レジリエンス、スラックを経営に組み込む際のポイント

ポストコロナ

前回はコロナウイルスの影響から見えてきた
「グローバルサプライチェーンの脆弱」さを述べました。

ポストコロナ時代の経営課題:サプライチェーンにおける「レジリエンス、スラック>経営効率」
新型コロナウイルスの影響により見えてきた企業の課題として、 「グローバルサプライチェーンが考えられていた以上に脆弱であった」 というものがあります。 特に製造業においては、部品の多くが中国に依存していたため、 今回、武漢周辺の工場が...

今後の経営課題としてレジリエンスやスラックといった、
何らかの問題に対応できる「柔軟性」「余裕」といったものを
サプライチェーンなどに組み込んでいく必要についても言及しました。

今後、レジリエンス、スラックをテーマとした
大きな経営課題として取り組んでいく必要があり、
レジリエンス、スラックについては、
多くの部署が関係した全社プロジェクトとして
対応されるようになると考えています。

この対応は、これまでの合理性のみを追求する経営と比べると
二律背反の側面があり、難しい対応が迫られます。

しかし、日本企業の経営においては、根底に
顧客を含めたステイクホルダーを大切にしたい意識があるため、
それがテコとなって、レジリエンスやスラックを組み入れる
こともできるのはないかと考えています。

今回は、レジリエンス、スラックを
企業活動に組み入れるための課題と、どうすれば良いかについて述べます。

レジリエンスやスラックが マイナス要因と考えられた理由

レジリエンスやスラックはこれまでの企業活動において
マイナス要因と考えられていました。

たとえば、これまで
効率性の観点から考えると、グローバルで人件費が安い地域に、
自社の工場を移転し、製造を行うということが正しいと考えられていました。

企業の製造拠点が、日本から中国そして東南アジアへと
展開していったのも当然の判断だとも言えます。

また、製品材料や在庫については、ともに自社ではなるべく抱えないことが、
正しい経営として捉えられていました。
在庫は、「罪の庫」と言われた時代もあるほど、目の敵にされていたのです。

企業にとっては余分な余裕となる
レジリエンスやスラックは、不要どころか
積極的にカットをしていかなくてはならないものと捉えられていました。

レジリエンス、スラックを組み入れることの2つの壁

このようにこれまではレジリエンスやスラックをカットしていく
(無駄を省く)のが経営の王道でしたが、
コロナウイルスの問題から、ひとたび
グローバルサプライチェーンの一部あるいは複数に大きな問題が生じると、
企業活動全体がストップしてしまうことが見えてきました。

たとえば、中国の武漢に部品工場があったとしても、
日本国内にも同じような工場があるとすれば、製品供給に大きな支障は
起こらない可能性がありました。

しかし、これまでの経営合理性から考えると、
同じような部品工場を、人件費の安い中国に建設し、また別の国にも建設する
ことはよほどの事情がなければ行えませんでした。

どこの国でどのような問題が起きるかということは、
誰もわからないというのが、今回の新型コロナウイルスの教訓かと思います。

そのため、具体的な問題が起こることを想定したリスク対応では十分ではなく、
「何かが起きる」可能性があるが、それが何かは分からないため、
対応できる余力や弾性、余裕を各事業に持たせておくという対策が必要となります。

レジリエンスやスラックをグローバルサプライチェーンや経営の方向性に
組み入れることを考える必要性は、ご説明した通りとなりますが、
さて、ここで、レジリエンス、スラックを
企業活動やグローバルサプライチェーンなどへ組み込んでいく
ために大きく2つの壁が見えてきます。

1つ目は「経営、判断の意識」の問題
2つ目は「株主対応」への問題
この2つの壁について次の章から詳しく見ていきましょう。

経営、判断の意識

これまで多くの日本企業では、
レジリエンスやスラックをカットすることで
競争優位性を保ってきた側面があります。

この成功体験は強烈なものであるため、
あえて無駄を取り入れたり、余裕をもった体制を構築していくことは
頭では分かっていたとしても
現実ではなかなか決断ができず、取り組めないことが予想されます。

