多くの企業では、将来的な変化を推測したり、
確からしい事実に基づいて、
自社の戦略や、新規事業のテーマ策定を行っています。
こうした将来的な変化の予測については、
メディアや専門家が「こうなるであろう」と
解説したものを活用することも多いかと思います。
しかし、専門家の予測は、
多くの方の納得につながる一方で、
当たり前の内容となることも多く、
尖ったテーマや、競争力となることは少ないという面があります。
そこで、今回紹介するのが
「スキャニング」という方法です。
スキャニングは、未来を正確に予測することに力点を置くのではなく、
未来を知ろうとする過程のなかで、
「新たな気づき」を得て、
研究開発や新規事業のテーマの源泉としていこうとする仕組みです。
スキャニングでは、スキャンニングマテリアルを
日々、こつこつと収集するところからスタートします。
スキャニングマテリアル収集のプロセスは、
大きな気づきや情報感度の向上につながります。
明日すぐに役に立つというものではないのですが、
スキャンマテリアルの収集の視点は、各個人、各企業によって
収集される情報が異なるため、そこからの考察は
オリジナリティが強く出るため、差異化につながります。
今回は、未来洞察の手法としてのスキャニングとは
どのようなものかについて解説します。
(具体的な進め方は次回解説いたします)
スキャニングを生み出したSRIについて
スキャニングは、1970年前後に
SRI(Stanford Research Institute)で開発された手法です。
SRIは、1946年にスタンフォード大学によって設置された
世界で最も大きな研究機関のひとつです。
(1975年にSRIインターナショナルへと名称を変更)。
SRIは、組織としてざまざまな革新的イノベーションを生み出してきました
最もよく使われているSRI産の発明としてはPCのマウスがあります。
また、直近では、iOSの「Siri」などが、
SRIの人工知能の研究から生み出されています。
同じくSRIで、未来洞察の手法として開発されたのが
「シナリオプラニング」です。
こちらは、
未来に起こりえる4つのシナリオを作成し
それに対して、自社がどう対応するかを事前に推測する手法です。
シナリオ・プランニングでは
「インパクト」と「不確実性」の2つの軸で、
現在の企業が置かれている状況から、未来を推測し、打ち手を考えます。
一方で、スキャニングは、後に詳しく説明しますが、
何らかの思考の軸を設定することなく、
日常で得られるニュースなどから、
「未来の萌芽」を日々少しずつ、感じ取っていくという手法となります。
スキャニングの発想の原点
ところで、スキャニングの開発のきっかけについて
スキャニングの開発に携わった
英国Business Futures Networkの
ジム・スミス氏は次のようなことを述べています。
「ある研究に行き詰まっていた専門家が
他分野の論文のアブストラクト(概要)だけを斜め読みしたときに
“気付き”“ひらめき”につながった」
その道の専門家が普段触れている情報は狭く深い範囲となってしまう
ということになります。
企業の研究開発などに携わっている方も
どうしても、狭く深い情報を追い求めてしまっているのではないでしょうか。
しかし、抱えている課題が大きな壁に当たっている場合、
解決のヒントやセレンディピティにつながるのは、
専門外の情報やマイナーな情報であることも
多いという実感があるかと思います。
専門外の情報やマイナーな情報を意識的にインプットしていくことは、
日々の情報収集の一貫としても重要となるかと思います。
スキャニングの本質
スキャニングでは、
ご自身が意識的に幅広い情報に触れ、
目にした情報のなかから、
特に「未来につながる」と感じたものを
「スキャンニングマテリアル」として
日々こつこつと収集していきます。
自社の1つの部署の4~5名で
スキャニングを行うと、人によって情報収集の切り口の違いが
出てくるため、より効果的となります。
スキャニングマテリアルが100~150ほど集まった段階で、
同じ系統のスキャニングマテリアルをグループ化して
タイトルをつけます。
これは未来の方向性を示唆する仮説となり、
この仮説から、「では自社ではなにに取り組むか」を
考えて、新規事業のテーマなどに落とし込んでいく形です。
スキャニングの本質は、現在見えてきている具体的な情報を
ジグソーパズルの1つのピースとして捉え、
いくつものピースを組み合わせるなかで
未来の仮説と形づくるものと言えます。
集めるピースと、組み合わせ方で
仮説は広がりを見せ、思わぬ気づきにつながることもあります。
是非、一度試していただければと思います。
まとめ
スキャニングは、未来を知ろうとする過程のなかで、
「新たな気づき」を得て、
研究開発や新規事業のテーマの源泉としていこうという取り組みです。
スキャニングの取り組みについて、
個人でも習慣化していくと、その過程で様々な気づきにつながり、
発想が広がっていきます。
また、グループ単位で取り組むことで、
情報収集の視点が異なることから、
さらに広い視野につながります。
集めたスキャンニングマテリアルは
共通点をグループ化していくことで、未来仮説を構築し、
そこから新しい方向性につなげていくことが可能です。
次回、スキャニングの具体的に進め方を解説します。
本日も最後までお読みいただきありがとうとざいました。
続きは、下記となります。
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