ロシアとウクライナで戦争が起きた場合の影響(2022年2月24日更新)

経済動向

2021年11月頃から、
ロシアがウクライナとの国境周辺に
大規模な部隊を配置しているという報道がなされています。

なぜ、ロシアがウクライナへの侵攻をする態度を
とっているかについては、
複数の要因があるため、整理をしていきたいと思います。

まず、ロシアも、ウクライナも、
「ソビエト連邦」に属する共和国でした。

ウクライナ東部は、歴史的にロシアの影響が強く、
ロシア語を話す住民も多く暮らしています。

一方でウクライナ西部は
オーストリア・ハンガリー帝国に帰属していた影響もあり、
宗教もカトリックが強く、ロシアとは一線を画したいという
住民が多くいます。

そのため、東西で住民の方で、
ロシアに対する意識が大きく異なり、
ロシアはそうした状況を利用して、ウクライナへの影響を
強めたいという意図があります。

【詳しく】緊迫ウクライナ ロシアが軍事侵攻? 最新情勢は? | NHKニュース
【NHK】去年11月ごろから、ウクライナとの国境周辺にロシアが大規模な部隊を集結させてからおよそ3か月。一歩も引かないロシアに対し…

ここでポイントとなるのが
NATO(北大西洋条約機構)の存在です。

NATOは、ヨーロッパと北米の30カ国による政府間軍事同盟で、
加盟国が外部からの攻撃に対応して相互防衛を行うというものです。

もともとは東西冷戦の時代に
「ソビエト連邦」に対抗して作られた軍事同盟ですが、
ソ連崩壊後、チェコやポーランドなどのかつてのソビエト側の
国々がNATOに加盟していきます。

https://www.nato.int/nato_static_fl2014/assets/pdf/2020/6/pdf/What_is_NATO_jp_20200507.pdf

ロシアにとってみれば、
かつてのソビエト側の国々が西側に加わることで、
軍事上の防衛ライン(緩衝地帯)が、結果的に侵食されていると
脅威を感じているということとなります。

こうしたことから、
ロシアはウクライナのNATOへの加盟に
強く反対しているということがあります。

また、ロシアのプーチン大統領としても
ウクライナを、ロシアの勢力圏に取り戻し、
統治地域の拡大につなげて「強いロシアの再建」
を実現したいという思いもあるようです。

これに対してNATO加盟国、アメリカはウクライナ支援を
行うとしており、硝煙の匂いが漂うご時世となっています。

多くのニュースでは、
ロシアが軍事上の防衛ライン維持と、領土的な野心から
ウクライナへの侵攻を目論んでいるという視点で解説されています。

一方で、アメリカによるロシアの挑発している
という見方があります。

ロシアは、ウクライナを軍事的な防衛ライン(緩衝地帯)
としたいため、NATOに加盟することを防ぎたいという考えが
あることは先に述べた通りとなります。

NATO側にしても、ウクライナがNATOに加盟することで、
戦争の危険が高まるということは避けたいというのが本音のようで、
ウクライナのNATO加盟は、現実的ではないのが実情のようです。

こうした前提も踏まえて、ロシアからは、
「ウクライナをNATOに加盟させないことを条件とした和解」が
アメリカに提案されています。

しかし、アメリカ側は
戦争を回避し丸く収まりそうなこの提案を拒否しているのです。

米、ロシアの要求拒否 NATO不拡大など―ウクライナ情勢、一層不透明:時事ドットコム
【ワシントン、モスクワ時事】ブリンケン米国務長官は26日、国務省で記者会見し、ロシアが提案している北大西洋条約機構(NATO)の不拡大について、拒否する構えを改めて示した。米国は同日、こうした考えをNATOと共に書面でロシア側に回答。欧米とロシアの主張に深い溝が横たわったまま、ウクライナ情勢は不透明感を増している。

ここで話が少しそれるのですが、
実際に戦争が起こるかどうかの可能性について、
多くの専門家は否定的です。

ロシア側は、ウクライナがNATOに加盟することへの牽制として、
軍隊配備を行っているわけですが、
ウクライナのNATO加盟が現実的ではない状況のなかでは、
そこからさらに侵攻をして、その先のさらに大きな戦火に展開させる
可能性は少ないというようです。

すると、今回の緊迫状況は、
政治的な牽制球の意味合いが大きいと判断ができるようです。

緊迫ウクライナ ロシアはどう動く? 安全保障の専門家、小泉悠さんインタビュー - ニュースウオッチ9
ウクライナ情勢、軍事的な緊張はどこまで高まっているのか、ロシアが軍事的な行動を起こすとしたらいつか、偶発的な衝突がなぜ懸念されるのか

当事者であるウクライナもそのことがよくわかっており、
ロシアからの侵攻リスクについて否定的な見解を示しています。

ウクライナ、米警告に反発 ロシア侵攻の切迫感に相違(共同通信) - Yahoo!ニュース
 【キエフ、ワシントン共同】オースティン米国防長官は28日、ウクライナ国境周辺に集結したロシア軍について、プーチン大統領が決断すれば侵攻可能な態勢だと警告した。一方、ウクライナは当面の侵攻リスクを否

そうなりますと、アメリカが戦争に発展しないことを
十分に理解していながら、「ロシアが戦争を起こそうとしている!」
とアオリ気味な行動をしていることになります。

アメリカの狙いは何でしょうか。

アメリカは、
2021年9月にはアフガニスタンから完全撤退をしています。

アフガニスタンから完全撤退 アメリカは今後どうする?【解説】 | NHKニュース
【NHK】アメリカ軍がアフガニスタンから完全撤退し、「アメリカ史上、最も長い戦争」と言われる軍事作戦が終了しました。しかし、武装勢…

