1月11日にイラン海軍がホルムズ海峡に近いオマーン北部ソハールの沿岸で
石油タンカーを拿捕(だほ)したと報じられています。
ホルムズ海峡は中東の石油輸送の大動脈であることから、紛争が拡大することで、
ホルムズ海峡の封鎖につながるのではないかと懸念されています。
日本は現在、石油について
中東依存度が94.6%となっています。
(2023年11月段階での石油統計速報)
そのため、中東の石油輸送の大動脈である
「ホルムズ海峡が封鎖された場合」は日本が危機的状況に陥ることは
間違いありません。
しかし、実際のところホルムズ海峡が封鎖される可能性はどの程度なのでしょうか。
個人的な結論としては
「封鎖される可能性は低い」というものとなります。
結論の根拠について次に述べていきます。
反イスラエル・反アメリカのフーシ派
まずこの地域でどのような紛争が起きているかを整理していきます。
昨年から、「イエメン」の反政府武装組織「フーシ派」が
紅海とスエズ運河を航行するタンカーに対して攻撃を行っています。
「ホルムズ海峡」と「紅海(スエズ運河)」の位置関係については、写真をご参照ください。
この「フーシ派」は、「イラン」が支援をしており、イエメン政府と20年近く戦い続けています。
「フーシ派」はアメリカおよびイスラエルに反発するイデオロギーを構築しており、
今回のイスラエル・パレスチナ問題が勃発したにも、
パレスチナの武装組織ハマスを支持すると宣言しています。
フーシ派が紅海の船を攻撃する背景
「フーシ派」が紅海を航行する船を攻撃していますが、反イスラエルの立場から、
イスラエルに向かう船やイスラエルから出航した船を攻撃していると主張しています。
これによって、紅海・スエズ運河の全ての船舶の運航がスムーズにできなくなるという事態が起きています。
日本では、日本郵船、商船三井、川崎汽船の海運大手3社が紅海での全ての船舶の運航を停止しています。
英米の反撃とフーシ派を支援するイラン
こうした事態に対して、
米英軍が、12月末に商業貨物船を攻撃していた「フーシ派」のボート3隻を撃沈したことに続いて、
「フーシ派」を標的とした空爆をイエメン各地で実施しています。
米国は「フーシ派」に武器を提供しているのは「イラン」だと疑っており、
「米国とイランの対立が深まっている」状況となります。
これらの背景ものとで、
1月11日にイラン海軍がホルムズ海峡に近いオマーン北部ソハールの沿岸で
石油タンカーを拿捕したわけですが、イラン側は「米国のタンカーを拿捕した」と主張しています。
ホルムズ海峡封鎖はイランにとってはマイナス面が多い
イラン海軍がホルムズ海峡で石油タンカーを拿捕したことで、この延長から
ホルムズ海峡の封鎖につながるのではないかと懸念する声が出てきています。
しかし、イランにとってホルムズ海峡封鎖は
マイナスの要素が非常に多いと言えそうです。
ホルムズ海峡は、原油の大動脈であるため、仮にホルムズ海峡が封鎖された場合、
周辺の産油国のサウジアラビア、UAEをはじめとして、
イラク、オマーン、クエート、カタールの原油が
世界に輸送ができず、原油が売れなくなる事態につながります。
ホルムズ海峡封鎖は、イランと産油国との敵対関係を産んでしまうということです。
また、これらの国々はイランと同じく国民の多くがイスラム教徒です。
同じイスラム教徒の国々が困る対応は、国民の世論の面からも難しいと言えそうです。
原油を買う側もホルムズ海峡封鎖は困る
原油を売る側だけではなく、買う側もホルムズ海峡が封鎖されると困ります。
ホルムズ海峡を通過した原油は、
インド、中国、台湾をはじめ、アジア各国、
そして日本が購入しています。
もしホルムズ海峡を封鎖した場合、イランはこれらの国々とも敵対関係となってしまいます。
原油価格も高騰とまではいっていない
上記の理由からイランがホルムズ海峡を封鎖することは考えにい状況です。
もし、ホルムズ海峡を封鎖する可能性が見えた場合、
機を見るに敏の動きをする原油価格はすぐに反応するでしょう。
現在の原油価格の長期推移を見ると、下記のように安定しています。
地政学的条件と原油価格状況の2つの切り口のいずれも
ホルムズ海峡封鎖の可能性は低いことを示しています。
●ホルムズ海峡封鎖の可能性はゼロか
一方で、「ホルムズ海峡封鎖の可能性はゼロか?」
と問われると、
今後、大きく状況が変化した場合はゼロではないとしか答えようがないのですが、
今は慌てず、原油価格も含めた今後の状況を冷静に見ていくことが大切かと思います。
本日もお読みいただきましてありがとうございました。
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