M&Aを成功させるためのポイントと失敗の要因となる心理的背景

お寿司 M&A

各社の中期経営計画において、
「新しい成長の柱」として、新規事業について明記されることが増えてきています。

このなかの新規事業は「M&Aも含む」と注意書きで付記されていることが多く、
M&Aも含めて、新規事業やイノベーションを考えることが一般的になってきました。

しかし、M&Aは通常の事業とは異なる対応が必要となるため、
プロセスを進めることに手一杯となってしまい、目的が希薄化し、
結果的に買収そのものが目的となってしまうケースが多々あります。

そのため、M&Aの本来の目的を見失い、失敗してしまうことにつながっています。

今回はM&Aの基本をポイントについて解説しながら、失敗を防ぐには、
どのようにすれば良いかを説明していきます。

経営手法として一般的となったM&A

M&Aは、ここ10年、件数・金額ともに右肩上がりで成長を続けている分野です。

「経営手法のひとつ」として定着した感もあり、M&Aは珍しいものではなくなりました。

一方で、当初想定していたシナジー効果を実現することを「成功」と定義すると、
成功率は、10年前と比べても低いままで留まっており、
買収後、客観的に「成功」と認められる案件は、全体の2割程度というのが実情です。

失敗する要因のうち、最も大きいのが、
当初の目的を見失ってしまう、あるいはそもそも目的意識が希薄でM&Aに臨んでしまい
買収後の成果よりも、買収することそのものが目的化してしまうというのがあります。

回転寿司とM&A

M&Aを「回転寿司」に例えてみると、
失敗の大きな原因となる心理的な側面の本質が見えてきます。

「回転寿司」にはじめて入った時は、回って出てくるお寿司は「真新しく」
目の前を流れるお寿司のお皿を端から取ってしまった経験はないでしょうか

しかし、2回、3回と通ううちに、自分が好きねネタは何かを意識するようになり、
回っていたとしても、鮮度の問題から、職人さんに「タイをください」などと
注文するようになったという方も多いかと思います。

このはじめて入った「回転寿司」の感覚が、M&Aの失敗につながる
心理的な側面の大きなヒントとなりますので、次の章で詳しく見ていきます。

M&Aは非日常

多くの日本の企業にとっては、M&Aは「非日常」です。

はじめて回転寿司屋に入ったときと同じように、
M&Aのプロセスそものが「真新しい」もの、
あるいは慣れていないもの、やはらくてはいけないことが非常に多い
と感じられます。

また、お寿司(M&A案件)が目の前を流れると
「取らなくてはいけない」、
あるいは他の人に取られるまでに「すぐに取りたい」と思うかもしれません。

しかし、そこで取ろうとしているお寿司は

・「実は何周もレーンを回っている」
 →買い手がいない案件・「誰も取る人がいない」

・買い手がいない案件・乾燥してしまったお寿司に霧吹きで水がかけられている
 →売れない案件のために悪い情報が巧妙に隠されている

といったものかもしれません。それ以前に、

・回ってきたお寿司は本当に食べたいものか?
 →自社にとってこの会社を買収することが必要かどうか

を冷静に判断する必要があります。

失敗に至るM&Aにのパターン

M&Aが失敗してしまう多くのパターンの流れとして、

「○○社が売却したいという情報があった」
 →「こうした機会は二度とないから、この会社を買収したい」
 →買うことが目的となってしまった。

と目の前に流れてきたお寿司を取ってしまうような感覚で
M&Aが行われてしまうことがあります。

買うことが目的となってしまった場合、たとえば買収の競合が存在すると、
値段も釣り上がっていきますので、当初のシナジー想定を越えてしまうこともあり、
それでもディールを成立させるために、無理にシナジーを計上するということにまで
つながってしまいます。

M&Aを検討する際には、たとえば次のような目的意識が重要となります。

(1)自社にとって、特定の領域を補強したい、あるいは○○の技術を補強したい。
(2)そのためには○○社を買収することが考えられる。
(3)そこでM&Aを検討する。

こうした目的意識が明確になっていれば、
自社にとってそのM&Aがどの程度の価値を持つものなのか、
その値段以上になってしまえば立ち止まって考えるということにもつながります。

目的意識を忘れないために効果のある方法として、アナログですが、
どこか見える場所に、「このディールの目的は○○○」というのを
貼っておくというのがあります。

M&Aの非日常性から、ふと離れて現状を考える瞬間につながるので、
本来の目的から離れることなく冷静に進めることができるようになります。

まとめ

新規事業やイノベーションにつなげるために、
M&Aも含めて検討することが一般的になっています。

M&Aは非日常の業務であるため、不慣れで忙しいプロセスを進めるなかで、
どうしても目的意識が見失いがちになってしまいます。それが失敗につながります。

M&Aのプロセスをかなり進めた段階で、
ふと冷静になって、買収後のシナジーが達成できないのではないか、
と思う瞬間がありますが、これまでのメンバーの苦労がまったくの水の泡と
なってしまうと思うと、そうした気付きを意識的に無視してしまうということも
あるようです。

心の声が聞こえてきたら、このM&Aの目的は何であるのかに立ち返り、
場合によっては、ディールを中止するということも含めて、
検討することが、結果的にM&Aでの巨額のマイナスを防ぐことになります。

目的意識をはっきりさせておき、M&Aを自社の成長戦略として
活用していきたいものです。

最期までお読みいただきましてありがとうございました。

参考となる記事

欧米企業がM&Aに対してどういった意識を持っているのかにつきまして、
下記の記事をご参考いただければ幸いです。

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