「もの不足」の兆候は、どこから見えてくるか

経済動向

ロシア・ウクライナ問題が長期化の様相を呈し、終息の兆しが見えません。

このところメディアでは、状況が報道されてはいるものの、
一時期と比べると報道の優先順位が下がっているようにも思えます。

しかし、ロシア・ウクライナ問題に端を発するエネルギー価格の高騰や食料価格の高騰が、
一段と深刻になっていることは多くの方が、日々の生活のなかで体感していることでしょう。

エネルギー問題については、
ロシアからの天然ガスの供給に頼っていた欧州が深刻な状況となっています。

ベルギーのエネルギー相は、
「欧州連合がこの冬、エネルギー価格の高騰に悩まされる」
と指摘したことをBBCが報道しています。

このなかで「恐ろしい冬」という表現が使われており、
単に電気代やガス代が高くなるだけではなく、
社会生活を脅かすほどのエネルギー不足が起きることを予感させる内容となっています。

EUで「恐ろしい冬」への懸念広がる ガス価格の高騰で - BBCニュース
天然ガス価格の高騰に対する深刻な危機感が、欧州連合(EU)で広がっている。無策なら、EU各国は今後「5年から10年」、「恐ろしい」冬を迎えることになると、ベルギーのエネルギー相は警告している。

欧州の天然ガス価格は急激に値上がりしていますが、
米国や日本も含めて世界的に天然ガスの価格が上昇し、高止まりの傾向が続いています。

天然ガス価格の推移 - 世界経済のネタ帳
天然ガス価格の推移をグラフ及び時系列表にて掲載しています。

天然ガスの高騰は、エネルギー価格だけではなく、
農業に必要となる「窒素肥料」の値上がりにもつながっています。
「窒素肥料」を作るために、現在天然ガスが必要だからです。

窒素肥料の不足の影響は
リンやカリといった他の肥料の価格にも波及し、肥料価格全体が世界的に値上がりをしています。

世界的な肥料不足による農業危機が、日本にも迫っている
現在、グローバル規模で食糧不足が発生する可能性が 高くなっています。 付随して日本の食料自給率が低い点などについてもこれまで 本ブログでは述べてきました。 2022年5月19日段階において、 国連のグテーレス事務総長が、 ロシアのウクライナ...

それから、この半年ほどの間で、小麦を中心とした穀物価格と植物油価格が上昇しています。

ロシアとウクライナが、世界有数の小麦の生産国であり、
ウクライナが世界有数のひまわり油の輸出国であることからの影響です。

(ひまわり油不足により、植物油の総量が減少することで、
 パーム油などの他の植物油の高騰につながっています)

穀物類、植物油に加えて、肥料価格が高騰しており、食料全体が高騰していますが、
現状を見ると「高騰」という表現の域を超えて、「危機」の状況と言えそうです。

下記NHKでも報道されているように
国連のWFP=世界食糧計画の担当者は
「来年は世界の人口養う十分な食べ物ない可能性」
と述べており、深刻な状況が見えてきました。

エラー|NHK NEWS WEB

 

食料価格高騰についてては、下記にまとめました。

グローバルで甚大な食糧危機が生じる可能性が高い。各家庭でも備えが必要
2022年の2月中旬頃まで、本ブログでは 新型コロナウイルスの影響により 物流が滞り、エネルギー、素材、部品の価格が 上がっていることについてクローズアップしてきました。 ところが、2月24日起きた ロシア・ウクライナ問題の影響により、 さ...
食糧危機の広がりと日本における自給率の低さの問題、そして備え
ロシア・ウクライナ問題の長期化しています。 それのより、世界的に食料価格の高騰が続いています。 本ブログでは、食料価格高騰について述べてきました。 振り返りとなりますが、食料価格の高騰の背景については ロシアとウクライナの両国が、世界有数の...

 

世界的な状況から食糧危機が今後大きな問題になる可能性が高く、
すでに、そのサインが出ていると言っても良さそうです。

https://sonaeru-san.com/2022/02/01/%E9%A3%9F%E7%B3%A7%E4%B8%8D%E8%B6%B3%E3%81%8C%E3%81%99%E3%81%A7%E3%81%AB%E5%88%B0%E6%9D%A5%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%B3%EF%BC%91%EF%BC%92/

ところで、上記記事のなかのコメント欄に
「洗剤類が減ってきたら物不足の傾向がみられるらしいです。」
という指摘があったことが記載されています。

洗剤類が減るともの不足につながることが、わたしのなかではつながらなかったため、
仮説として、論拠を考えていくことにしました。

今後仮に、もの不足が起こるとして、
その初動がつかめれば、対応もしやすくなるかもしれません。

前置きが長くなりましたが、今回は
この記事から「物不足」と「洗剤類の不足」がどのように関係するのかについてまとめました。

最初に「洗剤」について説明します。

洗剤といわれると、多くの方は
「食器洗い洗剤」や「洗濯用洗剤」「お風呂用洗剤」などを
イメージするかと思います。

これらの洗剤類については、
「合成洗剤」と「石けん」の2つに分けることができ、原料に以下のような違いがあります。

●合成洗剤:「石油」や天然油脂が原料
●石けん:天然油脂(「パーム油」などの植物性油、牛脂など動物性油)または脂肪酸が原料

ここから分かることは、合成洗剤でも石けんでも
「石油」や「パーム油」が原料として使われているということです。

先に述べたように、現在、天然ガス価格が高騰していますが、
同時に石油価格も高騰しています。

併せて、植物油価格の高騰についても触れていますが、
特にパーム油の価格が高騰しているのです。

「洗剤」のメインとなる原料が高騰していると言えるかと思います。

少し視点を変えたいのですが、
もし皆さんが、今後多くの「もの」の値段が上がることが
明らかとなった場合、どのようなものを買いだめするでしょうか。

(たとえば、「タバコ」は、値上がりが明らかになると、買いだめの駆け込み需要が発生します)

