VR、AR、MR技術の製造業での活用

PCのラップトップ 新規事業

VR、AR、MR(総称してXR)の技術が目覚ましい発展を遂げています。

以前はどちらかというと、エンターテイメント系の業界に
限られた活用がなされているイメージでしたが、
近年では、産業用途として、
教育訓練、作業現場での確認などでも普及しはじめました。

VRやAR、MRは実際に使ってみると、想像以上にリアリティがあり、
非常に面白い技術であるため、自社の新規事業やイノベーション創出の
切り口として捉えている企業もあると思います。

しかし、「技術」→「用途」という考え方では、
なかなか新しい市場創出につながるようなイノベーションには結びつきません。

「市場の課題、自社の気づき」→「結果的にその技術で解決」
という流れで考えた時に、新しい市場創出につながるイノベーションが見えてきます。

今回は、VR、ARの技術を通して、
新規事業やイノベーションを考えてみます。

VR、AR、MRとは

VRは「Virtual Reality」の略です。日本語では「仮想現実」と訳されます。
CGなどを使い、それが現実であるかのような感覚を与える技術です。

現在は視覚、聴覚への影響が中心になっていますが、
広い意味では、五感すべてへに影響を与える技術や概念です。

たとえば、VRを利用した防災訓練が、東京消防庁で行われています。

東京消防庁<組織・施設><VR防災体験車の概要>

ヘッドマウントディスプレイを装着すると、
たとえば、「洪水の中を車で走る」状況が再現されており、
途中で自動車が動かなくなり、車外に出るというストーリーが展開されます。

洪水の際に、「こういう行動をすると危ないのだ」ということが実感できる点が
非常に優れています。

また、ARは拡張現実(Augmented Reality)、
MRは複合現実(Mixed Reality)であり、
こちらは、現実空間に情報を加えるような技術や概念となります。

たとえば、ARゴーグルを装着して、
目の前の機材について、詳細な説明がポップアップで表示されるといった仕組みです。

産業用途(特に製造業)での活用

VR、ARは2016年頃から注目を集め、
特にエンターテイメント業界で活用されてきました。

現在では、そこから産業用途に広がりを見せており、
新規事業やイノベーションの切り口としては面白いものだと考えています。

産業用途として、特に製造業での展開を特に取り上げます。

本田技研工業が、車体の組み立て技術習得のためのトレーニングを実施しています。
これにより、本車体を使わずにトレーニングができることから、
失敗をしても影響が全くなく、安心して技術習得に励めるということでした。

また、富士通では、工場設備の保守メンテナンスでARが用いられ、
ゴーグルをつけると、メンテナンス作業の内容が、音声と映像で指示されるそうです。
保守メンテナンスというと、ベテラン作業員でなければ難しい仕事でしたが、
これにより、習熟度が一般的な社員でもミスなく対応ができるようになったということです。

産業用途での大きなビジネスメリット

VR、AR、MRを産業用途で活用した場合、いくつかメリットがありますが、
なかでも2つの大きな価値があると考えています。

作業を行ううえで、スキルの補強ができる

上記の富士通の例からもわかるように、
VR、AR、MRのシステムの指示に従うことで、習熟度が一般的な社員でも
ベテラン作業員と同じ力が発揮できます。

また、別の場所にいるベテラン作業員が、
作業現場の動画をリアルタイムで見ながら、現場の担当者に指示を出すことが可能です。

失敗、危険な状況を疑似体験できる

製造業などでの、スキル習得については、これまで
OJTを通じたトレーニングがメインとなっていました。

しかしOJTでは、下記2つが難しい現実がありました。

①あえて失敗をするようなトレーニングが難しいこと

たとえば、製品の構造について分解をしてみないと理解ができない場合があります。
また、製造設備などについて「故障→修理」のプロセスについて、
個々人が経験してみないと次に対応できない場合があります。

②怪我や大きな危機につながるようなものは体験が難しいこと

個人の怪我などにつながる注意点については、座学などの言葉を通じた
トレーニングでは、深刻さも含めて理解しにくい場合があります。
体験型のトレーニングで経験することで、骨身にしみて危険性を理解できることがあります。

こうした課題に対して、VR、AR、MRの仕組みは大きな価値を発揮します。

現在、多くの製造業では、技術伝承がひとつのテーマとなっています。
技術伝承と、VR、AR、MRは相性が良く、
ひとつの解決策として今後も注目されていくと考えられます。

まとめ

VR、AR、MRの技術と自社の強みを掛け合わせたときに
面白い新規事業やイノベーションが生まれると考えるかもしれません。

しかし、冒頭の述べたように、
まず、「未決の課題」に注目し、それが結果的にVR、AR、MRを活用することで
解決できた場合にイノベーションにつながります。

VR、AR、MRは、「経験」がひとつのキーワードになると考えています。
経験してみないとなかなかわからないという未決の課題や気づきがあれば、
さらに多くの価値につながると考えています。

本日も最後までお読みいただきありがとうございました。

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