グローバルで甚大な食糧危機が生じる可能性が高い。各家庭でも備えが必要

経済動向

2022年の2月中旬頃まで、本ブログでは
新型コロナウイルスの影響により
物流が滞り、エネルギー、素材、部品の価格が
上がっていることについてクローズアップしてきました。

ところが、2月24日起きた
ロシア・ウクライナ問題の影響により、
さらにエネルギー、素材、部品、食料品についての大きな影響が生じ、
価格の高騰が起きています。

ロシアが天然ガス、石油、レアメタルの輸出を制限したことと、
ウクライナが小麦、ひまわり油の輸出ができない状況となったことが原因です。

特にヨーロッパでは影響が大きく、
電気・ガス代が、昨年と比べて大きく上がっていますが、
食品価格の急激な値上りと、品不足も起きており、
市民生活にも長い影を落としています。

 

たとえば、作家で、ミュージシャンの
辻仁成さんは、フランスにお住まいですが、
パリの現状として、スーパーマケットなどで
品薄になっている6つの商品について述べてくれています。

パリ最新情報「もうすぐスーパーから消える?フランスで超品薄状態の食品リスト」
作家 辻仁成主宰~海外で暮らす日本人から学ぶ、ライフスタイルマガジン
【品薄になっているものリストと品薄の背景】
1、鶏肉(飼料代高騰、鳥インフル)
2、マスタード(カナダの旱魃)
3、ジャム(仏国国内の春の霜害)
4、小麦粉(ロシア・ウクライナ産産小麦停止による仏国在庫減少)
5、ヒマワリ油(ロシア・ウクライナ産ヒマワリ油輸出停止)
6、パスタ(小麦粉と同様)

ここから見えてくるのは、
ロシア・ウクライナの問題にさらに加えて、
今年は異常気象によって、
農作物の生産がマイナスとなっている点。

日本では、ロシア、ウクライナ産の小麦の輸入は
ほとんど行われていないのですが、
小麦粉はグローバルで生産量の20%が減少すると、
先物価格が2倍となると言われており、
直接的にロシア、ウクライナから購入しない状況でも、
アメリカやオーストラリア際の小麦の値上がりにつながり、
日本の負担も増える形となっています。

影響のある製品を日本が直接購入していなくても、
それの周辺の製品が値上がりするということが起きているということで、
世界はかつてよりも狭くなり、
想像以上に様々なものが相互に影響を与えていることがわかります。

食用油についてヒマワリ油は、
日本ではあまりポピュラーな食材ではありませんが、
大豆油や菜種油など他の食用油の値上がりにつながっているのです。

日本でも6月以降に値上げを予定している
食品系企業群を見ていきますと次のようになっています。

【6月以降に値上げを予定している企業】
[小麦]     日清製粉、日清オイリオグループ、日清食品グループ
[インスタント麺]明星食品、サンヨー食品、東洋水産、エースコック
[調味料]    味の素、ミツカン、永谷園
[酒類]     伊藤園、サッポロビール、宝酒造、メルシャン
[菓子]     森永製菓、森永乳業、ロッテ、カルビー、ネスレ日本、不二家、明治

上記の企業の共通するのが、
小麦製品・穀物類や食用油を多く使っているというところです。

現段階ではそれぞれ10%程度の値上げを予定しているようですが、
6月までまだ時間がありますので、
今後の状況を織り込んで、現段階の想定以上の値上げ対応を
せざるを得なくなるかもしれません。

こうしたさらなる値上げが懸念される背景として、
世界ではこのところ、食料価格の高騰によって、
自国で生産されている食品の輸出を禁止する動きが広がっている
というのがあります。

たとえばすでに、
エジプトでは3月11日に
小麦、小麦粉、パスタなどの食品の輸出を3カ月間禁止、
翌12日にはトウモロコシなどの輸出禁止も発表しています。

ウクライナ情勢の悪化に伴い食料確保の動き、経済にも影響(エジプト) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース

日本にも大きな影響があると考えられるのが
インドネシアが4月28日に
食用油(パーム油)の輸出を禁止措置です。

パーム油大国・インドネシアが食用油の輸出を禁止、価格高騰の恐れ:朝日新聞デジタル
インドネシアのジョコ大統領は22日、食用油とその原材料の輸出を禁止すると発表した。禁輸は28日から。インドネシアは、食用油や加工食品の材料などに幅広く用いられるパーム油の世界最大の輸出国。世界で食用…

パーム油は多くの方には馴染みがないかもしませんが、
生産量・貿易量ともに世界トップの油脂原料です。

パーム油は幅広い加工食品に使用されており、
マーガリンやショートニングの原料、
インスタント麺、冷凍食品、スナック菓子、ビスケット、
チョコレート、アイスクリーム、ビスケット、コーヒーフレッシュ、
カレーのルー、乳児用粉ミルクなどに含まれています。

冷凍食品やファストフードや外食産業の揚げ油としても
使われていますので、知らず知らずのうちに口にしている
食物油ということになりそうです。
(下の写真はパープ油がとれる「アブラヤシ」です)

日本に輸入されるパーム油の80%は食用なのですが、
食品以外の用途としては
洗剤、シャンプー、口紅、塗料、歯磨きなどに使用されています。

世界のパーム油の生産量の
約58%がインドネシア産であることから、
先物市場でも急激に値上がりをし、
つられる形でシカゴ大豆、カナダ菜種なども価格が急上昇しています。

ちなみに、日本のパーム油輸入量は約60万トン超ということで、
そのうち約40万トンをマレーシアから輸入しています。

インドネシアからは、約20万トンの輸入となっていますが、
割合が大きく、他の食物油の価格も高騰していることから、
今後、上記の商品の値上げ、
あるいは、品不足につながることが推測されます。

こうした状況について、マッキンゼーが、
「世界的な食糧危機のリスクの高まり」と題したレポートを
4月19日に公開しています。

The rising risk of a global food crisis
The war in Ukraine poses a looming threat to the worldwide food supply. Here’s what’s at stake—and what might be done to help.

