毎年12月に入りますと、「来年はこうなる!」といった書籍や、
予測データが各シンクタンクから出されています。
たとえば、
「2023年 日本はこうなる」
三菱UFJリサーチ&コンサルティング (編集)
では、現在のデータの延長線として今後どのような状況となるかを
論理的に推測しています。
本ブログでは昨年2022年1月18日に下記の記事を掲載しました。
多くの専門家が起こる可能性が高いと同意した「2022年のグローバル予測」
この記事のなかでは地政学的な緊張が走りそうな国として、
イラン、ウクライナ、台湾の3つが挙げていますが、
可能性の域を出ない内容となっており、
残念ながら、現在のウクライナの状態を予見させるものではありませんでした。
ところでブルームバーグの下記の記事では、
金融系にクローズアップして、2023年を予測することの難しさについて述べられています。
このなかで印象的な内容として、
「原油相場について、たとえば
2021年の年末と2022年の年末が同水準となる
と予想していたとすると、結果的には正しかったこととなるが、
しかし、そのようになった背景として、
「ロシアのウクライナ侵攻」と「中国の厳格な新型コロナウイルス対策」
という2つの予想されることがなかった出来事が
衝突して影響力を打ち消しあった結果がある」
という部分があります。
数字的には結果的に正しくとも、
起こり得るこうした事態を織り込んでいないため、
波乱の1年に対する備えとなる情報であったとは言えないということです。
しかし、明確な予測にはつながらないとしても、
複数のシンクタンクがまとめた情報を俯瞰することで、
見えてくるものもあるようにも考えています。
前置きが長くなりましたが、
今回は、母体となる業界が異なる3つの予測の概観から見えてくる
2023年の方向性をまとめました。
【参考とした書籍、レポート】
「2023年 日本はこうなる」
三菱UFJリサーチ&コンサルティング (編集)
ニッセイ基礎研究所
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=73142?site=nli
三井物産戦略研究所
https://www.mitsui.com/mgssi/ja/report/detail/__icsFiles/afieldfile/2022/12/09/221208.pdf
母体の異なる企業のレポートを選んだ理由は、
切り口が異なるなかで、共通する大きな流れを把握したい
という考えからとなります
それらをまとめると下記のようになります。
【経済状況】
・世界経済は景気減速は避けられない。
2023年の世界の実質GDP成長率は、IMFの予測によれば 2.7%の見通し。
コロナ禍前の 2019 年の 2.8%に届かない
・米国の実質 GDP 成長率について、
22 年は 1.6%、23 年は 1.0%と低成長が予想される。
個人消費が弱く、大企業の設備投資も期待できないため低成長の見込み。
・欧州は全体的に景気減速が色濃い。エネルギー価格の高騰が経済活動を抑制しており、
欧州中央銀行の利上げ継続も景気の下押しとなっている。
なかでもドイツが厳しい。ロシア天然ガスの依存度が高かったことと、インフレ率が
7.2%と他国よりも高い水準となっているため。
・中国経済はコロナ対策緩和により飲食・観光サービス等の回復が見込め徐々に持ち直すものの、
輸出は世界経済減速を背景に欧米向けを中心に鈍化。
総合的には景気回復ペースは緩やかにとどまる。
・日本ではすでに徴候があるようにデフレからインフレとなる。
しかし、所得が伸びる可能性は低く実質所得は一段低くなる。
欧米が行ったようなインフレ抑制策が展開され、景気の減速が明確となる。
ポストコロナで、インバウンド系・交通系・旅行系が
持ち直す可能性があるものの、回復速度は緩やか。
(←かつてのインバウンド特需につながるような急回復は期待できない)
すでに動きがあるが半導体、情報通信機器、医薬品など戦略的品目については、
国内回帰の流れとなる。
【エネルギー関連】
・欧州ではエネルギー需要が逼迫し、エネルギー価格が高騰。
しかしSDGs/ESGの流れが続いており技術者不足などの社会課題のために、
実際の需要を再生ネルギーでカバーできる状況はほど遠い。
そのため、生活コストが上昇し、市民の不満が大きく高まる可能性。
市民の不満を背景に右翼政党が台頭し、
移民排除やブロック経済のような自国優先の政策が展開される可能性も。
【ウクライナ関係】
・2023年も露宇問題は続く。
最も早い収束を見込むウクライナ軍幹部による見通しでも
「2023年夏まで」とされる。
また、ロシアによる核兵器使用や
偶発的事故による NATO との交戦といったエスカレーションのリスクも。
・このことからも、世界的なエネルギーコストの高騰終息は
2023年の少なくとも夏以降となると推測される。
・ロシア、ウクライナ産の穀物やひまわり油などの
世界の食糧事情に影響を与える製品については、
侵攻の影響をダイレクトに受けていることのほか、
それぞれの交渉カードとなってしまっており、
以前のような価格帯で小麦、植物油が手に入る状況の実現は
2023年は難しい可能性が高い。
現状の延長線からの予測では、明るい兆しが見えにくい状況です。
日本においては、各種製品の値上げの報道が相次いでおり、
その背景には、企業物価指数と消費者物価指数が数字的に差があることを
説明しました。
これに加えて、先日日銀が事実上の利上げを行いましたが、
景気後退のきっかけとなる可能性が高いことも見えてきました。
2月3月から値上げする製品として主要なもののお値段を
リンク先でご紹介いたしますので、
こうした価格を参考にしながら、
余裕があれば、値上げや不況の嵐に備えておくのも良いかもしれません。