円安が進んでいます。
2022年1月7日段階で、
115円後半から116円となっており、
2017年1月11日以来5年ぶりの
「円安」の状況です。
これまで日本では、
「円高」と「デフレ」の状況が続いており、
この2つが経済成長の阻害要因として捉えられてきました。
その対策として、日銀では
異次元の量的・質的緩和を行い
円安とインフレ目標2%を掲げてきました。
量的緩和というのは、
市場に流通する「円」の量を増やすこと。
質的緩和というのは、
長期国債を買い入れや、
ETFなどの買い入れ額を拡大して、
やはり、市場に出回るお金を増やすものとなります。
そして、今もこの施策が続いています。
一方で、アメリカではFRBが、
「テーパリング」を行い
量的緩和を少しずつ後退させていくことを行っています。
これまで、市場の出回るお金の量を増やす方策を行っていたのを、
少しずつ減らしていくということを意味します。
通常テーパリングは、
雇用統計などの指標の改善に一定の成果が上がった時点で
量的緩和策を縮小していくことを意味しますが、
今回の場合、アメリカで想定以上となっている
インフレを抑制したいという意図があります。
併せて、利上げを行う準備も進めています。
金利が上げることで、お金を借りる人が少なくなるため、
市場に出回るドルの量を減らしていくという形となります。
そして、ドルを持っていれば上がった分の金利も入るわけですから、
円を売ってドルに替えようという動きがでてきます。
こうした金融施策の日米コントラストにより、
円安ドル高が進んでいるのです。
ところで、本来、国の通貨というのものは、
その国の競争力が強ければ、強くなるはずです。
日本はこれまで、貿易収支で黒字を計上しており、
それが「円高」を維持していたと捉えることもできます。
しかし、新興国の輸出競争力が高まるにつれて、
日本の輸出競争力も相対的に低下する形となってきました。
かつてのような巨額の貿易黒字を計上できる
状況ではなくなってきてしまっています。
国の競争力の観点からも、
円は弱くなり、円安となることが今後の流れとしてあるようです。
結果として、
これまで成長を阻害しているとされた
「円高」と「デフレ」は解決されそうですが、
うまい段階でストップせずに、
今度は、「円安」と「インフレ」が
企業や人々の生活を苦しめる結果になると危惧しています。
もしかすると以前ご紹介したトルコのようなケース
とまではいかなくとも、
近い状況が日本でも現実化するかもしれません。
現在、グローバルで原材料価格や
エネルギー価格がそもそも高騰しています。
ここでの「円安」により、同じ金額でも購入できる
原材料やエネルギーの量は少なくなるわけですから、
「インフレ」の傾向に拍車がかかる事態が想定されます。
原材料やエネルギーの高騰に対して、
企業が、収益を減らす形で最終製品には、
それほど転嫁されていません。
企業物価指数と消費者物価指数の上昇の差が
その状況を示しています。
2021年12月10日に発表された
11月の企業物価指数は前年同月比9.0%上昇しています。
2021年12月24日に発表された
11月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く)は、
前年同月比0.5%上昇しています。
しかし、いずれかの段階で、
最終製品の価格に上乗せをしなくては立ち行かなくなってしまいます。
一方で、「インフレ」によって、
人々の所得が増える形となれば、丸く収まるわけですが、
今後所得が増えることが期待できそうな会社は
どのくらいあるでしょうか?
企業が成長しなければ、社員の所得は伸びません。
企業が成長するには、価値を生み出す必要があり、
そのためには、いずれの業種においても、
イノベーションを志向することと、
そして、製造業においては研究開発の注力することが重要です。
現在、コロナ禍やSDGs対応など、
企業が取り組むべき社会課題が多く見えてきており、
解決策を提示できれば、大きな価値創出につながります。
以前の記事に、岸田政権の考え方の方向性として、
長期の研究開発を促す可能性が高いことをご紹介しました。
今後、どのような政策が具体化されるか、
まだ見えない部分もあるのですが、
自社において、研究開発にさらに注力するとしたら、
どの部分から強化していくかを検討すべき時期がきていると感じます。
仮に設備面での増強を考えた場合、
部品関係の不足が今後さらに深刻になる可能性があり、
今から先んじて動く必要がありそうです。