自社開発とオープンイノベーションについて海外企業の捉え方:「時間」の意識の重要性

目覚し時計 新規事業

多くの日本企業では、
「自社開発」への強いこだわりがあります。

「時間がかかっても自社で開発したい」と研究開発の担当者の方は考え、
経営方針として自社開発が「是」とされてきました。
しかし、自社開発には相応の時間がかかるものです。

現在、グローバルで製品やサービスの開発競争が行われており、
以前と比べ、一層スピードが求められる時代となりました。
自社開発一辺倒では、対応が難しい局面も出てきているように捉えています。

今回の結論としては、
自社開発への強いこだわりについて、一度立ち止まって考え、
「時間」を意識して、
他社や他の研究者の力を借りる選択肢も視野に入れる必要がある
ということとなります。

次の章から詳しく見ていきましょう。

オープンイノベーションに見られる「時間」を重視する意識

欧米企業では、
「人、モノ、金」に加えて、「時間」が
経営の重要な要素として強く意識されています。

日本企業でも「時間」の大切さが言われるようになりましたが、
欧米企業では「時間」に対して、
プライオリティが、より高く位置付けられています。
お金と同じ重要性で時間を捉えているのです。

欧米企業ではオープンイノベーションがよく活用されていますが、
その背景にも「時間を買う」意識があります。

たとえば、GEやジョンソン・エンド・ジョンソンでは
世界中の研究者などを対象に、
公募形式でオープンイノベーションが行われています。

既存の大企業とは異なる発想や知見を得たいということもあると思いますが、
本質的には、「時間を買う」意識があります。

GEやJ&Jほどの企業ですから、
大抵のものは自社で開発することができます。
それでも外部に知見を求めるのは、製品化までの
時間を短縮したいという考えがあるためです。

GEでは「世界中の技術者に考えてもらう」という意識があります。

自社内の研究者は多い場合でも一万人程度となりますから、
地球規模で技術者に考えてもらうほうが理論的には圧倒的に有利となります。

自社開発へのこだわりや、情報流出リスク、人材の囲い込みといった意識を越えて
「時間」が重要だと捉えていることが分かります。

日本企業の時間に対する意識の変革のために

一方で日本企業では、「時間を買う」という意識がそれほど強くはありません。

経営の意思決定がなされる際に、
「とにかく時間を重視しました」ということが強調されるケースは
多くないと考えられます。

また、たとえば、自社の経営陣が、
「開発スピードを上げるために、開発主体企業のM&Aを行う」と宣言したとすると、
研究開発担当者としてはどのように思うでしょうか。

「できれば自社開発したい」
「買収などしなくても、自分たちで開発は十分できる」

と考えるのが一般的かと思います。

「できれば自社で開発したい」という意識については、
技術へのこだわりの裏返しでもあるため、
日本企業の強みであるとも言えます。

しかし、これからは「時間」を意識して、「自社開発」だけではない選択肢を
視野に入れることが極めて重要だと考えます。

「この製品については、公募を行ってみる」
「この部分については自社開発で進める」といったように
状況に応じた打ち手に思いが至ることが重要です。

研究開発費の評価の割増計算

事業評価の観点からも、研究開発時間の短縮は重要となります。

東工大の古田健二先生は、MOTの大家ですが、
研究開発費の評価に関して、割り増しでの計算を提唱しています。

例えば1年1000万の投資を10年行ったテーマがあるとします。

10年前の初年度に投入した1000万が、
仮にほかの運用で10パーセントの利益率を上げられたと仮定するとどうでしょうか。

1100万円となるわけですが、同じように、毎年の研究開発費に
割り増しをしたものを累積として、現在価値に変換して評価することの勧めです。

これにより、開発時間の短縮をすることの効果が明確に見えてきます。

見えるようになってみると、欧米企業がどうしてこれほどまでに
時間を重視するのかが理解できるようになると思います。

まとめ

欧米企業では「時間」が経営の視点として重視されていることを述べました。

また、日本企業が「時間」について、もう一歩考えることで
今とは異なる選択肢が見えてくることも説明しました。

日本企業が長期的な研究開発を行うことについては、
私としては強みだと考えています。
しかし、長期投資だけではうまくいかない面も出てきていると思います。
その時に、時間を意識すると、どのような対応が考えられるのか、
フラットに考えてみると新しい解決策が見えてくるかもしれません。

本日も最後までお読みいただきましてありがとうございました。

補足

製品のライフサイクルも短くなっているため事業スピードについても
改めて考える必要があります。下記の記事をご一読ください。

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またオープンイノベーションについては下記の記事をご参考いただければ幸いです。

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