「新規事業、イノベーション」のための企業の施策と事例:週一回出勤禁止

チェス盤での戦略 人材育成

多くの企業では、新規事業について、研究開発担当者の方が中心になって、
取り組むことが行われていると思います。

その際に、企業が、新規事業やイノベーティブな取り組みについて、
促す施策はどのようなものが有効でしょうか。

今回ご紹介するのは、「週に一回出社を禁止にした」という
大胆な施策を行った事例です。

(追記)コロナウイルスの影響により、
テレワークでの自宅勤務が本格化してきました。
下記の取り組みは、
自宅勤務の状況においてもイノベーションを探索する際の
ヒントにしていただければと思います。

週に一回出社を禁止にしたらどうなったか

大胆な施策を展開した企業があります。
中央研究所について「週に一度、出社禁止にする」という施策です。

なお、出社こそ禁止していますが、
「休み」ではないこともポイントです。

施策を展開した企業側にとっても「大きな賭け」でした。
結果だけ申しますと、このケースでは「大成功」となりました。

この企業では、研究者の多くが「自分の研究テーマを進めること」が
自分の仕事という認識を持っていました。

研究が目的化してしまうと、研究のための研究が行われてしまいます。
本来の企業の目的である「顧客に価値を届けること」の意識が
希薄になってしまうのです。

そのため、中央研究所から事業化されるテーマが
少なくなるという課題に悩んでいました。

こうした状況を打破したいと
「週一回の出社禁止」という施策を打ち出しました。

施策展開に際して、経営陣からも多くの反対意見が出されたそうです。

反対意見は

・「休みと勘違いして、遊びに行ったりするのではないか」
・「結局、一日、会社のために働いていもらう時間が無駄になってしまう」

といった「もっとも」なものでした。

そうした反対意見を押し切って、CTOが実施した施策です。

三ヶ月ほどは全く効果がありませんでしたが、半年ほどしてから
大きく分けて2つの効果が見えてきました。

大学の研究室を訪ねた社員の気づき

研究所への出社を禁止された研究所員たちは非常に困惑します。

映画館に行ったり、パチンコ屋にいく社員もいたそうですが毎週は続きません。
多くの社員が「何をするべきだろうか」と真剣に悩みました。

これまで研究室にこもって研究をしていたため、
行くところが思いつかないのです。

それで、どうしたかというと、
自分がもともと所属していた大学の研究室に行くようになりました。

一度や二度であれば、研究室も喜んで受け入れてくれます。

しかし、それが続くと、だんだんと迷惑がられるようになります。

そしてまた考えます。「迷惑がられないためにはどうしたらいいか」。

答えは「お土産を持っていく」ことです。
お土産といっても、お菓子といった類のもではありません。

「自分の研究はこうしたことを行っていて、現在ここまで進んでいる。
課題はこれで、こうしたいと思っている」といった
話や資料がお土産です。

(もちろん、機密情報には注意することも心がけたそうです)

すると、教授や研究室の学生たちのの反応も変わります。
お土産情報をきっかけに、新しいアイデアや知見を寄せてくれるようになりました。

そこで得た知見を、日々の中央研究所での研究に活かすというサイクルが生まれます。

さらに、外出することに慣れてきた研究者たちは、
同級生などが行っている企業に訪問したりするようになります。

そこでも、「お土産」の効果があり、
持っていった資料以上の知見を得ることにつながりました。

また、外出することにも「慣れ」るといった副次効果もあり、
営業部から、外部への説明への同行についても
積極的に参加をするようになったことで、
営業面でもプラスの効果を
生み出すことにつながりました。

家にいた社員が得た気づき

研究者のなかには、行くところもなく、
「外に出ればお金もかかるから……」と、
自宅で過ごす人もいたそうです。

同社の研究者は男性が多かったのですが、
毎週、家でごろごろしているわけにはいきません。

そのうちに、奥様から家事の手伝いをして欲しいと頼まれるようになります。

そこで洗濯などの家事を手伝うようになりました。

当時の洗濯機は、底にある羽を回転させて、
かくはんした水流で洗濯物を洗う方式が主流でした。

この方式の洗濯機は衣類はからんでしまうという問題がありました。
衣類同士がこすれるため、布にもやさしくはありませんでした。

これまで洗濯などしたことがなかったその研究者は、
はじめて「衣類がからむ」という課題に気づきます。

実はその企業では、洗濯機も製造、販売をしていたのです。

この気づきををきっかけに、洗濯機の機能を改良するプロジェクトが発足します。

そして、現状の課題やあるべき姿を論点として整理し、
改めて技術での対応を検討し、研究を続けます。

その結果、穴の空いたドラムを使い、水流が衣類の間を抜ける構造を思いつきます。
現在、主流となっている洗濯機の構造です。

洗濯機としての機能も大きく向上し、白物家電業界でも
大きく注目された事例です。

まとめ

企業が、新規事業やイノベーションを生み出すために行った
「週一回出社禁止」という大胆なものを紹介しました。

新規事業やイノベーションは、
「考えろ」と社名が下ったからといって、できる性質のものではありません。

ここでのヒントは、担当者が自発的になにかの気づきを得るためには
会社として何をしたら良いかを考え施策に反映すると
成功確率が上がるということです。

一見、遠回りでも、間接的な施策のほうが、
新規事業、イノベーションには適しているとも言えそうです。

本日も最期までお読みいただきましてありがとうございました。

参考となる書籍のご紹介

MOTの視点での、技術人材育成については
イノベーション人材がリードする 日本企業の「真」成長戦略
が参考となります。

著者の古田健二氏は、技術系コンサルティング会社として有名な
アーサー・D・リトルの出身で、SRIコンサルティングの初代代表取締役も
務めており、技術経営と技術人材育成について鋭い視点を持っています。

古田氏は、企業における「価値創造型事業の強化」の重要性を
説いており、イノベーションなくしては企業の持続的発展はないという考え方で、
具体的な施策についても本書では様々言及していますので、
是非ご一読ください。

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