今回は、トレーニングをすることが
身体の健康、そして心の健康にも寄与することについて
語っています。
日本に根付いた健康産業
平成に入り健康産業は比較的落ち着いた時代に入りました。
都心部では健康クラブが普及し、
入会金もそれまでと比べてぐっと安くなり、
より気軽に運動ができるようになりました。
駅の近くには必ずスポーツクラブやジムが作られるようになり、
通勤帰りのサラリーマンの方が立ち寄ることも増えてきました。
週末にはジムで汗を流すことを習慣としている人も珍しくはなくなりました。
健康クラブやジム、スポーツクラブの文化が
日本にもようやく根付いたのでしょう。
運動による健康効果については、
多くの方が意識をしてくれるようになったのではないでしょうか。
医療の現場での要請
ここ10年ほどの傾向として、医療の現場で、
運動指導をして欲しいという要請を受けることが増えてきています。
メディカルフィットネスという視点です。
これまで運動は身体に良いと漠然と思われていましたが、
日本人の運動による健康への効果のデータがかなり集まり、
主に生活習慣病に対しての具体的な対策が見えてきたのです。
もちろん個人差はありますが、
たとえば、血圧を下げるのであれば、
どういった運動をどのくらいのペースで行えば
具体的な効果につながるかということが分かってきました。
医師のアドバイスと投薬、
食生活の改善と運動によって
目覚ましい効果をあげている病院もあるのです。
医師たちも大いに注目し、運動の効果には期待をしているようです。
私も専門の指導員を病院に派遣したり、
場合によっては病院と併設した健康クラブの設立の
お手伝いもするようになりました。
私が健康クラブ開業当初に目指していたことが、
ようやく世間に広まってきたように感じています。
精神面での健康
また、身体の健康だけではなく、
精神面での健康に対しても運動効果の期待が集まっています。
これまで、健康クラブに来られる方というのは、
自分自身の身体の健康維持を第一に運動をする方がほとんどでした。
しかし、このところ、年の頃、性別は様々ですが、
明らかに元気のない方が来られるのです。
ウオーキングマシーンのルイス・ウオーカーで少し歩くだけで
「ふーっ」と大きなため息をついたり、
ほかの方が運動している様子をぼーっと眺めているような方です。
これまでにはなかった出来事なので、
ひとりひとりに話を聞くことにしました。
すると、
「精神疲労と診断され、医者から
軽い運動をするようにと言われてこちらに来たのですが……」
とのお答えでした。
身体を動かすことが、
気分に良い影響を与えることについては
海外には大量の論文がありますので、なるほどと思ったものです。
身体を動かすことで気分が晴れるのは
どなたでも経験のあることだと思います。
「何かきっかけがあったのですか?」
と聞きますと、上司から怒られたとか、
仕事上でミスが重なったとか、
友人といざこざがあったとかきっかけは様々なようでした。
そうした方々にも運動を通じて、
以前の元気を取り戻してもらえるよう、様々工夫をしています。
この分野はまだまだ分かっていなことも多いのですが、
精神面での健康に寄与できる場づくりを目指しているところです。
身体を鍛えることの真の目的
ところで健康クラブで身体を鍛えることの最終的な目的は何でしょうか。
健康が目的でしょうか。健康は素晴らしいものですが、
私は健康だけでは足りないと思うのです。
私は、身体を鍛えることの最終的な目的は精神性を高め、
善く生きることだと思っています。
健康クラブを運営するなかで、
身体を鍛えることで、その人の人生が善い方向へ変わっていくのを
何度も目の当たりにしてきました。
善く生きることに気づくのはご本人ですが、
少しでもその手助けをしたいと思っています。
(次回・最終回へ続く)