「市場の未決の課題」を見つける:文房具業界の事例

鉛筆を削る イノベーション

B2Cの業界では、新製品として、
新しいものを開発し市場に出すことが命題となっています。

今回、文房具の業界の新製品の取り組みについてご紹介いたします。
文房具業界というと、かつてはロングセラーの事務用品を中心に、
安定した製品供給を行うというイメージがありました。

しかし、近年の文房具業界では
これまでとは異なる新しい製品を次々と市場に送り出しています。

文房具という、実用のなかで鍛えられたロングセラーが大きな存在感を見せるなかで、
新しい価値の製品を出しているという事実は、
新規事業やイノベーション創出においても参考になる部分があります。

今回は、こうした文房具の新製品開発から、
他の業界でも学べる気づきを考えてみました。

まず、新しい価値を付加した文房具について、
特徴と、開発されるきっかけとなったであろう「未決の課題」
について考えていきます。

折りたため式はさみ:コクヨ「サクサポシェ」

ペンケースにも入るペンサイズのハサミです。
ちょっとしたものを切るのに、非常に便利です。

ハサミは小型でも、
なかなかペンケースに入れることができませんでしたが、
これは安全に収納できて、スタイリッシュでもあります。

背景にあると推測される未決の課題:

外出先などで、ハサミが少しだけ使いたいというニーズが根底にあったようです。
私自身も、硬い袋が手で切れなくてハサミが欲しいということがありましたが、
カッターなどで代用していました。

でも、カッターはなんとなく危ない感じがして、
ハサミがあると良いなと思っていたのですが、具体的にこんなものが欲しいというのは
なかなか思い浮かびませんでした。

この「サクサポシェ」は、「まさにこれだ!」と思わせる大きさと形状です。
顧客に聞いても答えが出てこなかったであろう形状を、絶妙に具現化しています。

新しいページがすぐに見つかるメモ帳:ミドリ「パッとメモ」

手のひらサイズのメモ帳ですが、左下が軽くノリで固定されています。
そのため、新しいページがすぐに開けるという機能を持っています。

背景にあると推測される未決の課題:

緊急の要件をメモする際に、メモ帳の新しいページがすぐに見つからず
困った経験があると思います。その課題を見事にクリアしています。

また、いつでも新しいページがすぐに開けるということで、
ほんの数秒のことですが、使用者が落ち着いて行動できるというのは
大きなことだと感じています。

 

四角型ののり:コクヨ「グルー スティックのり」

スティックのりはたいて丸形ですが、こちらは四角形になっています。

背景にあると推測される未決の課題:

のりをつけるものは、封筒のように角が四角いものが大半です。
丸形のノリを、四角のものにつけると、なかなか角まで
うまくつけることができないという課題がありました。

「グルー スティックのり」は四角にすることで、
角まできれいにノリをつけることが可能です。

一枚二枚では大したことがないかもしれませんが、
業務で、大量のノリ付け作業を行わないといけないという場面では
大きな効果を発揮します。

 

砂鉄が入って磁石でカスを集められる消しゴム:クツワ「ペン磁ケシ」

消しゴムを使った後に、消しカスが気になりますが、
そのために掃除をすることは大変です。

こちらの「ペン磁ケシ」は、消しゴムに
砂鉄を混ぜており、消しゴムの後ろに設置された磁石で
貼り付けて、まとめて捨てることができます。

背景にあると推測される未決の課題:

消しゴムカスをどうにかしたいという欲求が潜在的にあったと思います。
小型のほうきなどもありましたが、手軽に軽量に対応できないかということから、
こちらの製品が開発されたと考えられます。

 

市場の未決の課題からはじまった製品開発

ご紹介した文房具の開発に共通することは、
「少し不便だ」といった「未決の課題」を上手に解決していることです。

文房具における「未決の課題」は、
たとえば、数秒間不便だと思う程度のものです。

そこにいかに気づくことができるのかが、
新製品開発が成功するか否かの分かれ目となります。

ここから、新規事業、イノベーション創出のヒントとなるのは、
「市場の未決の課題」から開発がスタートしている点です。

文房具の業界は、技術に大きく頼る場面が少ないことから、
考え方の方向性として、
「課題」からスタートすることが行われており、
この考え方は、いずれの業界でも基本として考えるべきだと思います。

まとめ

市場の未決の課題からスタートすることで、
これまでにはない価値を生み出すことができます。

技術が大きな要素となる業界では、
どうしても、開発のスタートが技術からはじまり、
その次に売り先を探すということが起こります。

現在、開発をしてから売り先を探す方式では、
市場に受け入れられる可能性が低く、危険な対応となります。

市場の未決の課題は、文房具業界の開発状況で分かる通り、
無数にあるので、いかに日ごろから注意を払っていけるかが
ポイントとなります。

本日も最後までお読みいただきありがとうございました。

補足

市場の未決の課題については下記の記事もご参考いただけるかと思います。
是非ご一読いただけますと幸いです。

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