新型コロナウイルスの問題で、新入社員の方の集団研修の開催が難しく、
人事担当の方は苦慮されているようです。
昨年からオンラインでの研修で対応するという企業も増えてきましたが、
研修を企画する人事部側も、オンライン研修が主体となることは、これまで想定しておらず、
運用や効果の面で悩みながら、進めているというのが実情です。
こうした状況下において、
今後の教育研修を考える際に2つのポイントが見えてきます。
1つ目は、
「集団研修ができない状況が常態化する場合を考えて、研修体制を組みなおす」ことです。
毎年、研修の組み換えは検討されていることと思いますが、
今期からは毎年社会状況に応じて、ゼロベースで考えていく意識が必要となります。
2つ目は、
「2021年のケースを研修効果測定における重要ポイントとして認識し、
今後の経過を長期的に調査、観察する」ことを、業務に組み入れていくということです。
特に2021年の新入社員と他の年度の社員との、スキル習得の進捗、企業ビジョンの理解、
社員同士のネットワーク形成の違いを見ていくことが必要となります。
次の章から詳しく見ていきましょう。
集団研修の意味合い
新入社員研修は、社会人としての考え方やマナー
その企業の理念の理解や、社内でのネットワークの構築といった
ことに重点が置かれています。
企業によっては、「働く意識」を持ってもらうことを
第一の目的としているところもあります。
こうした研修については、「自社で行うもの」と「外部に委託している」
ものがあります。
この2種類について、オンラインでの研修を行う際に、
その使い分けをもう一度、意識して制度設計を見直す必要があります。
自社で行うものについて
自社で行うもので、特にその企業の理念を伝えるという趣旨のものについては、
必ず行うべきだと考えています。
理念を伝える研修については、できれば
少人数や屋外といったことでリアルでの開催の方向で検討します。
オンラインの場合であれば、立場の違う方に登壇(同じ内容で良い)してもらい、
昨年までよりも回数を増やす方向で調整を行います。
オンラインでの研修は、どうしても研修効果が、リアルよりも劣ります。
それを補うために回数を増やしていく必要があります。
経営理念の理解は、たとえば新規事業やイノベーションといった
新しい事業を行う際においても、根底となる部分です。
ここがぐらついてしまうと、顧客にどのような価値を届けるのかがぶれてしまい、
競争優位性のある事業から遠くなってしまう危険があります。
理念を伝える研修は、新入社員研修の柱となるもので、
まず、ここに注力していくことが重要となります。
外部委託の研修について
一方で、昨年まで外部に委託していた新入社員研修については、
これをきっかけに、ゼロベースで考えてみることをお勧めします。
社外の研修会社に任せるようなもののなかには
オリエンテーション的な意味合いとなっているものも少なくなく、
本当に必要なのかを見極める必要があります。
後で詳しく述べますが、本年度は
これまで行ってきた新入社員研修を全く行わないで、
その結果、どのような問題が起きたか、しっかりと見ていくというのも
一つの考え方だと思います。
集団研修ができない状況が常態化する場合を考えて、研修体制を組みなおす
今後、企業研修を考えるにあたり、冒頭で述べたように
2つのポイントが見えてきました。
1つ目は
「集団研修ができない状況が常態化する場合を考えて、研修体制を組みなおす」
という点です。
研修全般に言えることですが、2021年度は
「昨年まで行ってきたことを踏襲して行う」という意識を変え、
今後の社会状況に応じて、毎年、組み直していくことが必要となります。
集合研修が行えない状態が長期的に続く可能性がある
という意識で、全く新しい体制や仕組みを構築する必要があると考えます。
繰り返しとなりますが、現在行っている研修内容について、
「本当に必要なもの」と「そうでないもの」を改めて取捨選択していく必要があります。
そのうえで、「本当に必要なもの」については、
「集団でなくてはできないか」「オンラインや個別ではできないか」
「別の方法があるか」の3パターンで考える必要があります。
特に「別の方法があるか」については、
VR、ARなどの新しい形の研修が、日々開発されています。
そうした情報を積極的に収集し、自社に合うかの判断を冷静に行ったうえで、
取り入れていく必要があります。
VR、ARを活用した研修は、危険が伴う作業、
失敗をした際に大きな危険が伴うが失敗してみないと分からないもの、
技術伝承の観点で、非常に有効なプログラムが開発されています。
それらの活用を検討していくことが重要です。
今年を研修効果測定の重要ポイントとする
2つ目の
「2021年のケースを研修効果測定における重要ポイントとして認識し、
今後の経過を長期的に調査、観察する」について説明します。
2021年、新入社員研修については、昨年とは異なる体制、仕組みで行われました。
研修のご担当の方は、研修体制や仕組みを変えたことにより
どのような影響が出てくるのかを調査、観察を行う必要があります。
新入社員の方には、アンケートなどでの効果実感の測定をされているかと思います。
通常のアンケート項目に加えて、
教育研修が以前と変わったことによって、
新入社員の方が、研修期間に疎外感が生まれていないかを軸に、質問項目を
増やしていく必要があります。
状況が許せば、そのアンケート結果をもとに、新入社員の方に、傾聴を意識して、
個別のヒアリングを行うことも有効です。
また併せて、既存の社員の方からも
今年の新入社員の能力、スキル、態度などについて、
研修の仕組みが変わったことを念頭にヒアリングを行うと、
研修を変更したことの課題や改善すべき点が見えてきます。
今後、数年間気の抜けず、きめ細かな対応が必要となりますが、
時代の変化への対応として必要なものとなると考えています。
まとめ
新入社員の集合社員研修が、リアル開催することが難しいことから、
研修の在り方そのものを、ゼロベースで考えることについて述べました。
研修のオンライン化は、今回の新型コロナウイルスに対する対応だけではなく、
今後、企業に置いてBCPの観点から何らかの問題が起きた際の備えにもなります。
今期から、研修については社内外問わず、ゼロベースで考えてみるのが
良いのではないでしょうか。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
追記
新入社員の方は、現在会社に通うこともなく、
周囲から見守られていないという状況が続いています。
今後、出社のタイミングやオンラインでも構いませんので、
迎える側の意識として、コミュニケーションの時間をとにかく作ることが
必要になると考えます。
オンライン雑談会、オンライン飲み会といった工夫をされている企業の方も
多いと思いますが、リアルでの接触と比べて、コミュニケーション効率は50%
程度になると捉えています。
これをカバーするためには、
とにかく接触の機会と時間を増やすしかないと考えています。
オンラインでの接触の機会は、意図的に行うしかないため、
企業側としても意識的に積極的に行う必要があると考えています。
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オンラインで会議や研修を行う際の注意点について、下記の記事で考察していますのでご参考いただければ幸いです。
企業研修やセミナーについて、基本的におさえておきたい活用法をまとめています。
コロナウイルスの問題で浮かび上がった全社的な課題について
下記の記事がご参考いただけると思いますので、是非ご一読ください。
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