レポートでは、ロシア、ウクライナの問題が、
世界の食品サプライチェーンを混乱させており、
今後の事態は想像以上に悪いことが示されています。

ウクライナ・ロシア地域は、小麦の世界輸出の約30%、ヒマワリの65%を占めていますが、
マッキンゼーの試算によると、今年は1,900万トンから3,400万トンの
輸出生産が消滅する可能性があるということでした。

さらに、欄年2023年には、
1,000万トンから4,300万トンの輸出生産がなくなる可能性がある
という試算がなされています。

人口で換算すると6,000万人から1億5,000万人分のカロリー摂取量に
相当するとのことなのですが、
エジプトやトルコは、カロリーベースでの輸入を
ロシア・ウクライナに大きく依存しており、
特にエジプトは60%がこの2つ地域に依存しています。

これは、エジプトおよびトルコにおいて、
今後、飢饉と言うような食糧不足が生じることを意味しています。

「アラブの春」の遠因は小麦価格の上昇があったそうですが、
人間は9日間、食品の入手が困難な状況になると、
大きな行動に移らざるを得なくなるという話があります。

中東地域が、今後、不安定な状況となり、
仮に産油国に波及するとなると、さらなるエネルギー事情の悪化も
あり得るかと思います。

現在、ウクライナは、
大麦、ひまわり、とうもろこしの植え付けの季節ですが、
紛争のためできていない状況。

小麦は植え付けが7~8月とのことで、
夏まで紛争が続くと、作物の収穫に大きな問題が生じるということですが、
問題が起きるということを前提としなくてはいけない様子です。

植え付けと収穫の影響は大きいのですが、
農産物を海外の輸出するためには、船が利用されますが、
黒海を経由した船で輸送ができない状況のため、
いずれにしても混乱が生じるということでした。

危機意識を煽るわけではないのですが、
現状でもうひとつの懸念として、農業用肥料の不足の問題があります。

肥料の主成分である
窒素、リン、カリウムは、
農作物の生産量を大きく上げることができ、
マッキンゼーのレポートでは
それがない時代の2倍の生産量を維持することにつながっていると指摘しています。

肥料による農作物の生産量の大幅なアップが、
20世紀における人口増加の大きな推進力となっていた
というのは間違いないようです。

このなかでも「カリ」はカナダ、ベラルーシ、ロシアが主要生産国で、
ロシア・ウクライナ問題によって、
カリの価格は過去数ヶ月の2倍以上になっているということでした。

止まらぬ肥料価格の高騰に日本は耐えられるのか?
肥料価格の上昇が止まりそうにない。穀物価格やコロナ禍による輸送費の値上がり、中国による環境保護政策の強化などの要素が絡み合うのに加え、ウクライナ侵略による経済制裁が拍車をかける。化学肥料を漫然と撒く過剰施肥を見直す時期に来ている。

日本においても、肥料価格の高騰が農業に携わっておられる方々の
負担となっているようです。

記事のなかには、グローバルでの
肥料の消費量について2018年時点として下記の順位であるとしています。

・1位:中国(24.6%)
・2位:インド(14.3%)
・3位:米国(10.6%)
・4位:ブラジル(8.9%)

ブラジルでは、農業生産物の植え付けの次のタイミングが
7月~8月頃ということですので、
肥料の値上がりが複合的な影響につながり、
次の作付けと収穫のタイミングまで長引くことが想定されます。

食料品価格の高騰という段階で済めばよいのですが、
夏以降、日本においても食料品そのものが必要量を確保できず
スーバーなどで大きな混乱が生じるかもしれません。

関係企業は、こうした事態に備えて、動かれていることかと思いますが、
各家庭においても、できる範囲で備蓄対応を行うべきタイミングが
来ていると感じられます。

【追記】
日本の食料自給率について、次の記事まとめました。
よろしければご参照ください。

食糧危機の広がりと日本における自給率の低さの問題、そして備え
ロシア・ウクライナ問題の長期化しています。 それのより、世界的に食料価格の高騰が続いています。 本ブログでは、食料価格高騰について述べてきました。 振り返りとなりますが、食料価格の高騰の背景については ロシアとウクライナの両国が、世界有数の...

【ご参考】
下記は約5年間の長期保存が可能な無洗米です。
まだ、お米については不足はしていない状況ですが、
こうした製品もあるということでご紹介をさせていただきます。
(あくまでご参考ということで掲載いたしました。
 他にも長期保存米はあると思いますので、是非お調べになってみてください)

本日も最後までお読みいただきましてありがとうございました。

【追記】
食料価格の高騰に付随して、日本の食料自給率と、
今後の展望について次の記事でまとめてみました。
よろしければご参考ください。

食糧危機の広がりと日本における自給率の低さの問題、そして備え
ロシア・ウクライナ問題の長期化しています。 それのより、世界的に食料価格の高騰が続いています。 本ブログでは、食料価格高騰について述べてきました。 振り返りとなりますが、食料価格の高騰の背景については ロシアとウクライナの両国が、世界有数の...
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