大企業で新規事業、イノベーションを起こす:大企業ならではの強みを活かす

高層ビル群 新規事業

一定以上の規模の企業において、新規事業を展開する際に、
既存事業の制度、評価、マネジメント、マインドといった面から、
取り組みが難しいというケースがあります。

一定以上の規模の企業では、
「既存事業をいかに効率的に動かしていくか」が、中心になって動いており、
制度や評価の基軸ともなっているからです。

また、一定以上の規模の会社においては、
ベンチャー企業が強みとする「ハングリー精神」を持つことは難しいものです。

たとえば、同じ製品を市場に出すとして、
ベンチャー企業の方は「この商品が売れなければ会社はなくなる」という強い危機意識があります。
こうした危機意識は、あと一歩の行動につながるため、
成功確率を高めることにつながり、ベンチャーの強みとなっています。

しかし、それでも大企業には、ベンチャー企業にはない強みがあり、
その強みを意識して、新規事業やイノベーションを進めることが重要となります。
ベンチャー企業的な意識を持つために、
別の小さな組織で動くという施策があり、この場合、
大企業とベンチャーの双方の強みを発揮することもできます。

大企業においては、施策がはまると、
ベンチャー企業では到底行えない規模とスピード感で、市場を圧倒することができます。

大企業で新規事業やイノベーションに取り組む際にポイントとなる考え方について
解説をしていきます。

対外面での優位性

大企業がベンチャー企業と比べて
新規事業創出やイノベーションを志向する際の大きな強みとして、
「対外的な動きやすさ」があります。

たとえば、新製品や新サービスが開発できたとして、
顧客のイメージも固まっている場合、顧客に近い企業を訪ねるケースがあります。

大手企業の場合は、そこで門前払いを食らうということはまずありません。
話を聞いてくれるところまではスムーズに進みます。

ところが、ベンチャー企業では話を聞いてもらうまでが大変です。
大手企業は、「話を聞いてもらうまで」という大きな壁を回避できます。

大手企業の内部にいると、そうしたことは当たり前だと思ってしまいがちですが、
実は大きな競争優位性なのです。

また、新規事業を展開するにあたり
別の企業との協業が必要となった場合も同様です。

外部と上手に協力関係が構築できれば、
当初の想定よりも早いスピードで対応できる可能性があります。

目的がしっかりと定まっていれば、
目標に到達するまでに、大企業のほうが短時間で達成できる可能性があるということです。

資金面での優位性

目標が見え、資金さえ確保できれば、新規の取り組み、イノベーションの
成功の可能性が高い場合があります。
ベンチャー企業の場合は、資金の壁(死の谷)
が大きく、製品やサービスの市場展開に成功しても、収益を得るまでの
タイムラグによって企業そのものが潰れてしまうことも少なくありません。

新しい製品や新サービスを皮切りに、市場をおさえていく場合でも、
大手企業であれば、資本力を背景に、初期段階で大きな投資を行うことで
市場を一気におさえられる可能性も高くなります。

特にイノベーティブな製品の場合、顧客のセグメントとして、
「イノベーター」→「アーリーアダプター」と購入していきますが、
次の人数の多い層である「アーリーマジョリティ」が購入するまでには
「キャズム(溝)」があり、製品の微調整も必要であるため、
売上が発生するまでにタイムラグが生じます。

大企業では、この「キャズム」も含めて、資金の余裕がるため
対応することができますが、
ベンチャーでは、力尽きてしまう場合も多いのです。

ベンチャー的な別組織の設定という方法

大手企業で新規事業やイノベーション創出を考えた場合、
先ほどの2つの優位性を生かしながらも、
ベンチャースピリットを持って行動することができれば、
成功に一歩近づくことができます。

たとえば、別組織(5~20名程度の小さな会社)を作り、
対外面と資金面のメリットを享受しながら、
事業展開を行うという施策は、大きな威力を発揮する場合があります。

別組織で業務を担当する社員の方には、「片道切符」だということを伝えます。
「片道切符」というのは残酷なようにも見えますが、
ハングリー精神を発揮するという点で、大きくプラスに働きます。
(本社側としては結果的には、本社に戻ってもらうオプションも持っておきます)

本社側の管理者として、CTOクラスの人材でマネジメントの長けた方を配置します。
対外面と資金面については、この本社側の管理者の方が責任者となり、
別途窓口を設けて対応を行うとスムーズです。

どの方に行っていただくかについては、
新規事業を行いたいという希望者が基本となります。

どの会社でもイノベーティブな人材は10パーセント程度の確率で存在していますので、
ビジネスコンテストや、社内での動きを広くみながら、
そうした人材を探していくことも必要です。

ここで注意したいのが、
企業内ベンチャー企業との位置づけの違いです。

企業内ベンチャーは1990~2000年代によく行われた施策ですが、
ほとんどが失敗しています。

「企業内」ということで、ハングリー精神が涵養できず、
ビジネスの内容としても、社内の技術シーズをベースに展開するというパターンとなり、
既存の枠組みとは異なる価値を生み出すことができなかったためです。

別組織では、新しい製品やサービスを創造し、
市場への初期段階の展開を行うところまでを行います。
市場への本格的な展開については、本社で引き取るという仕組みがスムーズです。

これは、開発連携型のベンチャー企業で行われているパターンですが、
開発連携型ベンチャーに近い別組織を、自社で社外に作るというイメージです。

また、制度や評価の仕組みについては、
別組織となりますので、本社のものとは異なる
新規事業に適したものとすることとがポイントとなります。

まとめ

大企業が別組織を作り、ベンチャーの良さをうまく取り込みながら、
大企業の強みを発揮する方法について述べました。

大企業が別企業を持つことは、
「別の価値観の軸を持つこと」と言い換えても良いと思います。

新規事業やイノベーションを生み出すためには、
既存事業とは異なる組み合わせを試していく必要があります。

既存事業の価値観に囚われないことが大切ですが、
既存事業に浸かっていると、なかなか発想や行動の切り替えは難しいものです。

別組織であれば、そうしたことが可能となります。

本日も最後までお読みいただきましてありがとうございました。

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