新規事業やイノベーションを進めるに当たって、
かつてのアイデアや過去の失敗が、ヒントとなり、
現在の課題解決にぴったりとマッチして、成功につながるケースがあります。
2018年に観光された書籍『RE:THINK』では
過去のアイデアの価値をもう一度見直すことで
生まれた製品の事例が多数集められています。
古いアイデアを見直す考え方は、企業でイノベーションを起こすうえでも
大きなヒントとなります。
今回、書籍の中でも紹介された2つの事例を取り上げてみたいと思います。
1965年には実用化されていた・電子タバコの事例
本書ではいくつもの事例が紹介されていますが、
企業の方にとって特に参考になるのは次の2つの事例です。
1つ目は「電子タバコ」の事例です。
近年、電子タバコは、タバコの匂いが少ないことや
禁煙・減煙を目的に活用できることから、人気が出ています。
この電子タバコの技術は1965年頃には実現していました。
アメリカのハーバート・A.ギルバートという方が
「電熱式の霧状たばこ」として実現します。
電熱式霧状たばこの目的は、健康への悪影響を低減させることでした。
しかし結局、製品として市場に出ることはありませんでした。
1965年頃と現在の背景が大きく異なることは
「タバコそのものが社会的に許容されていた」いた点です。
そして、当日のたばこメーカーは、業界の利益を守るために、
電子タバコのアイデアを押さえつけ、製品化されることを阻害したのです。
時を経て、タバコの有害性が広く認識されるようになると、
メーカー各社は、有害物資の含まれない電子タバコの開発を競うようになりました。
この事例から分かることは、
製品そのものの機能は変わらなくても、
人々のものごとに対する価値観が変化すると
グローバルで爆発的に普及することがあるという点です。
現在、こうしたテーマとして注目を集めているものとして
アルコールや、家畜の肉があります。
これらが社会的に許容されない時代が来ると、
代替品が求められるようになりますが、過去の製品が大きなヒントになる可能性があります。
ギリシヤで活用され、1985年に見直された医療用のヒルの事例
2つ目は「医療用ヒル」の事例です。
医学の世界では、古代インドやギリシアで
ヒルを用いた傷の治療が日常的に行われていたそうです。
しかし、20世紀初頭になると、ヒル治療は非科学的であるとされて、
治療も研究も行われなくなりました。
ところが、1985年に大きな転換点を迎えます。
ある医師が、アメリカで事故でけがをした少年の耳を壊疽から
回復させたいとさまざまな治療の可能性を模索しますが、
当時主流であった治療法では難しい状況でした。
そこで、試しにヒルを用いた治療を行ったところ
想定以上の効果を発揮し、無事に回復させることに成功します。
この治療の成功をきっかけに、
ヒル治療が科学的に検証、研究されることになりました。
すると、ヒルの唾液には血液の抗凝固活性を示す物質や
抗炎症成分などが含まれており、
痛みや硬直をやわらげる効果が高いこと分かってきました。
現在アメリカでは、ヒルを用いた治療が
皮膚移植や形成再建手術で頻繁に用いられるようになっているそうです。
この事例は、過去には、エセ科学と排斥されていたものが、
その後、検証、研究されたお陰で、
有益なものであることが実証されたケースです。
アイデアに対する評価は時代によって変化をする
本書で強調されているのは「アイデアに対する評価は時代によって変化をする」
という点です。
たとえば、ある企業において、新製品の開発にストップがかかったとしても、
そのアイデアが後の時代では大きな価値をもつ可能性があることが理解できます。
本書では、こうした際には、古代ギリシャのピュロンが提唱した懐疑論における
「エポケー(判断の保留)という態度が必要であると説いています。
すなわち、「ゴー」「ストップ」という二択ではなくて、
時には、判断することそのものを保留することも選択肢に含めることで、
判断材料が出そろわないうちの決めつけや、
認知バイアスにとらわれることを防ぐことにつなげることが重要と指摘しています。
このことは、企業において新規事業や新製品が、失敗したとしても
そのアイデアやテーマ、進め方の資料をデータとして残しておくことが重要となります。
「アイデアにはタイミングがある」ということです。
時代に応じてアイデアの評価は変わります。
自社の過去の成功事例(強み)や失敗事例を、
もう一度見直し「現在は何がどうすればよいか」の視点で
活かすことで、イノベーションにつなげられると考えています。
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