「限界費用ゼロ」というキーワードでイノベーションを考える

本棚と扉 アイデア・発想

近年、「限界費用ゼロ」というキーワードが着目されるようになりました。

この言葉は、2015年に刊行された
書籍「限界費用ゼロ社会」
によって解説されたものです。

本書の中では、太陽光パネルの社会的な広がりや、IoTの広がりなどに伴い、
限界費用ゼロ社会の到来が解説されていますが、
コロナウイルスの影響もあり、デジタル化が加速するなかで、
まさにそうした状況が実現されるようになってきています。

「IoT」は、人や機械はもちろんのこと、
資源、生産ライン、流通ネットワークなど
「あらゆるモノ」を「あらゆる人」に結びつける仕組みです。

現在、「IoT」が、社会のいたるところで実装されて、
企業にもビックデータが集まり、
解析処理や活用されている事例が、日々メディアをにぎわしています。

コロナウイルスの感染についての情報についても
「IoT」を活用した対策が行われています。

書籍のなかでは、「IoT」が与える影響について、
「テクノロジーの進化が経済と社会を根底から変える」と
していますが、今まさにそうした時代が到来していると感じられます。

「限界費用」とはなにか

「限界費用」とは
「モノやサービスを1ユニット追加して増やした際にかかる費用」のことを示します。

書籍『限界費用ゼロ社会』のなかでは
わかりやすい例として「電子書籍」が挙げられています。

電子書籍では、作品を生み出す労力とネット接続費だけが必要で、
1冊1冊の販売と流通のコストは「ゼロ」に近いことがイメージできます。

こうした状況が他のモノやサービスでも将来、実現すると本書では解説されています。

「限界費用がゼロになる」ということは、
「製品やサービスがほとんど無料となる」と言い換えられます。

電力などのエネルギーの費用については、
将来的に分散型の自然エネルギーを活用することにより無料に近くなる
と指摘されています。

具体的な根拠としては、書籍のなかでは
・太陽光発電装置のエネルギー採取効率が指数関数的に増えていること。
・太陽電池の価格も業界の生産能力が倍増するごとに2割下がり続けていること。

が挙げられています。

そして、現在のペースで採取効率の向上と価格減が続けば、
2020年までには現在の電気の平均小売価格と同程度まで値下がりし、
2030年までには半額になるという試算がなされています。

現在2021年ですが、電気の平均小売価格には大きな変化はありません。
一方で、CO2の排出削減を目的としたグローンエネルギーの普及は
SEGs対応への必要性もあり急速に広まっています。

Co2の問題などから、脱化石燃料の動きは強まっており、
いずれ日本もグリーンエネルギーに舵を切る形になる可能性が高い状況です。

また、エネルギーの分野以外で見られる「限界費用ゼロ社会」到来の兆候としては
3Dプリンタが挙げられています。

高性能の3Dプリンタが普及すると、
誰もが生産手段を持つことにつながります。

製造のためのソフトウェアは無料で共有され、
材料費だけで車や家を作ることができるというわけです。

今後、3Dプリンタの技術が普及することを念頭に、
自社の事業展開を考える必要があると感じられます。

3Dプリンタの活用について、下記の記事をご参考ください。

3Dプリンターによるアディプディブ・マニファクチャリング
3Dプリンターが大きな注目を集めています。 注目のきっかけとなったのは、 新型コロナウイルスの影響により、 サプライチェーンがストップする事態からとなります。 この事態に際して、製品が不足している現場で、 3Dプリンターにより不足分を生産す...

「限界費用ゼロ社会」が実現化すると共有型経済が登場する?

書籍のなかでは、こうしたテクノロジーの進化が進むにつれて、
資本主義は衰退し「協働型コモンズで展開される共有型経済」が登場する、
と著者は予想しています。

著者の予想に反して、
「限界費用ゼロ社会」が到来したとしても、貧富の格差は拡大するものの、
一般的な平均所得は保証されるような社会となるかもしれません。

しかし、本書で指摘されているように
持続可能な社会のあり方が、実現すれば社会構造そのものが大きく変化することは
間違いないでしょう。

「限界費用ゼロ社会」が到来した場合の企業のあり方

さて、限界費用がゼロとなり、製品やサービスがほとんど無料となる社会が実現した場合、
企業はどうなるでしょうか。

希望的な観測としては、
新たな機会が生まれるので、その波に乗れば良いというものがあります。

一方、別の見方をすれば、企業は非常に特化したモノやサービスを購入する消費者層を頼りに、
経済の辺縁で生き残ることを強いられる可能性があるのです。

今後の社会変化を洞察するうえでも、企業の進むべき道を模索するために
参考になる一冊ですのでご感心があれば是非お読みください。

ー今回参考にした書籍ー


限界費用ゼロ社会
<モノのインターネット>と共有型経済の台頭
ジェレミー・リフキン (著)、柴田 裕之 (翻訳)
NHK出版 2400円+税
2015/10/27
単行本: 536ページ

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