連続的イノベーションを意識的に起こす:日本企業の強み「連続的イノベーション」を意識する

古い石の階段 イノベーション

イノベーションを大きく2つに分けると
「連続的イノベーション」と
「非連続的イノベーション」があります。

「連続的イノベーション」というのは、
既存の製品やサービス(とその背景)で改善や改良を加えるものとなります。

イメージとしては、階段を一段ずつ上るように
日々より良いものを目指していくというものです。

一方、
「非連続的イノベーション」というのは、
既存の枠組みに囚われず、新しい価値を提供するものとなります。

こちらのイメージとしては、
大きくジャンプするように、これまでに存在しなかった新しい製品やサービスが
登場するというものです。

(携帯電話が主流であった時代にiPhoneが登場したことが事例として挙げられます)

今回は「連続的イノベーション」についてクローズアップしていきます。

「連続的イノベーション」は日本企業の強みであり、
強みの源泉がどこから生じているのか意識することで、
さらに意識的に強化することが可能となるためです。

次の章から詳しく見ていきましょう。

連続的イノベーションとは

連続的イノベーションは、
日々行われる製品の製造や販売、サービス提供において、
その背景も含めて改善活動を行うというものです。

具体的な事業活動のなかでは、

(1)新しい生産方法の導入、改善
(2)新しい販売先の開拓
(3)新しい材料の供給源の開拓

といった活動が「連続的イノベーション」に該当します。

(1)新しい生産方式の導入、改善というのは、
生産性向上、スピードアップ、生産方式の改革などを指します。

こちらは次の章で具体的な事例をご紹介します。

(2)新しい販売先の開拓については、
たとえば、店舗だけで販売していたものをwebでも販売するといったような取り組みです。

(3)新しい原材料などの供給源の開拓については、
製品や原材料、素材などの新しい買い付け先を見つけるという取り組みです。

いずれについても、日本企業の現場では、日々行われていることだと思いますが、
こうした「連続的イノベーション」は日本企業の強みであり、
そうした活動を意識的に行うことが非常に重要だと考えています。

連続的イノベーションの具体例

具体的な例として、ある小規模食品工場の
「連続的イノベーション」の事例を見ていきます。

その食品工場は、コロッケなどの「揚げ物」を製造しており、
ベルトコンベア式で、衣を付けた材料が油を潜り、
完成した揚げ物が運ばれていくという仕組みとなっていました。

しかし、完成した揚げ物を受ける最後の受け皿の形状が、
ベルトコンベアよりも若干小さく、
50個に一度、受け皿から飛び出てしまうものがあり、
それを廃棄するということが長年続いていました。

50個に1つというと、それほど多くないように感じますが、
廃棄率に換算すると2パーセントとなり、高い数字であることが分かります。

ある現場のパートの方がこのことに気が付き、
受け皿を大きくしたところ、廃棄率がほぼ0パーセントとなりました。

「なんだ、そんなことか」と思われるかもしれませんが、
こうした改善の積み重ねが、大きな価値につながります。

ここでのポイントは、日本企業においては、
現場の方が、改善を行うことを極めて自然に行われている点です。

海外の企業では、
職務の範囲が決められている(あるいは決められていると信じている)ことが多いため、
「改善活動は自分の仕事ではない」と、多くの現場の方が捉えている傾向があります。

日本企業で、現場が自発的に「連続的イノベーション」が起こっていることは、
大きな強みと言えます。

日本企業が「連続的イノベーション」に成功するのは現場の意識が高いため

「連続的イノベーション」を積み重ねることによって、
より品質の高い製品やサービスを提供したり、
安価で案内すること、利益率を高めることなどが可能となります。

現場での「連続的イノベーション」が生まれる背景には、
日本企業の現場の従業員の方が、
こうした「連続的イノベーション」を「自分の仕事だ」と捉えているからだと言えます。

社内風土として、現場で気づいた課題については、
改善していくことが大切だという意識が浸透しています。

この強みを、さらに風土だけではなく、
仕組みとして強化していくという考え方があります。

ある企業では、正社員はもちろん、パートの方でも
「改善に関して提案」を行った場合は、
それが極めて些細なことであっても、報奨金を出すという仕組みを
取り入れて、「連続的イノベーション」を意識的に生み出しています。

製造ラインの改善、仕入先の見直し、販売ルート(webでの新規開拓)といった
「連続的イノベーション」が現場から生み出されることで、
意識的に好循環につながっているということでした。

現場の課題は、現場の方が気づくことがほとんどです。
こうした課題を日々、スムーズに解決することができることは非常に重要な経営課題だと言えます。

まとめ

「連続的イノベーション」は、地味な活動であるため、
大きくクローズアップされることはあまりありません。

しかし、日々の活動のなかで、
意識的に「連続的イノベーション」が起こせる企業と
そうでない企業では、年数が経つうちに大きな差が生じることは明白です。

多くの日本企業では、無意識的に「連続的イノベーション」が
現場から生み出されていますが、
この機会に、どういった「連続的イノベーション」が起こっているのかを把握し、
改めて意識的に起こす施策を検討されてみてはいかがでしょうか。

本日も最後までお読みいただきありがとうございました。

補足

イノベーションの本質的理解については下記の記事を是非ご参考ください。

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