ロシアのウクライナ侵攻が、世界経済に大きな影響を与えています。
日本での影響としては
鮭、うに、いくら、めんたいこといった海産物が、
高騰につながっています。
国産のカニの仕入れ値はロシア産のものが
2月中旬との比較で、3月8日には2割ほど上昇。
3月初旬からノルウェー産のサーモンも
ロシア上空を通る航空機での輸送が困難ということで、
入ってこなくなっているとのことです。
また、ウクライナは「欧州のパンかご」「世界の食糧庫」
などと言われており、世界的な小麦価格にも影響が出ています。
4日にシカゴ商品取引所(CBOT)の小麦先物価格は7%近く上昇し、
週間では40%超と猛烈な勢いで上昇。
日本は小麦は約9割を外国から輸入していますが
内訳としては下記3カ国が主体となっています。
米国(49.8%)、カナダ(33.4%)、オーストラリア(16.8%)
ここから、日本の小麦の輸入がすぐに滞る可能性は低いようですが、
小麦の国際相場の高騰の影響があるため、
いずれにしても小麦製品については今後も値上がりしていきそうです。
ところで、ウクライナ、ロシアは
希少資源の輸出国でもあります。
特に半導体製造に不可欠なネオンの7割をウクライナに、
自動車の主要部品に使うパラジウムの4割をロシアからのものと
なっているようです。
昨年から、半導体不足のために、
家電、自動車、スマホ、PCの生産に混乱が生じていますが、
今後もこうした状況が続くということとなります。
それから、希少資源の観点としては、
私自身全く知らなかったのですが、
パラジウムは、「銀歯」の材料になっているそうです。
虫歯治療が、今後高額になるという報道もありました。
治療する部位によってはパラジウムでなくても
保険が適用できる金属・材料があるということを
歯科医の方から教えていただき、一安心したところでしたが、
もし歯の治療をお考えの方は、
適用する材料についてもお話を聞いてみたほうが良さそうです。
ここで強調したいことは、
ロシア・ウクライナ問題が、我々の生活にも
大きな影響を与えるようになってきているところです。
私はこれまで、企業が
調達先を複数にすることを推奨しておりましたが、
資源やレアメタルということになりますと、
産出地も限定されるために、複数購買は
難しいということが現実として理解できたように思います。
(企業の現場の方のご苦労も知らずに、勝手なことばかり
記載しまして申し訳ありませんでした)
この件に付随して、金属関係を調べていましたら、
ニッケルの市場が混乱している現状も見えてきました。
ロシアはニッケル産出量の10%を占めており、
今後、その供給が不安定になるとのことから価格が上昇が
続いていました。
そんななかで、
3月9日にブルームバーグで以下の記事が公表されています。
中国商品業界の「大物」、ニッケル相場急騰で巨額損失に直面-関係者
こちらの記事とその他の情報を総合しますと、
下記のような流れが見えてきます。
ステンレス生産最大手として知られる
中国青山が、自社のロシア産ニッケルについて、
ロンドン金属取引所(LME・London Metal Exchange)で、
保有しているニッケルの資産目減りや損失発生を防ぐことを目的に
先物を売り建てを行っていました。
これがロシアの輸出禁止の影響で、
ニッケル価格は高騰。
青山の在庫が全くなくなり、
資産目減りや損失発生を防ぐことを目的に
先物を売り建てを行っていたのが裏目となり空売りに。
スイスのGlencore社がLMEで、高騰しているニッケルの価格で
大量の買い注文を出していますが、
青山社は巨額の損失となることから支払いが難しい状況。
Glencore社は、支払いの代わりに
青山が持つインドネシアのニッケル鉱山の譲渡で
交渉をしているようですが、中国政府が介入します。
中国建設銀行と中国の資源関連企業に働きかけ、
ニッケルの在庫を青山社に貸し付ける形での対応をとります。
こうしたこともあり、
LMEは3月9日のアジア時間の取引の無効を発表する事態となっています。
ロシア・ウクライナの問題に端を発して、
資源とそれに関連する金融についても
かつて想像もしなかったような事態が起きていることが分かります。
つい先日まで、ビフォアーコロナ、ポストコロナと
時代の変化が評されていましたが、
現在の状況を後世から見ますと、
「アフターウクライナ」の世界と位置づけられ、
かつては想像もできないような変化の時代となったとされる
のではないかと思っています。
この大きな時代変化のなかで
我々はどのように対応すればよいのでしょうか。
自戒を込めて2つ記載したいと思います。
1つ目は、過去の成功体験が通用しない状況であるという点です。
企業経営や個人の対応において、
また、株価、資源先物といった専門的な領域でも、
これまでのセオリーが通用しないことが続きそうです。
これまで、セオリーを適応していれば、
痛い目を見ることはほとんどありませんでしたが、
セオリー適応が大きく時代と乖離する状況となった場合、
過去に見ないほどマイナスが大きくなると考えられます。
ビジネス上で何かを進める際にも、
「いかにプラスとするか」がこれまでの論点であったと
捉えていますが、
危機意識を優先し「いかにマイナスとならないか」に
焦点を当てる必要があると考えます。
2つ目は、正常化バイアスに注意する点です。
下記の記事では、2月16日のキエフの様子が紹介されています。
至って平穏だと感じられます。
しかし、その後の情勢についてはご存知の通り戦火に。
現在170万人を超える避難民が出ているのです。
2月16日までに、その後のロシア侵攻を予期させる
シグナルは多数あったかと思われます。
ところが、人間には「正常化バイアス」があり、
明らかな危機状況とならない限り、
「大丈夫」と思ってしまう傾向があるのです。
現状を見ますと、
大げさと思っても備えをしておいたほうが良いと感じます。
具体的な備えはどのようなものでしょうか。
現状では、企業としては在庫の積み増し対応、
取引先、業界内のつながりの再整備、
異業種の方とのつながりが、後に威力を発揮しそうです。
個人としては、食料、水のほか
トイレットペーパーや電池などの日用品備蓄や
常備薬について少し多めに用意をしておくこと。
家電製品、給湯器、自動車の買い替え、
あるいは家の補修などお考えになっている方は
早めに対応をすること。
ご体調不良の方で手術などの必要がある方は
前倒しのご相談をされるなど検討するのが良いかと思います。
また、これは少し大げさかもしれないのですが、
以前も紹介させていただきました下記のような
太陽光パネルとバッテリーのセットの安いものを
購入し事前に試し使いをしてみても良いかもしれません。