現在、ドイツでは再生エネルギーに舵を切りましたが、
天候の悪化により、電力生産ができずに苦慮しています。
ロシアとの関係で、天然ガスも逼迫し国中が大停電に陥っています。
これまで、自然エネルギーへのシフトは、
下記の記事にあるように明るい未来が示されてきました。
しかし、過渡期における対応の難しさはあまり考えられてきませんでした。
日本は、再生エネルギーに一歩遅れをとっていますが、
ドイツでの事例などを見ると、過渡期での対応が必要であり、
一歩遅れたことが対応を考え、導入をうまく進めるための気づきとなる
可能性があります。万事塞翁が馬といったところでしょうか。
今回、過渡期の対応も含めて、自然エネルギーシフトを考えます。
安価なソーラーエネルギーをたっぷり享受できる未来に備えよ: ビル・マッキベンからの報告
2021.09.08 WED 「wired」より
■記事掲載■
トランプ元大統領がソーラーエネルギーには
「バカみたいに金がかかる」と騒ぎ立てていた4年間に
そのコストは四半期ごとに下がり続け、2020年代の終わりまでに、
ソーラーエネルギーは地球上のほぼ全域で
化石燃料より安くなると見積もられている。
(中略)
しかし本当の希望が欲しいなら、見るべきところは別にある。
ロンドンに拠点をおくシンクタンク、
カーボントラッカー(Carbon Tracker Initiative)が発表した、
人目をほとんど引いていない報告書だ。
(中略)
科学者たちはかなり前から、太陽から地球に降り注ぐエネルギーは
1時間で人類が1年間に使う量を超えるほどだと指摘していた。
しかしごく最近まで、その力をとらえるのには
恐ろしく費用がかかった。
それが大きく変わろうとしている。
2021年時点での現実の地球上における報告書はこうだ。
「現在のテクノロジーと現時点で使用可能な場所を利用して、
太陽光と風力から得られるエネルギー量は少なくとも
6,700PWh/年にのぼり、
これは全世界のエネルギー需要量の100倍以上にあたる」。
しかも、地上をソーラーパネルで埋め尽くす必要はない。
「全世界のエネルギーをソーラーパネルだけでまかなうとして、
その設置に必要な土地を計算すると、
全世界の地表面積1億4,900万平方kmの0.3%、45万平方kmとなる。
これは化石燃料に必要な土地よりも少ない。
化石燃料の産出には、
米国だけでも国土の1.3%にあたる12万6,000平方kmが必要とされる」。
(中略)
●未来には安価なソーラーエネルギーをたっぷり享受できる
この報告書に書かれた数字は圧倒的なパワーを放っている。
たとえ分析者たちの意見が楽観的過ぎるとしても、
どうやら未来には安価なソーラーエネルギーを
たっぷり享受できると考えてよさそうだ。
「技術的及び経済的な障壁は、
コストの低減によって乗り越えられることがわかった。
あとに残る主な障壁は、
現役の政治家たちが気候変動を止めようと
政治力を発揮できるかどうか、という点だ」と報告書は述べている。
(中略)
●未来の予兆
オレゴンで行なわれる新たな再生可能エネルギー・プロジェクトでは、
太陽光発電と風力タービン、
さらに大容量電池貯蔵を合体させる。
この地域公益事業体ポートランド・ジェネラル・エレクトリック
(Portland General Electric)のスポークスマンは、
こう言っている。
「再生可能エネルギーの未来はほぼ確実に
こういう形になっていくと、わたしたちは確信しています。
未来はもっと多様性と柔軟性に溢れているのです」。
もう少し南に進み、さらにもう少し先の未来を見てみると、
エネルギーのレポーターとして名高いサミー・ロスが
週刊ニュースレター「ボイリング・ポイント」のなかで、
カリフォルニアのプロジェクトをとりあげている。
これはカリフォルニアの灌漑用水路をソーラーパネルで覆い、
クリーンなエネルギーを生み出すのと同時に
水の蒸発を防ぐという計画だ。
(中略)
『ニューヨーク・タイムズ』は、
国連の科学報告書の詳細なまとめを入手した。
報告書によると、気候危機の解決には炭素排出量の削減に加えて、
メタン排出量の制御が不可欠であると明記されている。
また『ニューヨーク・タイムズ』によれば、
排出を止めるのを呼びかけるとともに、
報告書が最も重要だと考えているのは、
「天然ガス使用の拡大は、
国際パリ協定の目標である地球温暖化を1.5℃までに抑える
という課題とは両立できない」という点だという。
注目した点
これまで自然エネルギーの活用については、
太陽光パネルや風力発電そのもののコストが高く、
石油と比べて価格面で難しいという指摘がありました。
しかし、コストの面については一定程度の解決策が見えてきており、
その意味では明るい未来が感じられます。
ところが、これまで実際に自然エネルギーに移行する際に、
どのようなことが起こるかは、シミュレーションできていませんでした。
それが今回のドイツのケースで明らかとなったわけです。
再生エネルギーへのシフトは重要かと思われますが、
過渡期のさじ加減は、非常に難しいものなのだということが見えてきました。
今後、日本でも自然エネルギーへのシフトが行われるかと思いますが、
一歩遅れたお陰で、過渡期の調整対応がうまくいくようにも思います。
今後10年ほどの過渡期において、補助的な対応ニーズが急激に高まるかと思います。
電力自由化により、一般企業も電力事業に参入できるようになっています。
自社の強みを活かすことで、過渡期の課題を解決することができれば、
大きなビジネスチャンスになりそうです。