多くの日本企業において、日々、コストダウンの努力が続けられており、
製造プロセスのカイゼンや仕入先の変更などを通じて、
製品やサービスのコストを下げる取り組みが行われています。
こうした取り組みは、
「プロセス・イノベーション」であり、日本企業の強みとなっています。
その一方で、
コストダウンの努力をしても、その分について製品での値引き対応をしてしまい
「営業利益」につながっていないというケースが出てきています。
コストダウンを行い、その分利益につなげることは、
次のイノベーションへの資金を確保する点でも重要な取り組みです。
コストダウンを利益につなげるためには、大前提として
「コスト」と「プライス」について切り分けて考えることが重要です。
今回は「コスト」と「プライス」の違いについて解説しながら、
イノベーションによる新しい価値創出で、企業の競争優位性を発揮する戦略を
進めていくことの重要性について述べていきます。
日本企業のコストダウンの取り組み
日本企業では、現場の担当者の方が
コストダウンの取り組みを「ご自身の重要な仕事」として捉えています。
製品やサービスを提供するだけではなく、
日々のプロセスをカイゼンしようとする意識があることは、
企業風土、企業文化として、大きな強みです。
ある工場では、生産性向上の取り組みの一貫として、工場内にカメラを設置し、
熟練工と新人工の動きの違いをデータ化しています。
そして、動きについての注意点について動画としてまとめ、
新しい方が配属されると、研修の場で説明するなどして、
効率アップにつなげています。
この企業風土、文化の強みは今後も大切にしていく必要があります。
コストダウンが、営業利益につながっていないことも問題点
その一方で、コストダウンの努力が
「営業利益」につながっていないケースが見られ問題となっています。
コストダウンの結果を、営業利益とするのではなく、
プライスダウンとしてしまうケースが多く見られるのです。
直接的な値下げという意味も含まれますが、
原材料費の高騰を、コストダウンによって吸収し、
「値段は変えない」といった対応も含まれます。
せっかく苦労をしてコストダウンを行っても、プライスダウンにつなげてしまうことで、
企業努力が利益、対価に結びついていない状況が生まれてしまいます。
コストとプライスを切り分けて考えることの重要性
コストダウンの結果を利益率に結びつけるための、大前提として
「コスト」と「プライス」を異なるものだと認識することが重要です。
ここで、整理しますと
となります。
コストとプライスは、異なるもので、
別々に分けて考えることで、コストダウンが実現できた場合でも、
プライスダウンにつなげない意識を持つことができるようになります。
また、これまで多くの企業が、コストダウンをプライスダウンに
結びつけてしまう背景に、
プライスダウンすることによって競争優位性を保てた時代の成功体験があり、
この意識を変えていくことも必要となります。
日本製品が性能がよく、安いことが高く評価されていた時代があり、その時代においては
コストダウンをプライスダウンに結びつける手法は有効な方法でした。
しかし、現在、グローバル化が進み、
海外企業は技術的にも追随してきており、人件費が安いことなどがあり、
日本企業の「コスト」を武器とした戦略は、通用しなくなっています。
こうした現状から、日本企業は、コストダウン戦略から
イノベーションで新しい価値を生み出す戦略に舵を切る必要があります。
新しい価値を生み出すイノベーションが必要
コストとプライスを意識的に切り分けることによって、
コストダウンを利益への意識へつながります。
また、日本企業においてはプライスダウンを主軸とした戦略ではなく、
イノベーションによる新しい価値創出によって、
企業としての競争優位性を保つ戦略に切り替えることが必要です。
本日も最後までお読みいただきましてありがとうございました。
補足
利益率については下記の記事も参考になると思いますので、
是非ご一読いただければ幸いです。
オンライン勉強会のご案内
参加費無料のオンライン勉強会(ポストコロナの質的環境変化を話す会) を行っています。
コロナ禍での大きな環境変化について、
毎週金曜日20:00~22:00で
他社事例講演や幅広いテーマでの議論を行っています。
大手製造業の研究開発、新規事業の方を中心に
毎回15~20名の方が参加しています。
詳細、お申込みは下記をご参照ください。