既存事業で安定的な成長を持続している企業の場合、
新規事業やイノベーションの経営的な重要度が低いことがあります。
新規事業やイノベーションは、
成功確率が低いため、あえて挑戦する必要はないという考えからです。
しかし、企業の持続的な存続を考える場合、
どういった業種、業態であっても
新規事業やイノベーションに取り組んでいくことが必要となります。
新規事業やイノベーションの必要性については、
生物の進化に関する仮説「赤の女王仮説」が非常に参考になります。
「赤の女王仮説」は、仮説ではあるものの、
ビジネスの分野でも納得させられる面が多々ありますので、
次の章から詳しく見ていきましょう。
「赤の女王仮説」とは
「赤の女王仮説」は、
1973年にアメリカの進化生物学者リー・ヴァン・ヴェーレンによって提唱されました。
「赤の女王」というのは、
ルイス・キャロルの小説『鏡の国のアリス』に登場する人物で、
ディズニーのアニメ映画でもご覧になった方も多いのではないでしょうか。
赤の女王は、独善的でわがままな人物として描かれていますが、
次の非常に印象的なセリフがあります。
(It takes all the running you can do, to keep in the same place.)」
このセリフからの発想で
進化生物学においては「種が生き残るためには進化し続けなければならない」ことを
「赤の女王仮説」として提唱されているのです。
ビジネスにおける「赤の女王仮説」
生物学は、抽象化して概念がしていきますと
ビジネスの世界との共通点も多々見えてきます。
ビジネスの分野で「赤の女王仮説」から、学ぶべきことは、
既存事業での成功体験を引きずり、同じ方法で事業展開を行っていると、
いつしか経営を取り巻く環境が大きく変化して、
同じ規模、ポジションを保てなくなるということです。
現状が維持できれば、成長せずとも構わないと考えたとしても、
その現状を維持するためには、
変化に対応することに力を注がなくてはいけません。
ここでのポイントは、「変化に対応する」ということです。
変化というのは、各社によって捉え方はさまざまなものとなりますが、
いずれにしても
変化に気づいたときに、対応をするという考え方ですと、
対応しきれない場合がでてきてしまいます。
そのため、常に変化を意識して事業を行うことが重要となり、
新規事業やイノベーションに日ごろから取り組んでいくことが、
解決策のひとつと言えると考えています。
老舗菓子補虎屋の事例
一見、変化が必要でない業態でも、
水面下では常に変化を志向している事例として、
老舗菓子補虎屋の取り組みをご紹介します。
虎屋は、室町時代に京都で創業され、皇室御用達の菓子補としても知られています。
480年以上の歴史があり、現在赤坂に本社がありますが、
東京に移ってきたのは明治時代とのことです。
虎屋の羊羹といえば、
和菓子店でもトップクラスのブランド力を持ち、
手土産としどなたにお渡ししても喜ばれるものではないでしょうか。
虎屋の羊羹は、いついただいても変わらずおいしいと感じますが、
この羊羹が実は時代の変化に合わせて味の調整が行われています。
顧客に「味が変わらない」と感じさせながらも、
変化に合わせて変えているという事実はとても大きな意味合いを持っています。
長い歴史のある企業の多くは、
取り組みを変化させることを無意識に拒みます。
前例を踏襲したほうが、人間は安全だと感じられるからです。
こうしたことを考えると、
虎屋の強みは羊羹の製法ではなく、
時代の変化に合わせて、自社の製品を変えられることを可能とした経営意識
ということになります。
変化を意識的に取り入れることは
経営戦略として大きな強みとなるということです。
まとめ
「赤の女王仮説」を通じて、
変化に取り組むことの重要性を取り上げてきました。
ちなみに、赤の女王は、
「その場にとどまるためには、全力で走り続けなければならない」
の次に、
「もし他の場所に行きたいのなら、二倍の速さで走らなくてはいけない」
と語っています。
新規事業やイノベーションは、
今いる場所から、他の場所に行くということかもしれません。
確かに、大変で二倍の速さで走る必要があるでしょう。
しかし、移動した先の場所にしか、
自社の継続的な存続はないのかもしれないのです。
どういった業態、業種であったも、
新規事業やイノベーションを日ごろから考え、取り組んでいくことが
企業の永続性のためにも必要だと言えるのではないでしょうか。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
補足
イノベーションの必要性につきましては、下記の記事も参考になるかと思いますので、
是非ご一読いただけますと幸いです。
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