現在、多くの企業で、
新規事業創出のために「ステージゲート法」が導入されています。
「ステージゲート法」はある一定以上の規模の企業で、特に研究開発の場面で、
新規事業をマネジメントする手法としては、非常に有効で、
成果につなげている企業も多いかと思います。
しかし、「実際の運用に苦労している」、あるいは「なかなか新規事業に結びつかない」
というケースも少なくありません。
「ステージゲート法」の思想について、曲解をしてしまうと、
表面的には、同じプロセスを歩んでいても結果が全く伴わない
ということになってしまうことが原因です。
今回と次回の2回にわたり「ステージゲート法」を成功させるポイントについて、
解説していきます。
ステージゲート法が開発された背景
ステージゲート法は、1980年代にカナダの
ロバート・クーパー教授が開発したテーママネジメントの方法で、
技術開発のテーマを合理的、効率的に選択していくというものです。
ステージゲート法が開発された背景には、欧米企業が日本企業と激し競争があり、
日本企業を研究した成果のひとつだと言われています。
現在もアメリカの8割ほどの企業が
「ステージゲート法」を導入していると言われています。
1980年代というと、欧米企業の製品や技術を、
日本企業が取り入れて、さらに安価、高品質なものを提供することにより、
市場を席巻した時代です。
(1979年には、社会学者エズラ・ヴォーゲルが
『ジャパン・アズ・ナンバーワン』という書籍を発表し、
注目を集めましたが日本がグローバル市場で存在感を示した時代でした。)
ここから分かることは、1980年代に欧米各国において
低価格・高品質の製品を提供する日本企業とは異なる
新しい価値の創出につながる「イノベーションの」の重要性が認識され、
その対応方法としてステージゲート法が開発されたということです。
現在、日本企業は
安価、品質の面では、アジア各国に猛追されており、
かつて得意としていた強みで、勝負し続けることができなくなっています。
日本企業に猛追された欧米企業と同じ状況ともいえますので、
ステージゲート法を多くの日本企業が導入したというのも納得できるところです。
ステージゲート法の概要
ステージテート法は、基本的に以下の流れで進めます。
「計画確認」段階といった「ステージ」を設定する。
次のステージに移行する際に、「評価」(ゲートを設ける)を行う。
そこで合格したテーマが、次のステージに進むことができる。
「ゲート」をくぐれない場合は、改善、保留、もしくは却下とする。
これにより合理的で、事業性の高いテーマを選択につなげる。
イメージとしては、左から右へステージが進み、
テーマの数が漏斗の形のように、ステージが進むほど、数が絞られます。
「ステージ」の設定や、「ゲート」での評価項目については、
基本項目はありますが、自社の実情に合わせて変えていく形です。
「ステージゲート法」を成功させるための基本的な設計思想
「ステージゲート法」は、上記の基本的な進め方で行うとともに、
基本的な設計思想として、次のポイントが前提となっていることを認識しておくことが重要です。
提案当初段階では、とにかく多くのテーマ提案を行ってもらう。
その分のリソースを、有力なテーマに投入する。
これにより開発期待値を高めることが可能となる。
判断基準が共有されることで、そのゲートを通過するための課題を明確にする。
課題を明確にすることにより改善できるものは対応をし、成功確率を高める。
提案者の課題理解、納得感にもつながる。
意識して設計、評価を行う。
ステージごとに進捗していけば有力なテーマは残る仕組みとなっている。
(たとえば、アイデア段階で「儲けはいくらだ?」と問われて、
答えられなかったために、テーマが有望であってもストップしてしまう
といったことにはなりにくい設計となっている)
各「ステージ」や「ゲート」の設定について、
各社の実情に合わせて設けることになりますが、
その際に、こちらの基本的な設計思想を踏まえた上で設定することが重要です。
まとめ
「ステージゲート法」は、研究開発の場面での
テーママネジメント手法としては、効果の高い手法です。
今回は「ステージゲート法」の基本的なことをお話ししましたが、
次回の「パート2」で、
運用の際に課題となる点についてお話しするとともに、
具体的な対策についても述べたいと思います。
本日も最後までお読みいただきましてありがとうございました。
補足
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