ロードマップの作成にあたり、
経営ビジョンをもとに、スタートすることを
以前の記事でご紹介しました。
多くの企業では、経営ビジョンが策定されていると思いますが、
策定に際して、どういった意識で行うべきか
経営企画部の方が悩まれることも多いようです。
経営ビジョンは、企業として「どちらの方向に向かうか」を指し示すものです。
方向性を指し示すためには
どちらかといえば抽象度が高い表現が望ましいと考えます。
あまりに具体的すぎると、市場環境に対して弾力のある対応ができなく
なってしまうためです。
抽象度の高い経営ビジョンの例として、
アメリカの歴代大統領が示したビジョンや構想が非常に参考になります。
次の章から詳しく見ていきましょう。
経営ビジョンとは
経営ビジョンとは、
企業の目的や使命を念頭に置いて、
「将来あるべき姿」を簡潔に明らかにしたものです。
企業の強みや経営資源を何に集中させるか、
行動理念、行動規範、企業風土といったものも含めて表現します。
「経営理念」との違いについても取り上げられることが多いのですが、
これは企業によって異なります。
企業規模が大きい場合や複数の事業の柱を要している会社では、
企業全体としての方向性と、事業ごとの選択と集中を表現する必要があるため、
経営理念と経営ビジョンを分けていることが多いようです。
経営ビジョンを策定する際に悩ましい粒度
経営ビジョンを策定する際に、
皆さんがお悩みになるのがどの程度の抽象度で表現するかの
「粒度」のところかと思います。
抽象的すぎると、経営理念と大差がなくなってしまいます。
かといってあまりに具体的すぎると、事業ロードマップのようになってしまいます。
この「粒度」について、参考になるのが、アメリカ歴代大統領のビジョン、構想です。
抽象度や簡潔さ、方向性、イメージ喚起力のすごさが、注目すべき点となります。
次の章で、具体的なアメリカ歴代大統領のビジョンや構想を見ていきましょう。
アメリカ歴代大統領のビジョン
ジョン・F・ケネディ大統領による 「われわれは、月へ行くことを選択します」。
後に「ムーンショット」
(困難だが、実現によって大きなインパクトがもたらされる、壮大な目標・挑戦のこと)
というビジネス用語に結実するほど、世界に大きな影響を与えたビジョンです。
月へ行くための技術獲得のため、研究開発が盛んになり、
米国の科学技術の発展のきっかけとなったとも言われています。
ポイントとなるのは、方向性を明確に指示している点です。
具体的な方法については、専門家集団のNASAが行うことを踏まえての
ビジョンになっています。
ビル・クリントン政権下でのゴア副大統領が提言した 「情報スーパーハイウェイ構想」
インターネットがまだ未整備の状況のなかで、
高速道路の物流網が発達したのと同様に、
情報が自由に高速に扱える社会の実現をイメージさせます。
多額の予算が必要となることから、
政府主導による当初の構想は実現しませんでしたが、
その後、結果的に民間によるインターネットの普及につながったと言えます。
ジョージ・W・ブッシュ大統領による 「中東からの輸入石油を75%削減する」
これは一般教書演説のなかで述べられたビジョンです。
発言直後には、具体的にはどうするのか? といった質問がメディアから相次いだようです。
メディアからの質問に対して、
エネルギー省のサミュエル・ボドマン長官は、
代替エネルギーとして水素、エタノールの活用、
自動車メーカーへのハイブリット車への切り替えを挙げていました。
しかし結果的には、シェールオイルの技術開発へとつながり、
米国は石油の「純輸出国」となりました。
「中東からの輸入石油を75%削減する」というビジョンが
具体的にはどのような方法に結実するかはその段階では見えなかったとしても
大きな方向性を示したことで、
シェールオイル開発が進んだ側面があったと考えられます。
まとめ
これらの大統領のビジョンや構想から、
企業のビジョンを考える際の粒度をつかんでいただけたかと思います。
実現するのは現段階では難しいと感じられるけれども、
時代の変化や行く先、ありたい姿について、
聞く側はよく理解できますし、社会や生活における変化のイメージも
ありありと浮かんできます。
企業における経営ビジョンは、
新規事業やイノベーションを創出する際に、方向性を定める
羅針盤のような存在になるかと思います。
経営ビジョンは、ロードマップを策定の第一歩にもなるため、
非常に重要なものと言えます。
アメリカ歴代大統領のビジョンや構想をご参考いただき、
抽象度、粒度を勘案しながら、策定、活用されると良いかと思っています。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
オンライン勉強会のご案内
参加費無料のオンライン勉強会(ポストコロナの質的環境変化を話す会) を行っています。
コロナ禍での大きな環境変化について、
毎週金曜日20:00~22:00で
他社事例講演や幅広いテーマでの議論を行っています。
大手製造業の研究開発、新規事業の方を中心に
毎回15~20名の方が参加しています。
詳細、お申込みは下記をご参照ください。