企業が取り組むべき3つの課題と戦略:書籍「ビッグ・ピボット」より

本棚と扉 情報収集

今回は書籍「ビッグ・ピボット」から
地球規模での「変化」について、
企業が取り組むべき3つの課題を考えていきます。

企業は今後具体的にどのような領域で
事業展開を行うと、大きな影響力が発揮できるかが見えてくるかと思います。

グローバルでの大きな流れを理解する

多くのビジネスパーソンの方にとって、
グローバルでの将来的な大きな方向性については、
ある種の共通認識があると思います。

たとえば、日本においては
少子高齢化が今後も進むことは明らかであり、
そうした方向のなかでビジネスを検討している
企業も多いと思います。

グローバルでいえば、
環境、資源(エネルギー)、不正(政治)における課題について、
将来的な一定の共通認識があるようです。

このようなグローバルでの共通認識ついて、
本書では「世界の本質的な潮流(脅威)」として、
3つのキーワードを提示しています。

本書の「ビッグ・ピボット」という言葉は、
「大転換」の意味で使われています。

これからのグローバルでの大きな変化に対応するために、
企業として大きな変化が必要になるということです。

そして、その際の軸足となるのは、「自社の志」と説いています。

3つのキーワード「暑い」「足りない」「隠せない」

本書では今後の大きな潮流として
3つのキーワードを提示しています。

キーワードの1つ目は「暑い」。
これは環境問題のさらなる深刻化について指摘しています。

2つ目のキーワードは「足りない」。
これは、さまざまな資源が枯渇していくという問題への指摘です。

3つ目は「隠せない」。
ビックデータやSNSの発達による情報の公開がなされていくことの指摘です。

こうした課題は、裏を返せば、
「解決できれば大きなビジネスチャンス」であるということです。

各課題に対するビジネスチャンスと企業の対応事例

1つ目の「暑い」に対しては、
現在、クリーン経済が年間2500億ドルに以上と計上されており、
そうした市場を取り込むことができます。

企業事例としは、
マイクロソフトでは世界中の自社事業所とデータセンターにおいて、
炭素排出1トンごとに課金を行っています。
課金に計上された年間1000万ドルは、
カーボン・オフセットや社内の省エネプロジェクトなどに充てられています。

2つ目の「足りない」については、
今後、資源が必要となるのは中間層で、
ここを取り込むことは、次の世代のビジネスの屋台骨となります。

アディダスでは、染色のために、
1年間で「地中海の水の量の半分」という膨大な水が使われています。
これをどうにかすることを経営課題として掲げ、
苦心の末に、大量の水を消費しない染色を実現しました。

3つ目の「隠せない」については、
オープンイノベーションの推進や、経営の透明性確保により、
新たなアイデアの創出を喚起することの重要性が指摘されています。

ユニリーバでは、アナリスト向けの四半期ごとの説明会を中止しています。
一見すると情報公開の流れに逆らうように感じられます。

しかし、多くのアナリストは短期的な収益性を求めてしまいがちです。
サステナブルモデルを実現するためには
長期的な価値創造に共感してくれる投資家に共感してもらう必要があり、
大胆な改革の一貫として、四半期説明会を中止したということです。

変化に対応していける企業が生き残る

変化の潮流は、企業も人々も飲み込んでいきます。
なんとかその激流を泳いでいかなければなりません。

ダーウィンは「強い者、頭の良い者が生き残るのではない。
変化するものが生き残るのだ」と述べました。

企業経営においても「変化」について注目されていますが、
本書を読むと、その根底には先程の3つのキーワードがあることが分かります。

どの企業も変化に対応できるかというと……。
もちろん難しいわけです。

しかし、本書では変化を妨げる壁についても言及しており、
この壁をクリアすることで変化を起こすことができると説いています。

「壁」の存在で、最も大きなものは
「大変革を成し遂げることができるという信念の不足」だと指摘しています。

これは裏返せば、
「いかなる地球規模の危機も、技術的には必ず解決することができる」
ということとなります。

この指摘には希望があり、また技術的な解決を阻むものとして、
我々一人ひとりの「心」としている点は面白いところです。

このほか、企業が今後対処すべきか10の具体的な戦略も示しているので、
是非一度お読みになってご参考にされてみてはいかがでしょうか。


「ビッグ・ピボット―なぜ巨大グローバル企業が〈大転換〉するのか」
アンドリュー・S・ウィンストン (著)、名和高司(日本語版序文) (著)、藤美保代 (翻訳)
2016/7/20
英治出版

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