「イノベーション」という言葉を聞くと、
多くの方が「新技術」「技術革新」と連想されるようです。
実は、先日NHKのニュースを見ていましたら、
下記のような報道がなされていました。
経済同友会代表幹事 “賃上げだけでなく生産性向上の議論を”
2021年11月30日 18時33分「NHKのNEWSWEBより」
本文の最後の方で櫻田さんの発言として
「今度こそイノベーション=技術革新を起こして~」
というものがあります。
この「=技術革新」という部分については、
NHKの方が、補足の説明のために記載をされているようです。
根拠となるのが「経済同友会」で
2021年11月2日(火)にアップされた
「櫻田謙悟経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨」です。
■引用■
ただし、イノベーションという言葉を使う際、
(多くの人において)同床異夢のように感じる。
政治家、官僚、民間(企業経営者)、
国民がそれぞれ考えるイノベーションとは何かを議論し、
確認しなければいけない。
科学技術だけがイノベーションではない。
プロセスイノベーションと言われるように、
物事の段取りやプロセスを改革することで生産性を向上できる企業は多数ある。
■引用終了■
上記からも、経済同友会の櫻田さんは、
イノベーションが技術革新だけではないことを十分に理解していることが分かります。
つまり、NHKの方の補足説明が誤っていると考えられるのです。
櫻田さんも指摘している通り、
シュンペーターによれば、
「イノベーション」は5つに分けて定義することができます。
(2)新生産方法の導入(プロセス・イノベーション)
(3)新マーケットの開拓(マーケット・イノベーション)
(4)新たな資源(の供給源)の獲得(サプライチェーン・イノベーション)
(5)組織の改革(組織イノベーション)
この定義からも、「技術革新」=「イノベーション」とするのは、
イノベーションをごく限られた範囲で
捉えてしまっていることが分かります。
技術の枠に囚われてしまうと、
スタートの段階から無意識に発想を「技術」に限定してしまい
新しい価値を生み出す可能性を大きく減らしてしまうのです。
これが大きな問題です。
今回紹介したNHKの記事は、
「賃上げだけでなく生産性向上の議論を」がタイトルです。
生産性向上を考えた場合、技術だけではなく、
イノベーションを「新結合による価値創出」と理解し、
進めていくことが重要です。