現在、B2B企業の多くで、
マーケティング的な取り組みの一環として、
オープンイノベーション施設を開設しています。
オープンイノベーション施設では、
自社の製品や素材を陳列し、パネルの説明とともに
それらの特徴について顧客に理解してもらい、
触れてもらうなどの体験を通じてPRをしています。
製品や素材を手にとってもらうことで、
顧客の課題解決につながる可能性を探る
技術からのマーケティング活動の側面があります。
また、顧客との対話を通じて、市場の未決の課題について
見つけていくことも視野に入れています。
顧客側としても、その企業の製品や素材の特徴を知ることで、
自社の課題解決のヒントにつながります。
オープンイノベーション施設は、
開設企業側、訪問者側と双方にとってメリットのある
「共創の場」と言えるでしょう。
今回はオープンイノベーション施設について解説します。
オープンイノベーションとオープンイノベーション施設
「オープンイノベーション」は
ハーバード大学経営大学院の教授ヘンリー・チェスブロウ
によって提唱された概念です。
社外の技術や知見をうまく取り入れて、
企業でイノベーションを創出し、さらに
社外でも展開するモデルと説明されています。
社内の限られたリソースだけではなく、
グローバル規模で優秀な人材の知見、アイデア、技術を
募ることができるのが、オープンイノベーションの本質です。
イノベーションを創出するためのコンセプトとしては非常に優れていますが、
日本企業ではなかなかうまく使いこなせていないようです。
オープンイノベーションの概念が
業種や業態、各企業によっても認識が異なります。
そのため、同床異夢になることも多く、
成功に結びつけることがなかなか難しい面があるのが現実のようです。
一方で、オープンイノベーション施設は、
社外の方に自社のことを知ってもらうことが
第一の目的となっているものも多く、
きっかけ作りの場としても有効に機能しています。
施設見学の勧め
オープンイノベーション施設は、
フューチャーセンター、コワーキングスペース、イノベーションハブ、
インキュベーション施設、ファブスペースなど、色々と名称が付けられており、
コンセプトがそれぞれ若干異なります。
企業ミュージアムに共創の場が併設されている場合もあります。
一般の方を対象にした見学施設ではないため、
取引のある企業に限って招待するといった対応をしている施設もあります。
お取引先の企業で、こうした施設見学を行っている会社があれば、
規模や業種問わず、一度ご訪問されることをお勧めします。
「こんな製品やサービスを扱っていたのか」と
新しい発見があったり、自社の課題を解決するヒントに
つながることが多いためです。
いくつもあるオープンイノベーション施設のうち、
私が特に見学をお勧めしたいのは次の2つです。
ヤマハの「イノベーションロード」
ダイキン工業の「テクノロジー・インベーションセンター」
2つの施設の特徴について解説します。
ヤマハの「イノベーションロード」(静岡県)
静岡県の浜松市にある楽器、音響機器メーカーのヤマハの「イノベーションロード」は、
同社の製品開発の歴史を展示する企業ミュージアムです。
完全予約制ですが、一般の方も見学を受け入れており、
現在人気が集まっている施設です。
ヤマハは、楽器からスタートし、
そのなかで繊維強化プラスチックに着手し、それがスキー板や
住宅用浴槽の事業に発展しています。
また、エレクトーンの技術が、
音楽ミキサーにつながり、半導体を用いた音響機器製品に展開されます。
近年では「初音ミク」が注目を集めていますが、
ヤマハの開発した音声合成システム「VOCALOID」の
源流が見えてくることも面白い点です。
普通では触れることが難しい高価なグランドピアノや、
最新のサイレント系の電子楽器に触れることもでき、
非日常的な体験をすることができる施設です。
ダイキン工業の「テクノロジー・インベーションセンター」(大阪)
ダイキン工業は、空調機、化学製品におけるグローバル企業です。
大阪府摂津市「テクノロジー・インベーションセンター」は
2015年に設立されたオープンイノベーション施設では先駆的な存在となります。
1階にある「啓発館」では、ダイキン工業のこれまでの歴史と事業の紹介、
技術分野ごとに過去~最新の製品が展示されています。
コア技術の展開がどのように行われるかの視点から、
商品群を見ていくと、様々な発見、気づきがあります。
また、見学の際には、本施設が同社が得意とする空調を基軸として、
圧倒的な省エネルギーを実現していることを解説していただけます。
熱の有効利用や、自然エネルギーの活用、外壁塗装による遮熱性向上について、
最新技術が具体的に建物に実装されている様子も非常に参考になります。
見学のお申込みは下記HPの最下段からご相談いただくのがスムーズかと思います。
まとめ
オープンイノベーション施設へ訪問した際の着目点として、
その企業の原点となった技術がどこにあるのかを事前に調べておき、
その技術が製品やサービスとしてどのように展開された歴史があるのかを
見ていくと、大変参考になります。
製品やサービスの考え方の方向性を、
自社の技術に当てはめてみると、新しい発見につながるかもしれません。
社員の方を通じてしか見学を受け付けていない施設も多いのですが、
チャンスがあれば、多くの施設に訪れたいものです。
本日も最後までお読みいただきましてありがとうございました。
補足:その他にお勧めの施設
他に見学をお勧めしたい施設として下記を挙げておきます。
・日東電工の「イノベーションセンター」(品川)
・富士フイルムの「Open Innovation Hub」(六本木)
・資生堂「S/PARK エスパーク」(横浜)
・サントリー「ワールド・リサーチセンター」(京都)
追記
オープンイノベーションの施設を見学したり、オープンイノベーションそのものを検討するに
あたっては、自社の強みを理解しておくことが必要だと考えています。
自社の強みの把握については、次の記事がご参考いただけるとかと思います。
是非ご一読ください。
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