ、日本は、欧米ほど肉類を大量消費しないこともあり、
肉食による健康面の課題はそれほど大きくないことから、
その広がりのスピードは欧米ほどではないとも考えています。

しかし、日経トレンディ2020年のヒット予測では
「植物肉バーガー」がランクインしており、
食品業界の方にとっては、
情報を集めることが必要となる分野であることは間違いありません。

今後も、代替肉の状況については、
本ブログでも定期的に考えていきたいと思っています。

本日も最後までお読みいただきましてありがとうございました。

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