余裕と無駄の線引も極めて難しい問題でもあります。

しかし、これに対応ができないと
次に新型コロナウイルスのような問題が起きたときに
企業として、想定できないようなダメージとなり、
場合によっては事業継続ができない事態となることも考えられます。

そのため、経営意識を単純な合理的な考え方だけではないことを理解して、
対応していかなくてはいけません。

「これまで(コロナ前)」と「これから(コロナ後)」で
経営や各事業所における判断意識も大きく変えていかなくてはいけないということです。

経営判断というのは、多くがこれまでの経験をもとに行われます。
これまでの経験が役立たないとなると、
ここから新たに知見を積み上げていかなくてはならない部分もでてきます。

今後は、日頃の判断一つひとつにも、
合理性と余裕という二律背反を両立させる意識を持って
対応していくで、知見を積み上げることにつなげていくのが
不可欠だと考えています。

株主対応

レジリエンスやスラックを現場に取り入れるということは、
ある側面から見ると、
投資効果がない部分に投資をしなければいけないということにもなります。

これに対して、投資家や株主はどのような反応をするでしょうか。

短期的な利益を重視する投資家や株主が多数を占める場合、
レジリエンスやスラックを企業が取り入れることに
反対されることが容易に想像できます。

短期的な投資家や株主を説得することはとても難しい課題です。

なぜならば、レジリエンスやスラックを取り入れることは
経済合理性だけでは説明が難しいからです。

たとえば、経営陣が今5億円かけて、予備となる工場を国内に作ることが、
10年後、企業が倒産することを防ぐことになる、
といった説明ができるかもしれません。

しかし、短期的な投資家や株主は、
10年後にその企業がどうなっているかよりも、
次の配当日により高い配当金となるかどうかが最大の関心です。

前述の説明には納得がいかないということになり、
短期的思考の投資家や株主が強力であった場合、
彼らが大きな障害となる可能性が多分にあります。

ではどうすれば良いかというと、
まず企業として
ステークホルダーとしての株主の優先度を下げる必要があると考えています。

日本企業では、欧米企業と比べて
株主よりも、社員、顧客をより重要なステークホルダーとして
捉えている企業が多いことは、有利に働くとも考えています。

個人投資家で長期投資を行う方を増やす試みも行われてきましたが、
そうした取り組みをさらに加速させることも
必要だと考えます。

(たとえば、配当金ではなく返礼品を重視し、
中長期保有者にはさらに返礼品の特典をプラスするといった取り組みです)

長期的な視点を持った株主、投資家は、
レジリエンスやスラックの必要性をご理解いただけると思います。

今こそ内部留保金を使う

日本企業は幸いなことに内部留保金に余裕があります。

これまで次なる利益があがることを念頭に置いた投資を行ってきました。

しかし、利益があがる投資先というものも難しいため、
内部留保として積み上げるという選択をせざるを得なかった側面がありました。

そこで、今こそ内部留保を
レジリエンスやスラックを経営に組み入れるために
使うべきだと考えています。

そうすることによって、
事業継続を維持し、社会からの信頼を得られる
ことにつながっていき、結果的に長期的な収益への道に
つながっていくと考えています。

まとめ

前回、レジリエンスやスラックを経営に組み込むことが、
これからの企業経営にとって必要であることを述べました。

そこで壁となるのが
「経営、判断の意識」「株主対応」の2つとなります。

これらについても、これまでとこれからを分けて、
考え、対応していく必要があることを述べました。

また、レジリエンス、スラックをグローバルサプライチェーンなどに
組み込んでいく際には、これまでの内部留保金を活用することを
お勧めしました。

企業経営は、これから一段と難しい局面に入っていきます。
合理性と余裕の二律背反を両立させながら行わなければならない
正解が分からない課題への取り組みが必要となるからです。

しかし、二律背反の課題にうまく対応することができれば、
社会的にもさらに大きな価値、存在意義を見出すことにつながると考えています。

ピンチはチャンスとも言いますが、
今回のコロナウイルスで見えてきた難しい課題が、
日本企業にとって、奇貨であったと後の時代に捉えられるようになりたいものです。

本日も最後までお読みいただきましてありがとうございました

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