「社内公募制度」の基本と社内のイノベーション人材の発掘

子どもたちが手を重ねる、協力 人材育成

新規事業ご担当のリーダーの方のお悩みとして、
「各部署横断で人材を集めたいが、
 各部署の責任者が、人材の出し惜しみをして困る」
というのがあります。

既存事業の責任者の方の立場としては、
エース級の人材を取られてしまうと、
業務に影響が出てしまうため、
なるべくならば回避したいというのが本音です。

こうした場合に企業施策として「社内公募制度」が有効です。

新規事業メンバーを「挙手制」として、
本人が希望する限りにおいては、異動について基本的に上司の拒否権はないという施策です。

新しいプロジェクト(新規事業)に対して情熱を持ったメンバーが集まり、
プロジェクトとしての進み方は上々となることが多くなります。

次の章から詳しく見ていきたいと思います。

「社内公募制度」とは

「社内公募制度」は、
新しいプロジェクトのメンバーを募る際に、
社内に広く公募を行う仕組みです。

プロジェクトリーダーは公募に名乗りを上げた社員から、
採用するか否かの判断を行います。

公募への応募は、上司の許可は不要として、
採用となった場合は、異動前の部署の上司は拒否権はないというものです。

(異動前の部署の上司の拒否権については、ある程度認める運用をしている会社もあります)

「社内公募制度」は、新規事業だけではなく、キャリアアップを目的とした人事制度として
ソニーやP&Gなどでも活用されています。

「社内公募制度」のメリット

社内公募制のメリットは、
「その部署(新規事業のプロジェクト)で働きたい」という熱意のある即戦力の人材を
異動先が確保できることです。

自分から手を挙げた人材には、高いモチベーションが期待できます。

新規事業はその性質上、失敗の要素を多分に含んでいます。
失敗したその先に、新規事業の成功があるといっても過言ではありません。

社内公募制度を活用して新規事業への参画を希望する社員の方の場合、
失敗をしても、そこで諦めない可能性が高いため、
結果的に新規事業の成功確率も大きく上昇につながります。

社内公募制度のデメリット

デメリットとしては、
異動前の部署の上司との人間関係にあつれきが生じる場合があることです。

(優秀と評価されている社員の方の場合は、ほとんどあつれきが生じます)

注意点としては「応募の理由」について、
面接や人事からの情報をもとに冷静に見極める必要があります。

「新規事業を行いたいから社内公募に応募した」のではなく、
「現在の仕事に不満がある」「現在の部署の上司との関係がよくない」という場合があるからです。

こうした「逃げ」の選択肢をした人材は、
新規事業の場面では、残念ながら活躍する可能性は低いといえます。

もうひとつ注意点があります。
誰が応募したのかについては、採用不採用のいずれとなっても、
関係者以外に情報を漏らしてはいけません。

最悪の場合、情報漏洩によって、本人の退社につながってしまう場合もあるからです。

重要:イノベーション人材は自社内に必ずいる

今回もうひとつお伝えしたいことは、
社内には「一定数、新規事業を行いたいという人が存在する」ということです。

ところが存在はするものの、
こうしたイノベーター志向の人材は、隠れている場合が多いのです。

規模が一定以上の会社の場合、出る杭は打たれる宿命にあります。
イノベーター志向の人材は、これまで社内で、出る杭が打たれることを見てきたか、
あるいは、ご本人自身が叩かれた経験があります。

その場合、社内で息をひそめるようにして
日々の業務をこなしている場合があります。
こうした人材を活用することができれば、新規事業やイノベーションに
大きな弾みがつくことは間違いありません。

どの会社であっても、
社内には10パーセント程度がイノベーター志向の人材が存在と言われています。

そうした人材を掘り起こす施策としても、社内公募制度は活用できます。

この人が欲しいという「指名制度」の場合

ちなみに、新規事業プロジェクトが、社長直轄などの場合において、
各部署から好きな人材を指名する「指名制度」が行われることがあります。

「指名制度」について、プロジェクトリーダーが
額面通りに受け取って、各部署からエース級の人材を集めることを行ったとしても、
新規事業のプロジェクトとしてはあまりうまくいかないケースが多いようです。

「社内公募制度」の説明の際にも述べたように、
参画者のモチベーションや情熱が、重要なポイントとなります。

既存事業で優秀と評価されている社員の方の多くは、
その部署で活躍したいと思っています。

それを無理に引き抜いて……。というのは
引き抜かれたご本人にとっても不幸ですし、
新規事業のプロジェクトにとっても、お荷物となる可能性があり、
双方ともに不幸なことにつながるからです。

そのため、指名したいと考えている人材が、
新規事業やイノベーションに関する業務に、関わりたいという気持ちがあるかを、
周囲や人事から情報を集めるなどして意識を探ることが重要です。

また、新規事業のプロジェクトを進めるためには、
プロセスの後半となってから、既存事業の協力を得る必要が出てきます。
その際に、既存事業のメンバーから、協力的な対応が得られるようにしておかなくてはいけません。

こうしたこともあるため、指名制で引き抜きを行う場合は、
事前の対象者の上司にも、根回しをしておくことが大切となります。

まとめ

社内には10パーセント程度がイノベーター志向の人材です。

そうした人材を発掘し、力を発揮させる制度として、
社内公募制は活用できます。

業務は、「情熱」×「能力」の掛け算の結果です。
「能力」というのは、後からの経験でも育っていきます。

一方、「情熱」は、後から育てるのは難しいものです。
新規事業においては、モチベーションや情熱を持つ人材を
いかに見つけるかが大きなポイントとなります。

本日も最後までお読みいただきましてありがとうございました。

補足

近い内容ですが、企業コンテストでの人材発掘方法について、
下記の記事をご参考いただければ幸いです。

「企業コンテスト」はイノベーション人材の発掘に使う
新規事業やイノベーション創出のため、 多くの企業で「社内のアイデアコンテスト」が行われています。 しかし、社内のアイデアコンテストを、 新規事業創出目的のために行った場合、 次の章でご紹介する事例のケースをたどることが多く、 成功の確率は低...

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