近年、注目されている言葉に「リープフロッグ」があります。
これは直訳すれば「かえる跳び」を意味します。
新興国において、先進国がたどったような普及、発展の過程を経ずに
一気に最先端技術が普及することを意味しています。
こうした現象が起こる背景には何があるのかと、
日本企業としては、どういった対応が考えられるかについて、
次の章から詳しく見ていきます。
リープフロッグがなぜ起きるか
リープフロッグは「かえる跳び」を意味します。
技術や製品において、
新興国が段階的にたどった道ではなく、一足飛びに、
最新技術にたどり着くという状況です。
そして、最新技術を活用して、
先進国よりも、一歩先となるビジネスモデルが生まれるということが
しばしば起こるようにもなってきました。
こうした現象が起こるようになったのは、
ネットやスマホなどの普及により、
国を問わず、デジタルでつながることが可能となったためです。
AIやIoTが技術的に発展したことの影響も大きくなっています。
具体例:中国とルワンダで起きたリープフロッグ
たとえば、現在、中国ではネットでの商取引や、
キャッシュレス化といった仕組みは、日本よりも進んでいます。
中国現地では、ホームレスの方が、首からカードを下げていて、
通りがかりの方がスマホで寄付をするといったことが日常的に起きているということで、
キャッシュレスの仕組みは非常に進んでいるという印象を受けます。
中国では、アリババやテンセントが急速に発展し、
デジタル関連サービスが一気に広がっていきました。
2000年代までは、日本のほうが中国よりもICTの分野では
社会的な展開が勝っていたと捉えています。
その状況から、一足飛びに社会実装化した状況が生まれました。
これがリープフロッグという現象となります。
また、アフリカのルワンダでは、
2016年に医療分野でのドローンの活用が実用化されています。
輸血用血液やワクチンなどの医療品をドローンで運ぶという取り組みです。
新興国のビジネスモデルが、先進国で展開されることを
「リバースイノベーション」といいますが、
リープフロッグからのリバースイノベーションの事例として
ルワンダの医療用ドローンは注目されています。
ちなみにこのビジネスモデルは、アメリカでも展開されるようになっています。
どうして新興国で、より先進的なビジネスモデルが生まれるのか
技術的な蓄積がある先進国からではなく、
新興国で、より先進的なビジネスモデルが生まれるのはどうしてでしょうか。
大きく分けて次の3つの理由があると考えられます。
かえって先入観にとらわれない発想を可能としていること
最新技術に対応した柔軟な変更が可能であること。
それぞれについて考えていきます。
解決しなくてはいけない社会課題があること
「ソーシャルペイン」とでも言うべき、社会的に深刻な困りごと、問題があり、
それをなんとか解決したいという強い思いがあります。
たとえば、先述のルワンダの例では、治安や道の舗装といった点で、
医薬品が必要な場所に届けることが難しいという問題がありました。
それを解決するために、最新技術であるドローンを使ったということになります。
インフラなどの未整備といった制約が、 かえって先入観にとらわれない発想を可能としていること
ルワンダの例でいえば、先進国の人々が発想をすると、
「自動車で医薬品が運べるようにすれば良い」と考えてしまいます。
そうした先入観なしに、「とにかく課題を解決するにはどうしたらいいか」を
ゼロベースで考えられることに、強みがあるということです。
法律や規制について、最新技術に対応した柔軟な変更が可能であること
新しい技術を社会実装するためには、周辺の法整備が必要となります。
新興国では、法律ついて柔軟な対応ができる可能性があり、それが強みとなります。
たとえば、中国では自動運転技術について、実際の道路での大規模な実証実験が
行われています。
その実証実験に合わせて、法整備が整えられる可能性があり、
技術と法律が歩調を合わせて展開ができることが強みとなっています。
こうした3つの理由により、先進国よりも先進的なビジネスモデルが生まれており、
それが、先進国で展開されるリバースイノベーションとなっていくと考えられます。
まとめ
リープフロッグの事例から見えてくることは、
新興国での考え方の基本として「市場の課題」を解決したい
というところから、発想がスタートしているということです。
新しい技術を使ってビジネスモデルを展開するという考え方ではない
といったところが、大きなポイントとなります。
新規事業やイノベーションの本質としては
やはり「市場の未決の課題」を解決することにあります。
日本企業としては、「市場の未決の課題」について取り組んでいく必要があります。
先に述べた3つの理由の点で、日本は優位性がありません。
そのため、場合によっては、新興国にR&Dなどの一定の拠点を構築する
ということも考えられます。
また、新興国でスタートアップ企業との連携を模索するという考え方もあります。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
オンライン勉強会のご案内
参加費無料のオンライン勉強会(ポストコロナの質的環境変化を話す会) を行っています。
コロナ禍での大きな環境変化について、
毎週金曜日20:00~22:00で
他社事例講演や幅広いテーマでの議論を行っています。
大手製造業の研究開発、新規事業の方を中心に
毎回15~20名の方が参加しています。
詳細、お申込みは下記をご参照ください。