コロナ禍の影響により、様々な社会的な課題が浮かび上がり、
それらの解決に向けたイノベーション活動が、
各企業で行われています。
そのなかで、紫外線を用いた除菌技術を応用した製品は、
公共の場での活用を目的に注目を集めています。
今回ご紹介する「アーバン・サン」は、
遠紫外線を活用した、空を飛ぶ空間除菌ライトです。
ある特定の課題に対応する製品は、
その課題が収束した後に、どのように展開されていくか
長期的な視野でウオッチしていくことも、
視点として重要かと思います。
オランダのデザイナーが開発した、 空間のコロナウイルスを99.9%除去する空飛ぶライト 「アーバン・サン」
(下記要約)
2021.08.03 「サステナブル・ブランド ジャパン」より
オランダのソーシャル・デザインラボ
「スタジオ・ローズガールデ」の
「アーバン・サン(Urban Sun)」プロジェクトの紹介。
アーバン・サンは浮遊するデザイン・インスタレーションで、
光で希望を視覚化し、遠紫外線を用いてコロナウイルスを
99.9%除去することで、イベント空間をより安全にするものだ。
ローズガールデ氏のチームは、
秒速300キロメートルの光の力を利用すると
空間を数分間で殺菌できることを発見した。
「2018年、科学誌『ネイチャー』に遠紫外線(far-UVC)に
関する記述がありました。科学者らによると、害のあると知られている
一般的な紫外光(UV光)とは異なります。
遠紫外線は特殊な波長で、UV光の波長(245nm)より短く(222nm)、
人間と動物には無害でありながら、
ウイルスを死滅させる力があります」(ローズガールデ氏)
ローズガールデ氏らは14カ月の設計期間を経て
アーバン・サンを実現させた。光の力を利用し、
科学とデザインを融合させたアーバン・サンは、
空気中のコロナウイルスを99.9%除去できることが科学的に証明されている。
波長の違いによって遠紫外線はバクテリアやウイルスを排除できるのだ。
この技術はすぐに利用できる状態で、
現在は社会でどのように実装するかを決めていく段階だ。
「アーバン・サンの技術は、飛行機、学校、
エレベーターなどで使われるようになるでしょう。
しかしわれわれのようなデザインスタジオでなく、
テクノロジー産業が決定していくことになります」とローズガールデ氏は語る。
アーバン・サンは、ローズガールデ氏のチームと
日本、イタリア、米国、そしてオランダから集められた科学者らによって
生み出された。科学的根拠は、
コロンビア大学と広島大学の科学者が執筆した論文に基づいているという。
アーバン・サンの光は電力を使用しているが、
300-400ワットととても少ない量だ。
アーバン・サンは、新型コロナウイルスによってもたらされた、
厳しい制限や将来のウイルスがもたらす社会的な影響を緩和する
革新的な発明だ。
注目した点
本記事に関連して少し心配なことは、
仮に「アーバン・サン」のようなものが
実用化し、広く使われた場合、
ウイルスの変異を促す結果にならないかという点です。
紫外線に強いウイルスの増殖につながると
新しい問題に発展するように思われます。
こうした新しい取り組みを、広く実装化する場合は、
負の影響についても、長期的に冷静に測定するような
仕組みをセットで展開することが必要かと考えます。
かつて、病院では、
ステンレスの丸い容器に、消毒用のアルコール綿が入っており、
注射の際などに使われたりしていました。
アルコールが乾くと上から、新たに注ぎ、
綿も追加するという運用のされ方だったようです。
ところがあるときに、このステンレス容器を調べたところ、
アルコールを好む菌が増殖していたことが分かり、問題視されました。
現在は個別包装の消毒綿が使われています。
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ところで、本記事の他にも、
光によるウイルス除去の記事が、このところ
立て続けに発表されています。
下記は
米医療機器ベンチャーのエミットバイオ(EmitBio)による
高精度の周波数の光を喉の奥などに照射することで
新型コロナウイルスの量を減らせる簡易な治療機器を開発した。
という記事となります。
LED光使ったコロナ治療機器、米メーカーが開発 「デルタ株を99.99%除去」
今回のコロナ禍を受けて、
社会的課題を解決するイノベーションが
グローバルで次々と登場しているように感じます。