新型コロナウイルスは世界規模で経済的な打撃を与えました。
そこからの復興として、
「グリーンリカバリー」の取り組みが注目を集めています。
グリーンリカバリーとは、
新型コロナウイルスによる経済的なダメージからの復興にあたって、
単に以前の経済状況を取り戻すのではなく、
コロナ以前からのグローバルでの
大きな課題であった気候変動や環境問題を解決しながら、
進めていこうとする動きのことです。
グリーンリカバリーは、カーボンニュートラルと
セットとなって語られることが多くあります。
「カーボンニュートラル」は、
経済活動によって排出される二酸化炭素量を削減するとともに、
削減が難しい部分については、森林吸収などにより、
排出量が実質的にゼロとなる状況のことを指します。
(カーボンニュートラルには排出量取引も含まれています。)
グリーンリカバリーとカーボンニュートラルの動きは
国際的な潮流となっており、
今後、多くの企業が取り組んでいくかと思われ、
また目標達成のために取り組む必要があります。
しかし日本に限れば、カーボンニュートラルについて、
日本政府が目標として掲げている数値は、
現状の取り組みの延長では達成することが難しいという
見方が大半です。
そのため、課題解決の方策として、
複数のイノベーションが不可欠とされており、
各企業が強みを生かして、力を発揮する絶好の機会となっています。
今回は、グリーンリカバリとカーボンニュートラルの
基本を解説しながら、
イノベーションの必要性について述べていきます。
新型コロナウイルスの影響による二酸化炭素排出量の減少
新型コロナウイルスの影響は、各方面にわたり、
経済面では特に生産拠点が停止したり、
人の移動やものの移動が制限されるなど大きな影響が出ています。
しかし、世界的な経済活動の抑制によって見えてきた
プラス面としては
二酸化炭素排出量が、
2020年と2019年を比べると
世界規模で7%(欧州だけで見ると10%)以上減少したという点です。
二酸化炭素排出による地球温暖化の影響が
大きな懸念となっていましたが、
今回の新型コロナウイルスの影響が
大きな示唆を与えてくれたと言ってもいいかもしれません。
経済活動を縮小させれば、二酸化炭素排出が抑制できることが
地球規模で分かったわけですが、
今後、経済が回復しても、二酸化炭素排出が戻ってしまっては
気候変動リスクへの対応ができないことになります。
こうしたことから、
新型コロナウイルスからの復興と、
脱炭素社会の実現を進める
グリーンリカバリーの観点が注目されています。
各国のグリーンリカバリー、カーボンニュートラル対応
グリーンリカバリーについては、
最も進んだ対応をしているのがEUです。
EUの2021年~2027年までの中間予算と予備費を含めて
1兆8243億ユーロを計上しており、
このうち、少なくとも約3割を気候変動対策に当てるとしています。
この少し前となる2019年12月に発表された
「欧州グリーンディール政策」では、
2050年までに温暖化ガスのカーボンニュートラル(排出量の実質ゼロ)を
目標として掲げています。
この目標では、カーボンニュートラルを進めるとともに
雇用創出と「イノベーション」を促進する成長戦略が語られており、
グリーンリカバリーの基本的な考え方が含まれていると見ることができます。
また、アメリカでは
バイデン大統領が、2035年までに電力の脱炭素化、
2050年までにカーボンニュートラルの実現を掲げています。
短期的な対応としても、グリーンエネルギーなどのインフラ投資に
2021年~2025年までの4年間で、2兆ドルを投資するとしています。
中国では、習近平主席が2020年9月の国連総会で
2060年までのカーボンニュートラルを目指すことを表明しています。
このように、世界の主要国では2050年を
ひとつの目安として、カーボンニュートラルが進められていることが
分かります。
日本政府の二酸化炭素削減目標
日本においても2050年までにカーボンニュートラルを達成することが
目標として掲げられています。
2020年12月に経済産業省が中心となって、
下記の「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」が
発表されているので御覧ください。
このなかの
「資料1 2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」のPDF資料は、
カーボンニュートラルのロードマップとして
各企業での施策展開の際に、非常に参考になります。
再生可能エネルギーについては、電力需要の50~60%を
グリーンエネルギーで担うとしており、これは現在の約3倍の比率となります。
その中核を担うとされているのが、洋上風力発電で、
2040年までに4500万キロワット
(これは平均的な原子力発電所45基分となります)の目標が
記載されています。
カーボンニュートラルを実現するためには
EVの普及が不可欠となりますが、こちらは、
2030年までの乗用車の新車販売については、
すべてEVもしくはハイブリット車への切り替えとされています。
これらを実現するために、
洋上発電、EV対応を支える産業育成のとして、
2兆円規模のききんを創設していくと記載されています。
カーボンニュートラル達成にはイノベーションが不可欠
一方で、日本のカーボンニュートラルは
明確なロードマップができあがっているものの
現実的には、現在の延長線での目標達成は難しいというのが
多くの専門家の見方となります。
ここでさらなる展開が期待されているのが
下記のような分野です。
・「CCS」(Carbon dioxide Capture and Storage)
=「二酸化炭素回収・貯留」技術。
・「CCUS」(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)」
=「二酸化炭素分離・貯留・利用」技術。
・水素の活用
すでに取り組んでいる企業も多くあるかと思いますが、
対応する裾野が広いため、
各企業がその専門性を発揮していきながらこれらの分野で
イノベーションを起こして対応していくことが必要です。
2050年までには30年の時間があるものの、
イノベーションを結実させるためには
10年以上の年月が必要となる場合を考えると、
各企業の来年度の計画から、カーボンニュートラル分野に
さらに力を入れていく必要があるかと思います。
「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」
のなかでは、国として、資金面、あるいはインフラ面での
整備を後押し、今後もそれを強化していくと推測されますので、
多くの企業にとって、環境面でチャンスとなると思いますので、
この機会に、一度対応を検討してみるのが良いかと考えられます。
まとめ:イノベーションを起こしていくことの重要性
全世界的な潮流として、グリーンリカバリーとカーボンニュートラルが
進められています。
多くの国々で、2050年にカーボンニュートラルの実現を掲げており、
これに対する予算が計上されています。
しかし、2050年でのカーボンニュートラル達成は、
現状の延長線では難しく、イノベーションが不可欠となっています。
自社の強みをもう一度ここで見直し、
カーボンニュートラルという取り組みに当てはめた場合、
どの分野で競争優位性が発揮できるか、
今後30年の目標として考えるタイミングが来ていると言えます。
本日も最後までお読みいただきましてありがとうございました。