企業の立て直しから学ぶ社員の意識を統一する方法

リーダーシップ

新型コロナウイルスの影響が経済活動に大きな打撃を与えています。

こうした時代においては、大きな変化にいかに対応するか
ということが、今後の企業課題の第一に挙げられるかと思います。

時代変化に対応するためには、
かつての成功体験や価値観を捨てなくてはいけない場面が
でてくるかもしれません。

しかし、たとえば経営者一人が、
かつての成功体験や価値観から逃れられたとしても
他の社員の方が、変化を受け入れる考え方を受け入れられなければ、
会社が一丸となって対応することは難しいものです。

逆に言えば、社員の方の意識の方向性が統一できていれば、
どのような変化であっても、うまく対応することができると考えています。

今回は、企業が一丸となれるような
社員の方の意識の方向性の統一方策について考えます。

現場を重視した意識統一の必要性

企業において、社員の意識を統一する方法として挙げられるのは、
経営陣が一定の方向性を指し示し、
具体的な方法については、現場が対応するという方式です。

この時に重要となるのは、
経営陣が示した方向性が、現場の方に腹落ちしている必要がある
ということです。

特に、これまでの既存事業の延長戦とは異なる対応が必要となるような場合、
社員が一丸となって動いていく必要がある場合においては、
一人ひとりが納得して、動いていく必要があります。

「変化」というのは、多くの方にとってはストレスです。
そのため、人間は基本的には変わりたくないと考えています。

変化が必要であるならば、
変化を乗り越えなくては「次がない」と
多くの社員の方が考えるようにしなくてはいけません。

その場合、日本企業においては、
変化の方向性について、トップが一方的に指示を出すとうよりも、
現場の意見も引き出しながら、
丁寧に結論を導いていくという作業が必要だと考えています。

会議の席で意見を求めるというよりは、
経営陣が現場の中に分け入っていって、
雑談や会食も含めたコミュニケーションをとるなかで、
進めていくというのが具体的な進め方となります。

次の章で事例を解説します。

立て直しにあたってある経営者が行ったこと

ここで紹介するのは、1950年代後半に、
素材系の製造業で行われた企業の立て直しの方法です。

時代背景としては、
戦後ようやくひと段落つき、1950年の朝鮮戦争特需を経て、
景気は持ち直したように見えましたが、
1957年頃に、日銀が国際収支改善のために金融引き締め策を
とったことがきっかけとなって、
多くの企業で、減収減益、資金不足が問題となり、
倒産する企業も多く出てきました。

企業課題としては、
海外からの新しい技術の導入の必要性や、
これまでの小規模商家のような取り組みとは抜本的に異なる効率化などの
対応が求められた時代でした。

時代の変化が大きさという意味では、
現代にも通じる部分があると考えています。

その企業(S社)は、子会社の工場(従業員数300名)
がこうした状況で立ち行かなくなっていました。

そうした状況のなかで、本社からOさんという執行役員が
子会社社長として派遣されましたのです。

工場を閉鎖し、子会社を一年以内に解散させるというのが
Oさんに与えられた役割でした。

しかし、Oさんは、
社員の方の意識を統一することができれば、
なんとか立て直すことができるかもしれないと考えていました。

Oさんが行ったことは、秘書役の男性部下とともに、
毎週10名ほどの社員とともに、
会社の費用ですきやきを食べることでした。一年近く続けたのです。

すきやきはご馳走でした。参加した社員は大変喜び。
お酒も回ったところで、Oさんが「みんなの会社に対する意見を聞かせてくれ」と
とにかく話を聞く(傾聴)を行ったそうです。

当時の男性秘書役の方が、後に私に語ってくれたのは
次のようなことです。

「すきやきはごちそうです。社員の方々は半年に一度ですから、
嬉しいのでしょうが、毎週いただくのは、
若かった私でもとても辛いことでした。

私はうんざりしていましたが、Oさんはいつも初めて食べるかのように
おいしそうにふるまっていました。

そして、ひたすら社員の愚痴とも悩みともつかないものを聞いていく。
その姿は私しか知りませんが、すごいものだと思いました」

Oさんが社長として行ったことはこれだけでした。
しかし、子会社閉鎖の期限であった一年が経ったころには、
業績がV字回復していました。

現場の方々が、すきやきの会をきっかけに、
相互にどうしたらよいかを考え、意見交換するようになって、
操業短縮と在庫調整のアイデアが出てきて、
実行したことが功を奏したのです。

その後、子会社を立て直したOさんは、本社の社長となったということでした。

すきやきの事例を現代で応用する

この事例を、昭和時代の経営の話と片付けてしまうのは簡単です。

現代において、毎週、違う社員とすきやきを食べに行くというのは、
通用しないでしょう。

しかし、社員の意識の統一ということについては、
大きなヒントがあると考えています。

変化の時代の経営、コミュニケーションの在り方として、
社員の方が、変化への取り組みに前向きになるには、
どうすれば良いかということを、とにかく考えていくことが
必要だというのが、今回の結論です。

現代であれば、むしろすきやきではなく、
「話を聞くこと」に注力することが、大きな価値、
ポイントになると考えています。

お茶会、オンラインの飲み会などもアイデアとしてはあるかと思います。

まとめ

大きな変化の時代に、企業が対応していくためには、
社員の方の意識の方向性を統一していくことが大切であること。

そして、方法として、
1950年代に行われた企業立て直し事例を紹介いたしました。

よく「経営はアートだ」という方がおられます。
個人的には「アート」だとは考えていないのですが、
「論理では割り切れない部分がある」という意味では
なるほどそうかもしれないとも思っています。

今回は、経営に近い立場での立て直しの事例ですが、
現場に近い社員の方々としても、変化の時代の到来に際して、
「自分はどんな会社で働きたいのか」「自分にとって仕事はどうあれば良いか」と
いったことを考えなくてはいけないと思います。

(考えを述べる可能性は高いとも感じています)

この機会に、一度、そうしたことを考えてみることをお勧めいたします。

本日も最後までお読みいただきありがとうございました。

補足

「話を聞く」という観点から、下記の「ある研究所長の取り組み」が参考になりますので、
是非一度お読みください。

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