脅威となる技術の進歩・変化の想定と、既存事業への打撃を考える

古い機関車の掲載された書物 事業戦略

「ガムの売上が、スマホの影響で激減している」
という話題について、ネット上でも一時期注目をされていました。

近年は技術が進歩のスピードが早く、
テクノロジーが業界の壁が低くし、結果的にこれまでライバル企業と
想定していなかったような企業に足元をすくわれる
ということが起きており、今後もそうしたケースが増えると考えられます。

顧客が抱えている課題の本質を見誤ると、
対応が間違った方向に進んでしまい、致命的になる場合もあります。

今回は、「ガム」「かつら」「英会話」の3つの事例から、
自社にとっての驚異を察知し、どのように対応すべきかの方向性を考えていきます。

スマホがガムの売上に大きな影響を与えた

まず、冒頭でも触れた
スマホがガムの売上に与えた影響について考えてみます。

ガムは、「ガムを噛むぞ!」と意気込んで消費されることはほとんどありません。
なにかをしながら、同時にガムを噛むことが多いと思います。

たとえば、移動する合間にガムを噛む、といったようなシーンで
消費をされる商品です。

ところが、スマホが登場して、
「ちょっとした時間」を独占するようになりました。

SNSをチェックしたり、ゲームをしたり、音楽を聞いたりと、
スマホはスキマ時間を専有する存在となりました。
ガムはスマホとスキマ時間を争うような関係となってしまった
と考えられます。

特にスマホで音楽を聞く場合、イアホンを装着しながら、
ガムを噛むとこめかみが音を立てるため、音楽の邪魔をします。

そのため、音楽を聞かれる方は、
ガムを噛むことを止める選択肢をするようになり、ガムの売上は激減した
ということです。

現在、ある食品メーカーでは
「スマホの音を邪魔しないガム」を開発しているそうです。

しかし、この課題の本質を考えると、
ガムの価値をゼロベースで考えて、新しい価値創出を行う必要があります。
このケースでは、一段抽象化して、
スキマ時間をスマホと争わない形で、ガムを通じた価値提供を行う
という方向で商品開発を進めていく必要があるかと思います。

機能性食品としてのガムがクローズアップされていますが、
これなども、スキマ時間に噛むというものではなく、
食後などに積極的に消費してもらうという側面に着目していると考えられます。

スマホの影響は甚大で、特にサービス産業の場合は、
顧客の時間をスマホと奪い合っている可能性が高く、
その場合に、競争の背景と、「ではどうするか」の打ち手を
考えていく必要があります。

自社にとって登場したら大打撃になるものを考える

ところで、自社の製品やサービスにとって、
「これが登場したら壊滅的な打撃を受ける」ものはどのようなものでしょうか。

分かりやすいものとしては、新しい技術です。
まだ実現化されていないが、実現化されたことを想定して、
自社に影響があるあるものは何を考えることは、
製品を通じて提供している価値の本質を知る上でも重要なこととなります。

たとえば、
顧客の課題に対して、間接的な解決策を与えている
製品やサービスの場合、
直接解決する製品やサービスが登場すると大きな影響を受けます

「かつら」業界の脅威を考える

具体例として「かつら」業界で考えます。

多くの場合、「かつら」は「髪の毛が薄くなる」という課題に対して、
「代用品としての髪の毛を提供する」ことで解決を行っています。

「かつら」業界が大きな影響を受けるものとして、
どのようなものが考えられるでしょうか。

「AGA治療薬」のような髪の毛が生える薬がさらに進化して、
副作用がなく、多くの人に効果が期待できるとなると
「かつら」の需要は、当然ながら激減すると考えられます。

では「かつら業界」のご担当者の方であったとしたら、
どのように対応を考えればよいでしょうか。

この場合は、製薬業界の動きを見ておく必要があり、
まず、公開情報から、技術開発がどこまで進んでいるのか、
進捗の展望はどのくらいかの目安を知っておく必要があります。
意外に役立つのは、業界の専門誌です。
「○○新聞」などをざっと目を通すだけでも、
動向が分かり、そこから自社の対策のヒントが見えてくる場合もあります。

また「かつら」業界の場合は薬の販売実現の可能性が高いと想定して、
自社のビジネスモデルを根本から考えていくフェイズにあると考えます。

場合によっては、資金力に余裕のあるうちに、
M&Aを検討することも考えられます。
欧米企業などでは、企業そのものを買収して、製品の販売を取りやめる、
という方策もしばしば見られます。

「英会話教室」の脅威を考える

別の例として「英会話教室」を考えてみましょう。

英会話教室は「英語を通じたコミュニケーションができない」という課題に対して、
「教育を通じて、英語を話せるようにする」ことで解決を行っています。

「英会話教室」業界が大きな影響を受けるものとして、
どのようなものが考えられるでしょうか。

この場合は、たとえば「AIを用いた同時通訳」が
日本語で話をしている時と同じくらいのコミュニケーションのスピードと質が
実現できたとすると大きな影響があります。

英語を習得しなくても、相手と話ができる状況であれば、
英会話教室に通う必要性を考える人は少くなるなるでしょう。

音声認識技術の進歩はここ数年、驚くべきスピードで進んでいます。
スマートスピーカーで「アレクサ」や、スマホで「シリ」を使ってみると、
AIのがどの程度、人の言葉を認識できるか分かります。

さらに、自動翻訳ソフトの性能も向上しています。
スペイン語と英語の自動翻訳ソフトはクオリティが高く、
同時通訳としても非常に高い精度のものが登場していて、
完成しているといっても良いでしょう。

近い言語として例えばドイツ語、フランス語も同様の状況です。
日本語は、特殊であるため、「まだ」難しいのですが、
今日の「まだ」は明日の「もう」なので、日本語の同時通訳機が
登場するのも遠くない未来となると考えられます。

また、似たような状況に置かれているものとして
「音声を文字に直す文字起こし」を行う業界があります。

音声入力のクオリティが向上した場合、壊滅的な打撃を受けることになります。

音声入力の機器は、現在97%程度の再現率です。
これは100文字入力すると、3文字は間違いとなるため、
400文字詰原稿用紙では、12文字の間違いでそのままでは使えない状況です。

しかし、いずれAIが実装され、高いクオリティで文字起こしが可能となる可能性は
非常に高いと考えられます。

低価格、もしくは無料でサービス提供が行われた場合、
この業界はなくなることになるでしょう。

ここまで状況が切迫している場合は、
音声入力関係の調査というよりは、至急、業態転換を検討することが必要となります。

まとめ

自社にとって、脅威となる技術などについて考え、
その業界の動向について、公開情報をキャッチアップすることを、

日々の業務の一部として調査をして組み入れることは、
自社の今後の方向性を検討するうえでも有効な打ち手となります。

これから技術進歩のスピードがますます早くなっていくことだと考えていますので、
考えてもみなかった業界が、
自社の業界に参入してくるケースが増えるかと思われます。

たとえば、高性能の3Dプリンターの登場によって、
材料系メーカーが、より川下に近い業界によって中抜きされてしまう
ケースが考えられます。

しかし、自社が提供している価値の本質を改めて理解しておくことで、
そうした新しい技術を取り入れて、自社の強みと組み合わせることで、
さらに新しい価値提供につながる可能性があります。

本日も最後までお読みいただきましてありがとうございました。

3Dプリンターについては下記の記事をご参考ください。

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