このことを考える際に、ヒントにしたいのが、
1973年(昭和48年)10月に起きた「第1次オイルショック」の際の消費者の行動です。

よく知られているように、この時、トイレットペーパーが
品薄となり、社会的な混乱が生じました。

後に、トイレットペーパーがなくなる
(石油価格高騰で、トイレットペーパーの生産量が減少する)
というのは間違いであったことが分かりますが、
オイルショックではほかに下記商品が小売店の棚から姿を消しました。

・トイレットペーパー
・「洗剤」
・インスタントラーメン
・砂糖

【日本のエネルギー、150年の歴史④】2度のオイルショックを経て、エネルギー政策の見直しが進む
今年は明治元年から150年。日本のエネルギー史をシリーズで振り返る第4回は、オイルショックによるエネルギー政策変化の時代1970~1980年代をたどります。

それから、米国におけるパンデミック初期の消費者行動もにヒントになりそうです。

顧客からの需要があったが、商品が入荷できず販売ができなかったために
機会喪失につながった商品として、次のものがあります。(上から機会損失順)

1)トイレットペーパー
2)ペーパータオル
3)多目的クリーナー
4)ドッグフード、キャットフード、
5)シリアル
6)「洗濯洗剤、石けん・ボディーソープ」
7)冷凍ピザ、スープ

米小売業者を悩ます「品切れ」 ペーパー類など巨額の売り上げ喪失 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)
小売業界や製造業界は在庫や保管経費の無駄を省くため、「ジャスト・イン・タイム」方式のサプライチェーンを構築する方向に動いてきた。だが、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)によって一部の商品の需要が急増するなか、このやり方は...

これらから見えてくるのは、消費者心理として、値上げが明らかとなった場合、
・日々の生活で必要なもので、
・常温での保管ができて、
・消費期限がない、あるいは長いものが、
買いだめにつながりやすいことです。

洗剤は消費期限がなく、生活必需品でもあることから、
買いだめにつながりやすい傾向があると言えそうです。

もう一度、「洗剤」という商品について考えます。

・主な原材料が「石油」
・消費期限なく、値上や品不足の際に買いだめ行動が起こりやすい

また、洗剤は平時において需要が大きく変動する商品ではないと考えられ、
生産体制についても、安定的な一定量を供給することが第一にされていると考えられます。

そのため、生産現場において急な増産は前提となっておらず、
バッファとしては卸や小売での在庫対応が中心となると考えられます。

こうしたことから洗剤類が店舗の棚から少なくなった場合、
1)「石油」に関する大きな問題が起きているケースと
2)なんらかの理由で「買いだめ行動」が起きているケースが想定されます。

特に、1)と2)が相互に影響した場合に大きな影響となりそうです。

ここから先は、仮説の記述となります。

1)の場合で、深刻な問題となった場合、
現代人の日常生活を支える石油関連製品として、プラスチック、合成繊維、合成ゴム
などの他の製品の、さらなる値上がりや本格的な品不足が、
その前後に起こる可能性が高いと言えそうです。

その前に自動車用のガソリン価格が高騰するのではないか
とお考えの方もいるかと思います。

確かにそうなのですが、
油井から採取されたままの石油は「原油」を蒸留して、「ナフサ」というものを取り出し、
多くの場合、それが石油製品の原料となるようです。

その「ナフサ」をさらに手を加えることで「ガソリン」
となるようですので、いずれかにタイムラグが生じると考えられます。

今回の結論は、
洗剤類の不足が「もの不足」の初期シグナルになるかどうかについては、
他製品の在庫料、原材料の在庫料なども影響するため、
断定はできないものの、
シグナルとなる可能性はあるというものとなります。

もの不足が日本で本格化するかについては、
個人的には現状では考えにくいと思っています。

しかし、このところ、何がおきるか分からず、
過去の延長からの推測が難しい時代となっています。

そのため、生活に影響がある問題の可能性があれば、
それに対して、日常生活に支障のない範囲で
準備や対応をしていくほうが良さそうです。

直近で必要になりそうなもの、買い替えが必要なものがあれば、
このタイミングで対応を検討しても良いかも知れません。

ところで、新米の季節となり、令和4年のお米が市場に出回っています。

長期保存米といっても、産地や銘柄で味が異なりますので、
10キロ程度のロットで、ご自身に合うものを探してみるのも良いかも知れません。

「令和4年」「長期保存」などで検索し、是非色々とお探しになってください。

下記はイメージを持っていただくためのご参考のための記載となります。

 

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