「拡散」と「収束」の2つの段階を意識することが新規事業を成功に導く

グラスに写った逆さまの建物 新規事業

新規事業やイノベーションについて、初期段階では、議論・検討を行い
様々なテーマやアイデア出しを行います。

しかし、議論が広がりすぎて収集がつかなくなり、
うまくテーマの絞り込みができなかった
という失敗のケースもあるようです。

こうした失敗を防ぎ、実りある議論を実現させるためには、
「拡散」と「収束」の2つを段階を意識することが重要となります。

メンバーで議論をする際に、その議論段階が、
「拡散」段階なのか、
「収束」段階なのかを意識するだけで、
議論が成功したと言える確率がぐんと上がります。

今回は、
新規事業の検討初期段階の議論における
「拡散」段階と「収束」段階の認識することの重要性を解説します。

「拡散」段階とは

「拡散」段階とは、
新規事業について議論を行う際の初期段階で、
新規事業について広くアイデアを検討し、
メンバーのなかで出てきたアイデアをさらに広げる、
あるいは組み合わせることで、新しい発想を見つける段階のことを指します。

この段階は、たとえば、
会社によってはブレインストーミングということで行うこともあります。

次に紹介する方法は、
ブレインストーミングの基本的な要素を押さえつつ、
議論をまとめる「収束段階」を意識した内容となっています。

「拡散」議論の進め方

はじめに、議論に参加するメンバーのなかから
「進行役」「記録役」を一人ずつ決定します。

「進行役」は文字とおり、議論全体を進行を担当します。
「記録役」は、議論のなかで出てきたキーワードと、
誰がその発言をしたかを記録します。

そして、「拡散」段階における議論のルールとして
次の3つを設定しておきます。

進行役の方は、議論冒頭にルールについてメンバーに伝えるようにします。

1)否定的な言葉を使わない
2)黒字目標については言及しない
3)結論や判断は次の機会に行う(2つの段階があるということを認識してもらう)

1)否定的な言葉を使わない という点については、
拡散段階では、議論の内容を(方向性を限定せずに)広げていくことが
ポイントとなるため、ルールとして重要です。

参加者の誰かが否定的な言葉を使ってしまうと、
その後の発言がストップすることにつながり、
以後の発言についても、「こんなことを言ってもよいのかな」と
気後れが出てしまいます。

良いアイデアなのか、悪いアイデアなのか、
拡散の段階では、判断がつかないということもポイントとなります。

一見悪いアイデアだが、
組み合わせによって飛躍的に良いアイデアになる場合もあります。
そのためにまずは話を進めて、広げていくことが重要となります。

2)黒字目標については言及しない という点についても
話を広げていくためのポイントとなります。

「黒字になるのか」「いつ達成するのか」といったことが言及されると、
どうしても、思考が収益の枠のなかに限定されてしまいがちです。

面白いアイデアだが、収益性に結びつく可能性は低いので、
発言は控えようと考えてしまうことにもつながってしまいます。

また「黒字、収益」について言及されてしまうと、
「既存事業に近い、極めて現実的ではあるが、
新しい価値とは程遠いテーマ」ばかりに意識が集中してしまうという
問題にもつながってしまいます。

3)結論や判断は次の機会に行う については
拡散段階では、結論を見つけるのではなく、
アイデアやテーマを広げていき、可能性を探るということが求められます。

結論を出す場ではないことを冒頭で明確にすることで、
アイデアやテーマを広げていくことに注力ができるようになります。

そして、2つの段階があることを
議論に参加するメンバーに認識してもらうこともポイントとなります。

1)2)3)のルールに反する発言が出た場合の対応

1)2)3)のルールに反する発言があった場合、
「進行役」の方が注意を促し、場合によっては議論をストップします。

そして、議論のルールの確認を行って
本来の「拡散」段階で話し合われることに戻すことを行います。

社内で拡散の議論を行う際に、ベテラン社員の方が
「以前行ったことがある」ということに言及される場合があります。

その際には、
なぜダメだったのか、その際の教訓はなにか、今改めて行うのならば、
どういったことが考えられるのか、
について、話をしてもらうように
進行役が促すようにします。

「収束」段階とは

「収束」段階では、拡散によって出てきたアイデアについて
具体的な方向付けをしていきます。

「記録役」がこれまでの「拡散」の議論のなかで出てきた話を
キーワード(テーマ)を中心に振り返ることを行います。

そして、出てきた多くのキーワード、テーマについて、
議論の参加者のなかで、有力と思われるものを
3~5程度に絞りこみます。

そして、さらに1つひとつについて
製品化、サービス化を進める際の
プロセスイメージ、顧客のイメージについて議論を進めます。

その際に今後の課題(問題点、壁)となること、
協力体制としては何が必要か(外部との協力が必要かも含める)と
いったことを議論していきます。

ここでのポイントは、

1)拡散させない
2)出口を意識する

の2つとなります。

この点については、「収束」の議論の冒頭で
進行役の方が、ルールとして、参加者に伝えるようにします。

1)拡散させない については、
「拡散」段階から意識の切り替え、議論を行うように促す形です。

議論が拡散してしまった場合は、
進行役の方が、議論の本筋に戻していくことを行います。

2)出口を意識する については、
製品化、サービス化を進めることを前提に、
課題がどこにあるかを検討し、いかにクリアをしていくかを
中心に議論をしていきます。

また、顧客イメージについても議論のなかで
共有を行います。

顧客のイメージが明確にできていると、
「製品やサービスを市場に出したけれども、結局売れなかった」
というリスクを減らすことができます。

結局売れなかったという問題は、
多くのケースで、当初から顧客のイメージができておらず、
プロダクト優先で進められた場合の起こりがちです。

収束の議論は、新製品や新サービスを検討する際の
プロセスとしては、早い段階に位置しますので、
この段階で、顧客のイメージが意識して、
さらなるプロセスを進めることが重要となります。

2つの段階で求められる能力は異なる

拡散段階と収束段階では、求められる能力が異なります。

拡散段階では、主役となっていたメンバーが収束段階では
全く発言をしなかったり、またその逆のパターンもあります。

そのため、チームビルディングの際には、
拡散段階に適した人材なのか、収束段階に適した人材なのかについても
意識していき、バランスよく組み合わせていくことがポイントとなります。

拡散型の人材ばかりでは、具体性に乏しく、
収束型の人材ばかりでは、議論が飛んでいかない
ということが起こります。

拡散段階と収束段階でメンバーを変えるという手法もありますが、
基本的には、同じメンバーで、必要であれば、ほかの方の意見を求めるというスタンスで
行うことがスムーズに進みます。

まとめ

新規事業の初期段階で
議論を行う際に「拡散」と「収束」の2つを意識することの重要性を述べました。

参加されるメンバーの方へは、
事前に、2つの段階があることを説明します。

そして、それぞれの段階の冒頭で、
今どの段階の議論であるかを明確にしながら進めていくことが必要です。

本日も最後までお読みいただきありがとうございました。

補足

新規事業を進める際に、MOTでは「ロードマップ」の活用を勧めています。
下記の記事をご参考いただければ幸いです。

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前回は、 ロードマップの基本と活用のポイントについて述べました。 ロードマップは、未来基軸で 現在から将来への道筋を推測、計画する手法です。 また、「あるべき姿」に至るまでの道のりを 関係者の間で意識共有のツールとして活用することで、 大き...

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