アメリカはこれまで、海外においても軍事作戦を展開してきましたが、
今後は縮小させていく意図が感じらます。

アメリカとしては、ユーラシアから撤退をし、
しかし、影響力は残しながらもロシアとの妥協点を見出したい
と考えているようです。

ウクライナについては、
ウクライナ東部をロシアに帰属させる形で決着を
付けたいのではないかと考えられます。

バイデン米大統領は、
「ロシアによるウクライナ侵攻が「小規模」なら
 西側諸国の対応も小規模にとどまる」との可能性を示唆した
ことがBBCでも報道されています。

ウクライナ大統領、「小規模な侵攻などない」 米大統領の発言に反発 - BBCニュース
ウクライナのゼレンスキー大統領は20日、バイデン米大統領が前日に、ロシアによるウクライナ侵攻が「小規模」なら西側諸国の対応も小規模にとどまる可能性を示唆したことに反発した。

これについては、ウクライナのゼレンスキー大統領は
「小規模な侵攻などない。愛する人を失う際に、
 小規模な犠牲や小さな悲しみなどないのと同じだ」
とTwitterでコメントをしており、アメリカが非難される形となっています。

国際政治は、歴史的な背景や複数の条件、
時系列による変化があるため、本質を見極めることは
難しいのですが、
今回、ロシアとウクライナで
「実際の」戦争となる可能性は低いと考えられます。

しかし、万が一、ロシアとウクライナが戦争となった場合の影響については、
大きなものとして2つが考えられます

1つ目は、天然ガス価格のさらなる高騰。
ヨーロッパでは天然ガスの輸入の4割をロシアに頼っています。

戦争により供給が滞れば、他からの輸入となりますが、
グローバルで高騰している天然ガスの価格は、
さらに上がることが考えられます。

天然ガス高騰は、原油価格の高騰にも連動し、
世界経済に大きな影響を与えると考えられます。

2つ目は、小麦価格の高騰です。

2019年段階で、
ロシアは世界第3位、ウクライナは世界第7位の小麦生産量を誇ります。

(キッズ外務省)小麦の生産量の多い国|外務省

実際の戦争が起きれば、これらの供給に支障がでる可能性が
高くなります。

穀物市場では、供給量の10%が減ると、
価格が2倍になると言われています。

こうした戦争や、国際政治の影響は事が起こってしまった場合、
企業や個人として、準備がない場合は大きなマイナスとなってしまいます。

仮にロシアとウクライナで戦争が起きた場合、
自社にとって、どの部分が影響を受けそうであるか、
その場合の保険的な対応を考えておくのも良いかと思います。

シナリオ・プランニングの考え方で、
「起こる可能性が低い」が「起きた場合の影響が大きい」案件は、
対応が後回しにされがちですが、
今回は「影響が大きい」ところを重く見て検討すべきかと思っています。

本日も最後までお読みいただきまして
ありがとうございました。

(2022年2月24日 追記)

2月24日の12:30頃に、
ロシアのプーチン大統領が、ウクライナの軍事施設へのミサイル攻撃を開始したとの
発表があり、戦争がはじまったことが明らかとなりました。

ロシア、ウクライナに侵攻 軍施設にミサイル攻撃(写真=ロイター)
ロシア軍は24日、ウクライナの軍事施設へのミサイル攻撃を開始した。キエフなどの軍司令部が対象とみられる。ロシアのプーチン大統領が同日にウクライナ東部で特別軍事作戦を行うことを決めたと発表した。タス通信などロシアメディアが一斉に報じた。ロシアが支援する親ロシア派武装勢力が一部地域を占領するウクライナ東部の住民の保護が目的...

現段階での攻撃は、キエフなどの軍司令部が対象とみられますが、
Twitterなどでは、キエフで非常警報が鳴り響く様子の動画がアップされるなど、
自体は深刻さを増しています。

私自身、ロシアによるウクライナ侵攻の可能性は低いと考えていましたが、
そうした推測が覆される形となっています。

今後の影響については、上記でお伝えした、
エネルギー価格(天然ガス)と穀物のほか、
アルミニウムの価格高騰が懸念されます。

アルミニウムの国際価格は、2008年7月につけたこれまでの最高値を更新。
日本時間24日に、一時1トン3388㌦まで上昇しています。
アルミニウムは、電気が主原料と言っても良いかと思われますが、
天然ガスなどエネルギー価格の高騰を背景に欧州などの製錬所が減産しており、
供給懸念が本格化してきています。

アルミ国際価格、最高値更新 2008年以来13年半ぶり
アルミニウムの国際価格が約13年半ぶりに過去最高値を更新した。指標のロンドン金属取引所(LME)のアルミ3カ月先物は日本時間24日時点で一時1トン3388㌦まで上昇。2008年7月に付けたこれまでの高値の3380.15㌦を上回った。天然ガスなどエネルギー価格の高騰を背景に欧州などの製錬所が減産。ウクライナ情勢の緊迫化も...

今後、さらにロシアとウクライナの戦争が激化した場合、
エネルギー高の長期的な継続と、原材料の不足、また場合によっては、
輸送網に大きな混乱が生じる可能性があります。

自社にとって、今後の影響を現段階で精査しておく必要がありそうです。
仕入先のさらに先の仕入先の情報なども調査しておく意識が必要かもしれません。

在庫の積み増しについては、様々なご意見があるところかと思いますが、
影響度と深刻度を鑑みて、1~2年ほどの視野で、
今回は思い切った対応をしておいたほうが良いかもしれません。

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