(最終回)『日本の健康産業の第一人者』田中恒豊さんが語る 人生の成功法則:今生は来世へのウオーミングアップ

『日本の健康産業の第一人者』が語る 人生の成功法則

本記事は
日本の健康産業の第一人者である
田中恒豊(たなかつねとよ)さん(故人)への
2014年頃からの長期インタビュー(インタビュー当時80歳代)
を書き起こしたものです。

田中さんは、戦後の大きな時代変化のなかで、
日本で初めてのフィットネスクラブを設立された方で
「日本の健康産業の第一人者」として知られています。

今回は、最終回となり、田中さんの
これまでの思いが語られています。

現在、大きな変化の時代を迎えていますが、
時代が動くときに、どのような判断を行うべきかといった
考察の参考になると考え、
ご関係者の方のご了解を得まして、記事を掲載いたしております。

今生は来世へのウオーミングアップ


このところ、私の経験を話して欲しいと講演の依頼を受けます。

講演には、私以上に年輩の方がいらしたりしているのですが、
「この年になって今更運動なんて」という顔をして聞いています。

すかさず「ご年輩の皆さんは、今更運動なんてと思っているかもしれません。
そんなことはありません。こう考えてみてください。
今生は来世へのウオーミングアップだと。

皆さんの人生はそれぞれ素晴らしいものでったでしょう。
しかし、時間が戻るなら、
実はこんな職業に就きたかったとか、
こんなことがやりたかったということはありませんか?

それは来世でされれば良いのです。
そのための準備として、これから運動をするという考え方はどうですか?」

このように申し上げると、急に目の色が変わるのです。

先日、私の講演を聞いた92歳の女性が健康クラブに入会されました。

最高齢の入会者ですから、
ご自宅に表敬訪問にうかがい「ご入会の目的は?」
と聞きますと
「健康維持のためです。それから来世へのウオーミングアップね」
とおっしゃったのには驚きました。

人生100年時代における中心軸の大切さ

私は今年80歳になりましたが、
これから新しい仕事を手がけたいと思っています。

今計画しているのは、「日本健康推進協会」という団体の設立です。
運動によって、健康になり、善く生きる。

そして今生だけではなく来世へのウオーミングアップとなることを
多くの人に知ってもらうことが目的です。

神田の闇市で暴れ回り、世間に迷惑をかけていた私が、
いつの間にか人が善く生きる手助けをすることが
人生の中心となっているのですから、なんとも不思議です。

私がここまで来ることができたのは、
不思議な縁に導かれたことと、
自分の中心軸を大切にする生き方を心がけてきたからだと思っています。

これからの時代、今まで以上に不安定で不規則な状況が予想されます。

自分のなかにしっかりとした中心軸がなくては、
めまぐるしく変わる状況に流されてしまうかもしれません。

人生はこれまで80年と言われていましたが、
これからは100年の時代となるでしょう。

定年が65歳だとすると死ぬまでに35年もあるのです。

会社務めなども人生のごく一時期に過ぎない
と言われるようになるかもしれません。

自分がどう生きるか、中心軸を改めて考える必要がある時代となっているのです。
運動が中心軸を作るひとつの手助けになるかもしれません。

私の長いお話を聞いていただいてありがとうございました。

インタビュアーから

田中恒豊さんは、2017年にこの世を去られました。
晩年は、「日本健康推進協会」を設立し、
第一線からは退かれた後も、健康産業の普及に
力を注がれていました。

このインタビューは、上述の通り、
2014年頃から、月に一度、2年ほどをかけて
お話をお聞きしながら書き上げたものです。

飯田橋のホテルメトロポリタンエドモントの地下で
中華料理をいただきながらのインタビューは
私にとっても楽しく、また非常に刺激的でした。

はじめて田中さんとお会いしたのは、
2002年頃のことだったと記憶しています。
ある方の出版記念パーティーではじめてお会いしました。

その際に、今後のアメリカについての独自の洞察についてお話をされており、
アメリカの人口分布の考察から、
数年以内に、白人以外からの大統領が誕生する
可能性が高いことを述べておられて驚いた記憶があります。

当時は、専門家の方でも、
こうした意見を述べておられる方は見当たらなかったことから、
田中さん独自の見解だったことは明らかで、
大胆な説であるにも関わらず、
その根拠となるデータも精緻に提示されながらの
お話であったことに驚いたのです。

その後、2009年1月20日にバラク・オバマ氏が
初のアフリカ系、有色人種、ハワイ生まれの大統領となったことは、
皆さんご存知のとおりです。

この時の田中さんの予測が正しかったことが
立証されるわけですが、
ビジネスの第一線で活躍される方の
洞察の鋭さということを、肌身で感じた出来事でした。

その後、田中さんの洞察を含めたお話に感銘を
受けたことから、お手紙を書き、
「もう少し詳しく田中さんのお話をうかがいたい」
ことをお伝えしました。

すると、すぐにお電話をいただき、
手紙をお送りしてから一週間と経たないうちに、
お会いすることとなり、
それから、時々お話をうかがわせていただく関係が
続くことになりました。

ある時、田中さんにこんな質問をしたことがあります。

「企業というものは安定して継続をしていれば、
たとえ0%成長でも良いのではないでしょうか?」

すると即座に答えられたのは

「それはいけません。企業は人が支えるものだ。
企業が成長を目指すということは、
そのなかで働いている人、関わっている人もまた成長
を目指すということです。

人は生きている限り成長を目指すべきだと思います。
そのためにも企業は成長を目指さなくてはいけません。

経済成長というと、どうしてもお金のことを意識しがちだが、
人の観点からの成長を考えるべきで、そのために、
経営者は目標としてたとえ1%でも良いので、
成長を目指すのが本質です」

実は、経済学者やコンサルタントの方々にも
同じ質問をしたことがたびたびあったのですが、
「人」の視点というものから、企業の成長を語られたのは
田中さんだけでした。

今回のインタビューのなかでも、
人間の本質について、多く語られていますが、
田中さんのなかには「人」というものが、
ご自身の生き方の1つのテーマであったのだと思います。

田中さんが、本インタビューを通じて残してくれた言葉の数々は、
現在、混迷の時代を迎える我々にとって、判断の軸となると考えています。

最後までお読みいただきましてありがとうございました。

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