未来洞察の手法としての「スキャニング」の基本(2)~スキャニングの具体的進め方~

スキャニング・スキャニングマテリアル

前回、「スキャニング」がどのようなものか、
基本的な考え方について解説いたしました。

未来洞察の手法としての「スキャニング」の基本(1)
多くの企業では、将来的な変化を推測したり、 確からしい事実に基づいて、 自社の戦略や、新規事業のテーマ策定を行っています。 こうした将来的な変化の予測については、 メディアや専門家が「こうなるであろう」と 解説したものを活用することも多いか...

今回は実際に「スキャニング」をどのように
進めていくかについて解説いたします。

スキャニングの概要

おさらいとなりますが、「スキャニング」は
フォーサイト(未来洞察)において有力な手法として
SRIが開発した手法です。

開発のきっかけは、研究に行き詰まっていた
専門家が他分野の論文のアブストラクト(概要)だけを
「斜め読み」したときに「気づき」や「ひらめき」
につながったという体験からということでした。

専門外の情報やマイナーな情報(スキャニングマテリアル)
を集めて、自分なりの気づきも記載し、
内容を頭のなかで整理していくことで、
気づきにつなげていきます。

一人でも効果がありますが、
同じ部署の方など4~5名で行うのがより効果があります。

視点が広がり、まとめていく段階でも方向性を
共有できるからです。

非連続な未来を観る力を高め、不確実で非連続な「未来の芽」を
「広く浅く」観る手法がスキャニングと言えます。

スキャニングの進め方

1 情報収集

 ネットや新聞、雑誌などのメディア記事から
「イノベーションにつながりそうだ」「非連続的な未来の予感がある」
「この先にさらなる発展が感じられる」「なんとなく気になる」
といったように感じたものを収集していきます。

ここでのポイントは、
対象となる記事は、世界中で分野を問わずに収集していくことです。

特に、ご自身の専門分野以外の分野を意識されると、
新しい視点や気づきにつながります。

2 記事を整理し「スキャニングマテリアル」に仕上げる

記事を200~400文字程度で要約し、
コメント(どうしてこの記事に未来を感じたのか)を加えます。

これを「スキャニングマテリアル」と称します。

要約は、元の記事を理解につながります。
またコメントは、後から読んだ際に、
当時の社会状況を踏まえたご自身のスタンスが見えることがあり、
大きな気付きにつながります。

ここで記載したコメントは、
記載する方による個性が反映され、
の活用で核となります。

3 スキャニングマテリアルの小クラスター化

スキャニングマテリアルが100~150程度集まった段階で、
内容が似ているものを「小クラスター」化していきます。

「小クラスター」はスキャニングマテリアル
2~5個程度でまとめるイメージです。

ここでまとめた「小クラスター」に
「小クラスター名(タイトル)」を貼ります。

たまに、どこにも属さない
「一匹狼」が出てくることがありますが、
これは、そのまま1つで「小クラスター名(タイトル)」を貼ります。

4 スキャニングマテリアルの大クラスター化

小クラスターが30~80程度できあがりましたら、
「小クラスター名」で、まとめていきます。

ここではやや大きめに3~15をまとめ
「大クラスター」として「「大クラスター名(タイトル)」を貼ります。

「小クラスター化」の際には「一匹狼」だったものが、
ここでは、どこかに所属させることができる場合は、
まとめていきます。

最後まで「一匹狼」の場合、それはそれで構いません。

5 大クラスターから「社会変化仮説」を作成する

大クラスターのタイトルを、
各スキャニングマテリアルの内容で補足する形で
「社会変化仮説」を作ります。

例えば、スキャニングを推進している
日本総研の例では下記のような紹介がありますので、
ご参考ください。

スキャニングマテリアル(タイトルのみ)

• 自給自足のEVコミュニティバス
• 自転車専用ハイウェイ計画
• レンタル・セグウェイで観光
• 認知症患者が徘徊できる街づくり

想定外な社会変化仮説

「ゆっくり徘徊」奨励タウン
• 高齢者の健康づくりや買い物などの自発的な外出を支援することが、
 街づくりの重要課題になってくる(コンパクトシティ政策の一環)。
• 特に自動車依存の高い地方都市においては、高速移動重視の街から
 低速移動重視の街へと交通インフラのあり方がシフトするだろう。
 例えば、時速20キロ未満専用の免許・乗り物・道路・駐車場・特典、
 あるいは高齢者の外出行動に寄り添う信号や横断歩道、乗り物、ナビなど。
• また、高齢者のみならずスローライフを志向する人と、
 それを支援する産業が自動車業界以外からも参入してくるかもしれない。
 たとえば、情報通信、観光、商業施設、スポーツ、ファッション、美容、医療、福祉、保険、金融など。

未来の芽を掴み取る“スキャニング”|日本総研
日本総合研究所は、システムインテグレーション・コンサルティング・シンクタンクの3つの機能を有する総合情報サービス企業です。

「社会変化仮説」と自社の強みを結びつけテーマとする

このようにしてできた「社会変化仮説」について、
この変化で生じる課題を、自社の強みで解決することを考え、
そこを研究開発や新規事業のテーマとして検討していきます。

こうしたことを、数ヶ月に一度行うことで
ユニークなテーマを見つけ出すことができます。

今後、本ブログでは、
「スキャニングマテリアル」も掲載していきますので、
よろしければご参考いただければ幸いです。

本日も最後までお読みいただきありがとうございました。

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